1000人以上の住宅ローン破綻者から聞いた「家を買って後悔してること」
「家計が苦しくなって住宅ローンが払えなくなってしまった…」
私は、そのような住宅ローン破綻に陥ってしまった方々のご相談を、累計1000件以上お受けしてきました。
その中には、例えば以下のような悲惨な状況な方も大勢いらっしゃいました。
・リストラで勤務先を解雇されて収入がなくなってしまった方
・病気やケガで仕事ができなくなってしまった方
・離婚して家族がバラバラになり住宅ローンだけが残った方
住宅ローン破綻に陥ってしまう理由は様々ですが、すべての方に共通していることは「家を買うときはこんなことになるとは夢にも思わなかった」ということです。
そして、皆一様に「こんなことなら○○しておけば(しなければ)良かった」と何かしらの後悔を抱えています。
夢のマイホームを購入するときに、まさか自分が住宅ローン破綻なんて誰も考えないはずです。
しかし、何十年も続く住宅ローンの返済期間中には何が起こるかわかりません。
今回は、予期せぬ事態に陥り住宅ローンを払えなくなってしまった方々が「家を購入してから後悔したこと」について、生の声をご紹介しますので、これからマイホームの購入を検討している方もご参考にしていただければと思います。
目次
住宅ローン滞納者の実例とその原因
万が一、住宅ローンの返済が困難になってしまい、長期間に渡って滞納をしてしまうと、最終的には自宅が競売に掛けられて強制的に追い出されてしまいます。
まずは実際の住宅ローン破綻者の実例を踏まえて、その原因を解説します。
病気で収入が激減し、家が競売にかけられたNさん
Nさんは36歳のときに東京都内のマンションを購入し、奥様とお子様2人の4人家族でした。
購入当初は「ちょっと背伸びした買い物」だと思ったそうですが、年収も600万円以上あり、その後も毎年上がっていく見込みであったため、住宅ローンを組むことに不安はなかったと言います。
しかし、マンション購入から15年後に大病を患い、これまでの仕事が続けられなくなってしまいました。
闘病生活を経て無事に回復されたそうですが、これまでと同じように働くことができなくなって転職を余儀なくされます。
年齢が50代になっていたこともあってなかなか転職先も決まらず、やむを得ず前職よりも大幅に収入が低い仕事に就くことになりました。
その結果、ちょうど医療費やお子様の大学進学も重なってほとんど貯蓄が無かったNさんは、住宅ローンが払えなくなり、度々滞るようになっていったそうです。
どうにもならない状況に追い込まれ自暴自棄になってしまったNさん。最後の方は、銀行からの督促の通知や電話に嫌気がさしてほとんど無視してしまっていたと言います。
その結果、最終的には自宅が競売に掛けられて、家族ごと強制的に追い出されるという最悪の結末を迎えることになってしまいました。
【Nさんの後悔】
「長い人生何があるかわからないのに、まるでこの先も今の延長線上の生活が約束されているように錯覚していた気がします。だからちょっとくらい背伸びしても大丈夫だろうと。
でもそれだと、私のように病気をしたりして歯車が狂うともう後戻りできなくなってしまいます。
少しくらいの誤算があっても耐えられるように、もう少し予算的に余裕を持った家を買えば良かったと思いますが、家を買うときは気持ちが舞い上がってそんなことは考えていませんでした。
今考えるとなんて重たい買い物をしたんだろう思います。でも買うときはそんな当たり前のことも冷静に考えられなかったんです。」
定年後にボーナス払いが払えなくなり、老後破産に陥ったKさん
27年前に愛知県の郊外に一戸建ての家を買ったKさんは、3年前に定年退職し、その後は年金をもらいながらアルバイトをしていました。
住宅ローンは75歳まで続く予定で、定年によりボーナスの収入はないにも関わらず、住宅ローンのボーナス返済(35万円×年2回)だけが残るという状況でした。
そのため、ボーナス返済月はやむを得ずカードローンで借り入れをして住宅ローンの返済に充てていました。
しかし、今度は毎月のカードローンの返済も重くのしかかり、その額はどんどん膨れ上がっていったそうです。
