競売開始決定が届いてからも任意売却は可能!競売を避ける方法を解説
住宅ローンを約6カ月滞納してしまうと代位弁済が行われ、債権は保証会社に移ります。
保証会社(債権者)はこの債権の回収を行うための手続きを開始することとなります。
それが「競売」と呼ばれている売却方法です。
「競売開始決定」という通知が届くと、早くて約半年で入札開始となり、落札され、その後強制的に立ち退きとなってしまいます。
そもそも競売の申立てとなってしまった原因として、住宅ローンもしくは他債務の支払いが困難となり、滞納が続いてしまったはずです。
このとき、既にローンの契約自体は破綻しているため、後戻りはできず、いずれは家を明け渡さなくてはいけない状況です。
そしてこの競売は、自宅は相場価格の約7割程度で売却されてしまう上に、退去日は所有者の意志は反映されません。
また、精神的にもいつ退去となるのか不安を抱えることになってしまうのではないでしょうか。
この通知が届くと今後の生活はどうなるのか、何をしたら良いのか、もう住み続けることはできないのかと、沢山の不安点があるはずです。
しかし、この通知が届いたばかりの段階であるのならば、まだ「任意売却」という手段が残されています。
今回は、競売開始決定が届いてからの流れと、取り下げる方法、そして今後の生活再建に向けて良いスタートがきれるように任意売却という方法をお伝えします。
目次
住宅ローン滞納が続くと競売開始決定が届く
住宅ローンの支払いを滞納して6か月ほど経過すると、裁判所から「担保不動産競売開始決定通知書」が届きます。
「競売」とは、自分の財産であるはずの自宅不動産を、裁判所の命令によって強制的に売却処分されてしまう事です。
しかも、それで返済すべきローンが無くなる訳ではなく、売却しても返済し切れなかった分(残債)を、その後も返済し続けなくてはなりません。
競売開始決定通知は「裁判所命令」
手続きの開始として、債権者である保証会社が裁判所にまず申し立てを行います。
そしてその時に裁判所から送られてくるのが、「不動産の差し押さえを行いました。」という競売開始決定通知です。
つまり、競売開始決定通知は裁判所命令ということです。
この通知を受け取ると(この状況になると)、粛々と競売開札の日を待つのみになり、競売を取下げてもらうには自ら動くしかありません。
競売の差押えは担保不動産のみ
競売の差押えは担保不動産のみです。
そのため、家の中にある家具や家電、宝飾品などは差押えの対象ではありません。
ちなみに通知書には、入札期間や開札期日が記載されており、どの裁判所において、どの不動産が差押え受けたかなどが記載されています。
詳細内容はほとんどなく、あくまで「競売の申立てがされましたよ」という通知書となっています。
また、裁判所の掲示場や競売物件のサイト(BIT)に、競売物件の情報が掲載されることとなります。
このサイトはどんな方でも見ることができるサイトです。
通知書が届いてしまったら競売物件であることが知られてしまう可能性はあるでしょう。
1カ月以内に執行官が訪問
ここからは競売の流れについてご説明します。
まず、開始決定後、1カ月以内に執行官が訪れます。
この執行官は民事執行法に基づき、立ち入り調査の許可があるため、たとえ居留守を使っても、不在にしていても、場合によっては、解錠業者を同伴し、開錠して室内の調査を行います。勝手に入ったとしても、文句を言うことはできないのです。
このように、執行官は鍵業者を呼び立入り調査をする権限があるため、出来る限り在宅するようにし、今後の競売スケジュールについて聞くようにしましょう。
そして、執行官は競売を進めるための役人なので、任意売却や残債の処理についてのアドバイスはしてくれません。
ここでは競売の流れを確認するに留め、競売を避けるためにはその後、専門家に相談するようにしましょう。
(詳しくは>競売開始から改札までの流れ)
約6カ月経過で開札となり強制退去
通知後、約6カ月経過で開札となり強制退去を余儀なくされます。
執行官が訪れた後、一通り終われば、競売サイトにも掲載され、掲載から開札、そして強制退去までおよそ3カ月で落札者への登記移転で完了し、買受けた人は旧所有者への退去を命じられるようになります。
つまり、この日から自身の不動産ではなくなるため、その後まだ居続けていると裁判所より強制的退去を命じられます。
当然、「引越費用がなく、転居できない」などの理由は聞いてもらえず、明渡しの期限はあくまでも新所有者に交渉するしかありません。
経済的に苦しいにもかかわらず、新居探しや引越し費用をご自身で準備しなければならないのです。
競売開始決定が届いても取下げることはできる
ただし、競売開始決定通知を受けてからでも、取り下げることは可能です。
方法としては、完済することか、任意売却することです。
取下げには債権者の同意が必須
競売を取下げることは可能ですが、取下げには債権者の同意が必須とされています。
まず取り下げる方法の1つとしては、残った住宅ローンを全額返済することです。
競売にかけられた後だとしても、完済すると伝えれば債権者に同意を得ることができるため取下げてもらうことが出来ます。
もちろんこの時返済する総額は、損害賠償金を含む金額と競売取り下げ費用も追加されています。
任意売却の成立で取り下げ可能
そして、方法の2つ目は、任意売却の成立で取下げてもらえます。
完済以外の方法はこの任意売却を行うことでしか取下げはできません。
任意売却とは、オーバーローンであっても債権者に許可してもらい、一般市場で売却をすることです。
※一般売却ではオーバーローンでは自宅の売却はできません。
(詳しくは>住宅のオーバーローンとは売却困難?!)
