任意売却で引越代は出してもらえる?任意売却相談員が解説
任意売却とは、住宅ローンの支払いが困難になり、自宅を売却しようにも売却価格がローン残高より少ない完済できない状況(オーバーローン)に債権者に承諾をしてもらい売却をする方法です。
(詳しくは>オーバーローンとは)
しかしながら、せっかく債権者が売却を承諾してくれ、買い手が決まったとしても、経済的に困窮したことが原因で支払いができなくなっている場合は、自身で引越費用を捻出できないことがあります。
「このままでは、引越しができないので売却自体ができない」といった状況も考えられますが、交渉次第では売却代金の一部から引越代を捻出することを認めてくれるケースもあります。
債権者としては、競売にするにも申立費用が掛かるため、売却が成立するのであれば、引越し費用の捻出を認めてくれることがあるのです。
しかし、任意売却では必ず引越代が出るわけではなく、また他に条件や金額にも決まりがあります。
そのため、本来であれば、任意売却を依頼した後からは引っ越しに向けて預金の準備をしなくてはいけません。
いざ、自宅の引き渡し時にお金がなく焦ってしまうことがないように、先に手だてを考えなくてはいけないということです。
今回の記事では、任意売却時の引越代の考え方から、捻出の仕方(条件)などを解説いたします。
目次
任意売却ならではの引越代の考え方
任意売却ならではの引越代の考え方は、「任意売却=自宅を引っ越す」ということになるため、必ず引っ越し業者に依頼をして支払いをしなくてはいけません。
そして、任意売却時に原則配分されるものとして、
①住宅ローンの残債
②不動産仲介手数料
③抵当権の抹消費用
④マンション管理費など滞納分(※配分されない場合もあり)
があります。
売却代金のほとんどは、①ローン残債に対する支払いにあてられます。
登記簿謄本にて確認ができますが、登記されている抵当権者にまず配分されるのです。
ただし、任意売却はオーバーローンであるため、売却価格から①~④すべてを捻出するためには、この配分①を減らしてもらう必要があります。
つまり、任意売却で引越代をもらうということは、債権者への返済額が少なくなるということなのです。
引越し代は必ず払われるものではない
そのため、引越し代は必ず払われるものではありません。
債権者が引越し代を捻出するのは義務ではなく、会社として任意売却で債権の回収できる見込み金額によって決められているからです。
そして、債権者ごとに決められたルールのもと配分できるかは決まっており、債務者が経済的に困窮しているので、転居をスムーズに進められるように引越代を認めてもらっているということです。
そもそも任意売却は債権者の同意が必須です。
債権者にまず売却の承諾をしてもらい、さらに引越代も交渉して承諾をしてもらうことが必要であり、必ず貰える保証は最初の段階では確約はされないのです。
売却金額から引越代の配分を認めている
仕組みとしては、売却金額から引越代の配分を認めているということです。
ここを詳しく説明すると、抵当権者が1番手、2番手といる場合はすべての債権者に認めてもらわなくてはいけません。
1番抵当権者が800万円、2番抵当権者が400万円の残債あり、1000万円で売却価格が決まった場合に、2番抵当権者は残債を大きく下回る金額しか回収できなくなります。
あくまでも売却代金の配分により債権者が納得をしている状態でなくては成立しないのです。
万が一、認めませんということになるとこのまま任意売却はできずに競売へと流れてしまいます。
そのため、売却金額からの配分がない場合は、自身で捻出するしか基本的にはありません。
(※3章にてさらに解説します)
また、売却金額からの配分となるため、費用として受け取ることができるのは買い手が決まってからということも重要なポイントであり、確認しておかなくてはいけません。
競売のケースでは引越代を出す例は少ない
競売のケースでは引越代を出す例は少ないでしょう。
買主の立場において、競売での落札は基本的に売却目的で不動産業者が買主になるケースが多いために、収益を重視する傾向があります。
そのため、引越し費用を捻出しようと考えることはないのです。
また、仮に競売で落札した物件から立ち退きされないとしても、裁判所に強制執行の手続きを行えばいいだけですので、落札した業者としては所有者であるので早く退去してもらうために手続きを取ることになります。
債権者の立場からも考えてみると、競売手続きを裁判所に申し立てておけば、その後の手続きは不要ですので、引越し費用を捻出しなくても問題は生じません。
そもそも、競売を申し立てる時点で70万円から100万円もの費用が追加でかかっていますので、この時点で引越代を債権者が用意してくれることは無くなるのです。
確保できる引越し代の相場は20~30万円
確保できる引越し代の相場については、20~30万円とされています。
