住宅のオーバーローンは売却が困難?知っておくべき知識とは


住宅ローンの残った不動産を売却する場合、住宅ローンの残債を完済しなければ売却することはできません。

これは、住宅ローンを借りたときにお金を借りた銀行側が不動産に抵当権を付けているからです。

しかし、住宅ローンは30~35年と長い期間で返済しているため、自身の仕事や環境が変わってしまい売却を余儀なくされてしまうことも考えられます。

このような時に、住宅ローンが残っている持ち家を手放したいと考えた場合はどうしたらいいのでしょうか?

通常、新築の不動産は入居後すぐ建物の価値が下がることや、住宅ローン返済当初は元本より金利の返済額が大きいことから、いざ不意動産を売却しようとしても住宅ローンの残高が現在の不動産の時価を上回ってしまっていることが珍しくありません。

このように、その物件を売却しても住宅ローンのを返済しきれない状態のことを「オーバーローン」と呼びます。

この「オーバーローン」とはどのような状態なのか、オーバーローンであるとき気を付けること、またオーバーローンでも売却ができないと諦める前に解決する方法を説明します。

 

 オーバーローンとは

オーバーローンという言葉について、簡単に説明します。
オーバーローンとは、先述したように、ローンの残高が不動産の価値よりも高い状態のことです。

つまり「住宅ローンの残高 > その不動産の価値」の状態です。

※経済用語では、「銀行の貸出額が預金を超過している状態のこと。」を指しますが、現在では不動産に対しての意味としてオーバーローンは使われています。

 

購入した住宅の資産価値よりもローン残高が多い状態

繰り返しになりますが、不動産用語として使われている「オーバーローン」は、購入した住宅の資産価値よりもローン残高が多い状態を表す言葉です。

たとえば、1億円の物件に対して1億円を超える金額(1億2,000万円など)の融資を受けれる場合は「オーバーローン」となります。

なお、物件と同額の融資を受けられた場合は「フルローン」と呼びます。

 

物件価格に加えた諸費用分までの融資のこと

オーバーローンという言葉は、物件の購入価格以上に借入を行うことに使われています。これはつまり諸費用まで出してくれる融資のことを言います。

諸費用まで融資を受けられれば、自己資金を使わずに不動産を買うことができます。

つまり、手元に少しでも現金を残しておきたいと考えた場合にあえてオーバーローンを行い、自己資金には全く手を付けずに不動産を購入することが可能なのです。

Q.不動産の諸費用はどのくらい掛かるもの?

【一般的には物件購入価格の6〜10%が諸費用】

これは、3,000万円の物件であれば180万円~300万円を現金で用意する必要があるということです。

この諸費用を貯めることが無く、不動産を購入できるようになったともいえます。

 

金利が低いことで諸費用の借入が一般化したことが要因

では、なぜ諸費用まで借り入れるケースが増えたのかですが、近年の金利が低いことで諸費用の借入が一般化したことが要因とされています。

20年程前にローンを借りた方は、平均金利で2.5%で借りているとも言われており、この金利で諸費用分まで借り入れてしまうのは総返済額に大きく影響してしまいます。

現在であれば、低金利で借入ることができ、住宅ローン控除も拡大していて、借りる側にとっての負担は軽減しているため、オーバーローンは日常的になったのではないでしょうか。

 

オーバーローンで気を付けることは

では、オーバーローンで気を付けることを確認しましょう。

前章で述べた通り、現在はオーバーローンで借入ることは一般的です。
その中でしっかりとデメリットを認識をしたうえで借入額を決定しましょう。

 

住宅購入以外の資金用途には使えない(契約違反になる)

まず、住宅購入以外の資金用途には使えません。

詳しく説明すると、住宅購入時には、不動産の価格と購入に必要な手数料を支払わなくてはいけません。
この「購入に必要な費用」として認められるかは銀行側の判断となりますが、一般的には登記費用・火災保険料・保証料(又は事務手数料)・仲介手数料・リフォーム費用です。

オーバーローンで借り入れる場合、それぞれの費用の見積もりや明細書を提出して、銀行側に融資額の利用用途を伝えます。

住宅ローンは通常のローンより金利が安い為、他の用途には使えないからです。
万が一、必要な費用より多くの金額を融資してもらった場合は返済しなくてはならず、違う使い道をした場合は契約違反となります。

 

オーバーローンでは簡単に売却ができない

次に、オーバーローンでは簡単に売却ができないということを忘れてはいけません。
不動産を売却するには住宅ローンは残額を完済しなくてはいけないため、手持ち資金を出さずに自宅を売却するためにはローン完済額以上で価格で売ることになります。

しかし、その場合は相場よりもローン残高の方が高くなることがほとんどであるため、売却活動をしても売れ残ってしまう可能性が極めて高くなります。

 

ペアローンであると離婚時にトラブルになりやすい

次に、不動産購入時にペアローンで組んでいた場合は、離婚時にトラブルになりやすいです。
物件がオーバーローンでありかつ、ペアローンを組んでいた場合、財産分与をする手続きが複雑になるからです。

ローンは、銀行と本人の契約であるため、離婚してもそれぞれの借入条件を引き継ぎます。

しかし、分与したい不動産は一つであるため、売却またはどちらかが住み続けるために借り換えを行うのか、という話し合いも必要になるでしょう。

売却を選択した場合は、残債という負債をどちらが負担するかということも論点になります。

裁判所は純資産マイナスのときは、分与すべき財産はないと審判するのが普通ですが、ローン自体はそれぞれの負債のため揉めてしまう要因になるのです。

(類似記事>離婚後の家の売却はどうなるの?