結局、住宅ローンを払うために借金をして、今度はその借金を返すためにまた借金をするという多重債務の悪循環に陥り、最後は返済のために慣れ親しんだ家を売却せざるを得なくなってしまいました。
Kさんのような例は珍しくなく、定年退職後も自宅のローンが残ってしまった方の典型的な老後破産のパターンです。
【Kさんの後悔】
「ローンを組んだときは老後にこんなに苦しむことになるなんて思いませんでした。定年退職したらその退職金で住宅ローンは繰上げ返済してしまえば家は自分のものになって、あとは悠々自適な老後を送れると思っていましたね。
でも家を買ってから何回か転職したこともあって、収入も落ちましたし退職金もほとんど出ませんでした。その時は「まぁ頑張れば何とかなるだろう」くらいに思っていましたが、実際に定年退職したらもうどうにもなりませんでした。
今思えばなんでこんな無茶なローンを組んだんだろうと思います。特にボーナス払いなんて、ボーナスが一生保証されているわけではないのに。」
離婚で夫婦ともに自己破産に追い込まれたSさん夫妻
Sさん夫婦は結婚後、お子様が大きくなってきたことをきっかけに広い家に引っ越そうと、埼玉県に一戸建ての家を購入しました。
その時は家庭も仕事も順風満帆。共働きだったため世帯収入も700万円以上あったことから、奥様の収入も合算して思い切って広い家を購入したそうです。
しかし、夢だったマイホームを購入してからわずか4年で、諸事情により夫婦関係が修復不可能なほど悪化してしまい、離婚をする決断をされました。
奥様は子供を連れて出ていき、ご主人が広い家に1人残されるかたちとなりました。
しかし、元々夫婦の収入でローンを返済しており、さらには養育費の支払いもあったことから、ご主人1人でローンの返済ができなくなってしまいました。
そこで家を売りに出しましたが、まだ3000万円近くローンが残っていて、とてもそんな金額では売れず、結局は任意売却で自宅を売却したものの500万円以上の残債が残ってしまいました。
そして、購入時に元奥様がローンの連帯保証人になっていたことから、元奥様もこの残債を背負うことになり、結局夫婦ともども自己破産する選択をされました。
【S様(ご主人)の後悔】
「家を買った時は本当に幸せでした。家族も仲が良く、家も買えてこれからもっと幸せな未来が待っているんだろうなと思っていましたが、まさかこんなことになるなんて。
家を買うときに離婚することを考える人はいないと思います。自分も全く考えていませんでした。
でも夫婦共働きを前提にローンを組んだことは大失敗だったと思います。自分1人になったらローンと養育費を1人で払うなんてできませんでしたから。
しかも夫婦の収入を前提にローンを組んだことで元妻も連帯保証人になっていて、元妻まで自己破産しなければならなくなって、離婚した後まで大きな迷惑をかけてしまったと思います。」
住宅ローン破綻者が「家を買ってから後悔していること」
ここまでご紹介した3人の事例は、いずれも住宅ローン破綻に陥る典型的なケースです。
いずれも購入するときは想定してなかった事態となり、住宅ローンが払えなくなってしまっています。
このような住宅ローン破産に陥ってしまった方々から、「家を買うときにもっとこうしておけばよかったと思うこと」について聞くと、以下のような後悔の声が多く聞かれます。
「こんなに立派な家でなくて良かった」
最も多く聞かれるのは、「こんな立派な家でなくて良かった」という後悔です。
つまり、もっと余裕をもって住宅ローンを払える、金額的に無理のない予算で家を買うべきだったということです。
これは当たり前の話に聞こえますが、どうしても家を買うときは気持ちが高まって多少予算オーバーでも良い家を買いたいと思ってしまう傾向にあります。
しかし、その時に冷静な判断ができずにぎりぎりの予算で家を買ってしまうと、まさに前述のNさんのように想定外の事態に見舞われた時に取り返しのつかないことになってしまう可能性があります。
一般的には、現在の収入で、ボーナス払いなしでも収入に対する返済比率が20~25%に収まる範囲でローンを組むことが余裕を持って返済してける金額の目安となります。
【相談者の声】
「子供のためにと思って大きい家を買ったが、子供が成人して家を出ていったら妻と2人では広すぎるし、重たいローンの返済だけが残った」