現在のところ、これ以上の金額が認められる例はごく稀です。
ご自宅の物量が多い場合は、少しずつ自身でも運び出して減らすことが必要になります。
又は、安い引越し業者を不動産会社に紹介してもらうなどして調整しましょう。
任意売却時の引越代が出してもらえた事例
ここでは、過去にうまく行った実例を踏まえ、任意売却に伴う引越し費用やその後の生活費について、まとめました。
任意売却時の引越代が出してもらえた事例を確認していきましょう。
①債権者が認めてくれた場合
まずは、先述していた通り債権者が認めてくれた場合です。
実際は、「生活に困っていることや、全く余裕がないことを債権者に伝えることがポイントになります。」ということは無く、債権者が引越代を認める基準は各社ごとに決まっています。
つまり、債権者は債務者毎の家計状況を見てから認めているということはなく、会社として配分ができるかということになります。
②買主が負担してくれた場合
次に、買主が負担してくれた場合ということがあります。
この例は、買主になる方が、一般の方・業者どちらかの場合もあります。
一般の方が買主の場合は、お願いをすることで承諾を得られるかもしれません。
買う方が引越代を負担してくれることは通常ありませんが、任意売却の物件は市場に出ている不動産よりも何割か安く出ていることがあり、総合的に安く買えるのであればと、協力いただけることもあります。
業者であれば、会社として利益が出るとして認められた場合に負担してくれる場合です。
しかしながら、業者こそ利益が見込めないとなると捻出してくれることはありません。
このことから、買主が負担してくれる場合はいずれも任意売却の価格次第になるのです。
③仲介業者が用意してくれた場合
最後に、仲介業者が用意してくれることもあります。
不動産仲介業者の場合、報酬となる部分は仲介手数料のみです。
そのため、仲介手数料が下回っていた場合はもちろん用意してくれることはありません。
このことから、安易に「必ず引っ越し代が出ます」という業者が怪しいとなるのです。
ただし、任意売却に慣れた仲介業者であれば、任意売却自体を成立させるために様々な方法で力になってくれるはずです。
そのため、引越し代をもらえるかもらえないかではなく、きちんと理由を説明してくれること、任意売却自体を成立にもっていってくれる会社が良いでしょう。
引越代がどうしても捻出できない場合
引越代がどうしても捻出できない場合どうしたらいいのかと、
「もう売却もできないので…。」と諦めるまえに一度専門家に相談してみましょう。
引越代が捻出できないときこそ任意売却をする
任意売却の利用について「費用の心配」をされる方がとても多いのですが、引越代が捻出できないときこそ任意売却をすると解決に繋がることができます。
それは、任意売却を行う過程で、債務整理を行うことや、不良債権化することで生活に余裕をつくる案が出てくるからです。(詳しくは>生活を立て直すために)
任意売却を行うためには、相談したときから売却後の生活までの流れを確認しなくてはいけません。
任意売却の取り扱いに慣れた会社であればスムーズに教えてくれるでしょう。
任意売却経験の多い不動産会社に依頼する
そこで、任意売却経験の多い不動産会社に依頼しましょう。
任意売却は物件毎・債権者毎によってルールや、できることと、できないことが明確になっています。
そのため、引越代に限らず、まずは任意売却自体を成立させることが重要になります。
引越ができるように、前もって準備期間を作ってくれることや、債権者との調整にも慣れた会社に依頼することが安心して新たな生活をスタートできることになるのです。
債務整理を併せて検討する
少し先述しましたが、債務整理を共に検討しましょう。
任意売却完了後、残った債権についてはお客様の収入状況や生活状況に応じて無理のない範囲で分割払い等の相談にのってもらうことが可能です。
ただし、任意売却を依頼した時点から、生活に困窮していた場合は他債務と併せて、整理していくことも必要になります。
もちろん、任意売却後に債務の金額を考慮してから考えることもできますが、その他債務が多く、支払いが滞ってしまう場合には早めに検討するとよいでしょう。
どうしても引越代の捻出が必要である場合は、任意売却の手順を専門家に確認しながら進めるようにしましょう。
まとめ
さて、任意売却の引越代の考え方、実際の捻出の仕方を解説しましたが、それぞれの家計状況に加え、債権者の情報や不動産自体の状況(立地や建物価値)も関わってくるため、実際に自身のケースは引越代が出るのかの確認は、任意売却を専門としている会社に確認が必要です。
相談時にはなるべく、不動産に係る情報を説明して、最善策を選んでいくことが必要になります。
間違っても買い手が決まった後に、「実はお金が無くて引っ越しができません。」とならないためにも、事前に相談しておくことで、捻出してもらえることもあるため、不安にならずに話すことをおすすめしています。