任意売却は競売と比べるとメリットが多く、競売を避ける為に依頼する方が増えています。
そして具体的に動くのは、任意売却を依頼した不動産会社です。
任意売却の申出を受けたとして保証会社(債権者)と交渉を行うことで、競売と同時進行で任意売却に向けた活動を開始することができます。
この時、いくらで売却するかの価格の決定権も債権者の同意を得る必要があります。
つまり、債権者は既に競売の申立てをしてしまっているため、任意売却をした方が債権を回収できる見込みがあると判断して一般市場での販売を許可してくれるのです。売買が成立すれば競売は取り下げてくれます。
ちなみに債権者に対しては、物件の査定結果を記載した書類を提出することになるため、室内の写真を提出することも必要になります。
取下げできるのは開札までの4~6カ月間
取下げができる期間としては、開札までの4~6カ月なら取下げ可能です。
手続き上は代位弁済から入札の開札日前日まで行うことが可能とされていますが、残された時間はそれほど多くありません。
競売の申立て後は、任意売却と同時進行であり買主が決まるまでは進んでしまいます。
また、なんとか買い手を探したとしても、値下げ交渉などが入ると、債権者が納得する価格にとならず不成立ということもあります。
そのため、残された期間が少ない売買は交渉期間が取れず、極めて困難なのです。
任意売却成功の可能性を高めたいのであれば、競売開始決定通知を受け取った時点ですぐに相談することがポイントになるのです。
競売開始決定が届いてからでも任意売却はできる
前章でもお伝えさせていただいた通り、競売開始決定が届いても任意売却を行えます。
通知書が届いた段階であればまだ開札は迎えておらず、ここから競売を避けるために動き出すことができるということです。
任意売却は競売を避ける最後の手段
任意売却は競売を避ける最後の手段と呼ばれ、成立すれば競売にかけられることを回避することはまだ可能です。
実際、任意売却は債権者にとっても売主・買主にとってもメリットがあります。
通常の市場で売買されているということは、買い手はしっかりと物件を確認でき、債権者も多くの債権回収が見込めるからです。
売主にとって任意売却がメリットとされる理由
では肝心な、売主にとって任意売却がメリットとされる理由を説明します。
競売より高く売却できる
まず一つ目として、任意売却が認められれば、競売より高い金額で売却できる可能性がきわめて高くなります。
その分、多くのローンの残債返済を行うことができるため、残された残債が少なければその後の返済方法を選択することが可能です。
例えば、残債が少なければ、債権者の同意は必要になりますが、分割で返済していくことも可能です。
もちろん残債が多くなってしまった場合は、債務整理(個人再生・自己破産)を検討することで、生活再建の道はあります。
近所や知人に事情を知られない
また、二つ目に任意売却は、通常の売買と同じような手続きで行われます。
裁判所を通して行われる競売とは違い、周辺の人に知られる心配はありません。
売却の期間中、近所には資産の売却として伝えることができるため、官報を見られない限り競売物件であると分からないからです。
案内見学の方法も、一般的な手順となります。
費用は売却代金から捻出できる
三つ目は、固定資産税やマンションの管理費・修繕積立金などの滞納金、各種諸費用について、任意売却ではそれらの費用が売却代金と相殺されることとなり、売却に伴って財布から出ていくお金はほとんどありません。
競売の場合は、競売の申立費用を別途請求されてしまいます。
このように、売主にとってもメリットがある任意売却は競売を避ける為に行う方が増えているのです。
任意売却を伴うリースバックとは
リースバックとは、簡単に言うと自宅を売却しても賃貸として住み続ける方法です。
リースバックの最大のメリットは、居住地を変えずに暮らせることです。
ただし、成立するかどうかは、その物件を投資目的で所有したいという人(会社)が現れるかどうかにかかっています。
物件の立地の利便性だけでなく、都市圏であり将来性があるなど特別な魅力がない限り、投資目的で購入する人はなかなか現れず、残債を超える金額で成立するにはハードルが高いのが実情です。
そのため、一般的な住宅でリースバックが成立するのは、通常の任意売却よりも成功率は低くなります。
(リースバックを詳しく知るには>リースバックのデメリットや注意点)
条件が揃い成立すれば住み続けることが可能
条件が揃い成立すれば住み続けることが可能ですが、リースバック成立には様々な条件があります。
先ほど簡単に述べましたが、例えば、「必要とする資金(残債)に買取金額がとどかない」ときや、「賃料の継続的な支払いが見込めない」とき、また「債権者の同意が得られない」ときは不成立となります。
(詳しくは>リースバック売却価格と家賃の関係)
任意売却の場合は売却価格の決定権が債権者にありますので、任意売却自体は認められても債権者の取引許可金額にリースバックでの金額が届かない場合は成立しません。
まとめ
今回、競売を防ぐ手段として任意売却を説明しましたが、手続きはかなり特殊な取引であるため、不動産業者であればどの業者でもいいというわけではありません。
経験のない業者に依頼したことによって、競売が始まるまでに買い手を見つけられないということも考えられるのです。
そのため、競売開始決定の通知が届いた後は残された時間は少ない為、任意売却を専門とする不動産会社に依頼することが良いでしょう。
万が一競売になってしまったとしても、スケジュールや残債の整理の方法のアドバイスをもうらえるような会社を探されることをお勧めしています。
そして、任意売却も自身の所有権はなくなるため、いずれにしても引越しをする必要があります。
競売開始決定後は、早めに転居先の検討をしていきましょう。