「今の収入がずっと続くことを前提にローンを組んでしまった。会社の業績が落ちてボーナスも残業代もカットされて、これ以上はローンを払っていけない」
「なぜこんな高い家を買っちゃったんだろうと思います。今思えば家にお金をかけるよりも、子供にお金をかけてあげれば良かったと後悔しています。家なんて住むところに過ぎず、大きな家に住んだって幸せにはなれない、そんな当たり前のことに今更気づきました」
「もう生活のための家ではなく、家のために生活している感じです。もう返済に追われる生活から抜け出したいです」
「結局家なんて住めれば十分です。でも買うときに不動産屋の営業マンに大きな家を見せられると、どうしてもそっちが欲しくなってしまうんですよ。その時は、自分が頑張って働いてローンを払えば良いなんて思うんですけど、それを30年以上も続けるなんてリスクが高すぎました」
「家なんて買わなければ良かった」
住宅ローン破綻してしまった方からは、「なんで家なんて買ってしまったんだろう」という、家を買ったこと自体を後悔する声も多く聞かれます。
生活に困窮して住宅ローンを払えず苦しい想いをしていることから「賃貸の方が気楽で良かった」と仰る方も多くいらっしゃいます。
しかし、住宅ローン破綻の多くは、購入時の予算や年齢といった買い方や条件さえ間違っていなければ防げたものがほとんどです。この「買わなければ良かった」と後悔している方々は、どちらかと言うと投げやりになってしまっている印象を受けます。
そのため、これらの声から「家は買わない方が良い」「持ち家より一生賃貸の方が良い」と結論付ける必要はないと思います。
【相談者の声】
「家を買ってこんなに辛い想いをするとは思わなかった。こんなことになるのなら家なんて買わなければ良かった」
「収入が減ってもローンは減らない。万が一のときに柔軟に引っ越して家賃を下げられる賃貸にしておけば良かった」
「将来自分の資産になると思って買ったけど、結局その前に失うことになってしまった」
「夫婦で共有名義(連帯保証)にしなければ良かった」
これは離婚により住宅ローン破綻に陥ってしまった方が必ずと言っていいほど口にする後悔です。
先ほどご紹介した事例のS様も自宅を共有名義にしており、住宅ローンも連帯保証だったため、離婚した後も家を出ていった元奥様に責任が残り、結局夫婦2人とも自己破産に追い込まれてしまいました。
夫婦で連帯保証をしていると、離婚した後も住宅ローンを完済するまでずっと責任が付きまといます。
また離婚に限らず、連帯保証をしていると万が一でも住宅ローンが払えなくなったときに2人とも責任を負い、生活の再生が難しくなってしまうことも考えられるので、連帯保証にするかどうかは慎重に判断しましょう。
【相談者の声】
(妻)「家を買うときには深く考えず連帯保証人になってしまいましたが、まさか離婚した後もずっと責任が付きまとうなんて考えもしませんでした。離婚して10年も経って、元夫がローンを払えなくなって、いきなり銀行から督促が来たときは青天の霹靂でした」
(夫)「離婚して家族が家を出ていって1人なり、もうローンの支払いが厳しいので家を売ろうと思った時に、元妻と共有名義人なっていたため自分1人で売ることができませんでした。元妻と連絡が取れず、ローンを払うことも家を売ることもできず、結局最後は家が競売に掛けられてしまいました」
「新築でなく中古にしておけば良かった」
これは言い換えると「もっと安い家を買えば良かった」ということで、前述の「こんなに立派な家でなくて良かった」と全く同じことが言えます。
日本では新築の人気が高く、特に地方では「家を買うなら新築」という価値観が強い傾向があります。
しかし、新築は購入してから資産価値の下落率が高いため、特に頭金をあまり入れずにフルローンで購入すると、もし住宅ローンを払えなくなったときに「売ってもローンを返せない」というリスクが高くなります。
余裕を持ってローンが返済できる予算で収まらないのであれば、中古も選択肢に入れて予算を抑えることも重要です。
【相談者の声】