 

オーバーローンでも家を売却できる「任意売却」

オーバーローンの家の売却に困った場合の最後の手段として、金融機関と相談し任意売却という方法があります。

ここからは、オーバーローン状態である不動産の売却について解説します。

 

オーバーローン時の最後の手段「任意売却」

オーバーローンでも自宅を売却するの最後の手段「任意売却」で解決できることがあります。

オーバーローンだからといって住宅ローンを支払えないとそのまま放っておくと、もちろん督促状が届き、ゆくゆくは競売へと繋がってしまうため、放置することはお勧めできません。

任意売却は債権者の同意を得てオーバーローンでも売却できる方法です。

任意売却とは、住宅ローンを完済できない場合であっても、銀行(またはその保証会社)と調整を行い、承諾を得たうえで一般の市場で売却する方法です。

ただし、信用情報に傷が入るなどのデメリットもありますので、専門家に話を聞いてよく理解してから進めるようにしましょう。

(関連記事>任意売却で残債があっても売却する方法

(関連記事>任意売却と競売の違い

 

任意売却後の残債は返済義務が残る

忘れてはいけないのは、任意売却後の残債に対する対応です。

オーバーローンで売却をしているため、売却後も残債が残ってしまうのですが、当然ながらその残債についても返済義務が残ります。

これは通常は債権者との話し合いにより分割返済していくことになります。
しかし、残った金額によっては債務整理も一緒に検討することで本当の意味で再出発として負担が軽くなることもありあます。

任意売却は売ることだけではなく、その後の生活も考えた上で選択できるように専門の業者に相談するようにしましょう。

 

オーバーローンになりやすいケースとは

最後にオーバーローンになりやすいケースをご紹介します。
いま不動産の購入を考えている場合であれば以下のケースを考慮して検討しましょう。

 

ケース①購入後すぐの売却

ケース①は、購入後すぐに売却をすることになったときです。

不動産は一度入居してしまうと、新築という扱いではなくなるため、建物の評価が落ちてしまいます。
また、現在の住宅ローンの金利の支払いは借入当初の金利の割合が高く、元本自体の返済は緩やかです。

このようなことから、購入後10年以内の売却はオーバーローンとなってしまうケースが多くなります。

 

ケース②土地よりも建物価格に費用を掛けた家

ケース②土地よりも建物価格に費用を掛けた家のときです。

例えば、注文住宅であると建物内部に多くの費用をつかうことになりやすく、お気に入りの住宅にはなりますが、売却を考えると既にオーバーローンであることが多いです。

建物自体の減価償却は一般的には20年です。
建物の構造にこだわり、耐用年数が伸びている場合であれば建物価値が多少残っていますが、内装費に一番お金をかけてしまうとオーバーローンの状態になってしまうことが多いのです。

 

ケース③中古物件購入時のリフォーム費用が高い

ケース②同様に、中古物件購入時のリフォーム費用が高いときもオーバーローンになりやすいです。

マンションであれば、そのマンション自体の価値が上がった場合は評価額が上がることもありますが、内装工事代を掛け過ぎると売却時にはオーバーローンになってしまいます。

また、近年のリフォームは間取から変更するリノベーションやスケルトン工事も行っており、1000万円近い工事を行う事もあるため、既にオーバーローンであることが増えています。

 

ケース④借入条件が高金利、諸費用込み、30年以上の長期での契約

ケース④は、借入条件が高金利、諸費用込み、30年以上の長期での契約をしたときです。
1章で少し述べましたが、低金利であれば諸費用まで借り入れても返済総額が大幅に増えることは少なく、現在の不動産価値がローン残高を上回る分岐点は早く訪れます。

しかし条件として、高金利であり、諸費用込みで借入額を増やし、長期で支払う返済計画にすると、新築後10年でもまだ元本の返済はそれほど進んでいません。

借入当初の返済計画もオーバーローンになりやすい事態を招かないように注意が必要なのです。

 

ケース⑤住み替えローン(買い替えローン)を組む可能性がある

ケース⑤は、転勤(赴任)などで、オーバーローンであるにも関わらず住み替えなければいけなくなったときです。

転勤の他にも、現在の家では手狭になりマンションから戸建に引越しをした、など理由は様々ですが、この住み替えローンは旧ローンの残債額を新しいローンに組み込むことで成り立つため、購入と同時にオーバーローンになっている状況になります。

 

まとめ

「オーバーローンとは」について確認できましたでしょうか。

近年の不動産購入ではオーバーローンは珍しくはなくなり、実際に契約するときには物件価格を超えて借り入れを行っている認識は薄くなってしまいます。

ただし、物件価格を超えたローンでの購入であるということは、簡単には売却して引越しをするということができないのです。

将来的に居住地が変わる予定がある場合や、転勤の可能性のある職業であるときは借入の前に家族でよく話し合っておくことが重要です。

また、ローンの返済が厳しい状況になってしまったときや、既に滞納してしまった場合でも、「任意売却」であればオーバーローンの不動産でも売却成立の可能性はあるので、まずは専門家に相談するようにしましょう。

 

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