「中古も考えたのですが、不動産屋に連れられて中古と新築を両方見るとやっぱり新築が欲しくなってしまうんですよね。それで少し無理してでも、ローンの審査も通ったし最後は勢いで新築を買っちゃえとなったのですが、やっぱりもっと安い中古にしておけば良かったと後悔しています」
「中古を買うということは頭になく、最初から新築しか選択肢として考えていませんでした。でも住宅ローンが払えなくなって家を売ろうとしたきに査定をしたら『え、こんな金額でしか売れないの?』とびっくりしました。結局、任意売却で売っても400万円近く残債が残ってしまいました」
「もっと早く買っておけば良かった」
これは40代以上で自宅を購入した方々から聞かれる声です。
購入が遅かったため、住宅ローンの返済期間が短くなって毎月の返済額が大きくなってしまったり、完済年齢が遅くなってしまうことが問題となります。
特に、購入年齢が遅いことにより完済予定年齢が70歳以上になると、定年退職後もローンの返済を続けなければならなくなり、冒頭のKさんのように老後破産のリスクが高まります。
特に、退職金がない人やボーナス払いのある人は老後の生活が非常に厳しくなりますので、予算を下げてでも65歳までには完済できるローンの組み方をすることをお勧めします。
【相談者の声】
「完済予定年齢が74歳で、定年退職後もずっとローンを払わなければならず、年金だけではとても払っていけませんでした。定年後もアルバイトをしましたがそれでも生活が苦しく、家を売却して手放さざるを得ませんでした」
「定年退職後もボーナス払いが残り、ボーナス月の返済ができなくなりました。家を買った時は定年したら退職金が出るから大丈夫と軽く考えていましたが、計画が狂ってしまい繰上げ返済ができませんでした。老後のために家を買ったのに、家を買ったことで老後の生活がこんなに苦しくなるなんて思いもしませんでした。」
「もっと早くローンの借換をしておけば良かった」
これは15年以上前の金利がまだたかかった時期に家を買った人が一様に仰ることです。
近年では、変動金利であれば1%を切るような金利で住宅ローンを借りることができますが、以前の3~5%の高い金利のままローンの返済を続けている方が未だにいらっしゃいます。
そのような方は、早めに住宅ローンの借換をすることで金利負担を大きく減らすことができましたが、タイミングを逃して高い金利のまま返済が行き詰まり、借り換えを考えた時にはもう手遅れという方も少なくありません。
今からでも、まだ2%以上の金利で返済を続けている方は、借換が可能か、あるいは借換のメリットがあるかどうか銀行に相談してみると良いでしょう。
【相談者の声】
「そういうのに疎くて借り換えで金利が下がるなんてことは知らなかったんです。もっと早く知って借り換えていれば、今頃こんなことにならずに済んだかもしれません」
「住宅ローンを滞納してしまい、金利負担を下げるために借り換えを他の銀行に相談したのですが、その時にはすでに信用情報に傷が入ってしまっていたみたいで、借り換えの審査が通りませんでした。もっと早く返済に行き詰る前に相談すれば良かったです」
「自分の場合、残りの返済年数が少なかったため、保証料などの諸費用を払ってまで借り換えるメリットが少ないと言われてしまいました。もっと早く相談していればと後悔しています」
まとめ
住宅ローン破綻に陥ってしまう理由は様々ですが、共通してることは「万が一のときに柔軟に対応できないギリギリのローンの組み方をしてしまっている」ということです。
家を買うときはどうしても気持ちが舞い上がってしまい、少し無理をした予算でローンを組んでしまいがちです。
しかし、住宅ローンの返済は最長で35年も続きます。その間に想定していなかった不測の事態に陥ってしまうことは十分にあり得ます。
そんな時でも対応できるよう、余裕を持った住宅ローンの組み方をすることが大切です。
具体的には、
・収入に対する返済比率を20~25%に抑える
・ボーナス払いなしで返済できる予算に抑える
・連帯保証人を付けなくても借りられる予算に抑える
・ローンの完済予定年齢を65歳までに設定する
・上記の条件で予算内に収まらないのであれば中古物件に切り替える
・中古でも予算が合わないなら「買わない」という選択肢も考える
ということを意識して家探しをしていただければと思います。