任意売却を行って掛かる費用はどうなるの?持ち出しが掛からない理由とは


不動産の売却をするには、さまざまな費用がかかります。

そのなかで、万が一住宅ローンの支払いに困り「任意売却」をする際に気になるのが売却費用です。

任意売却時は、お金に困っている状態であるので、不動産の売却にかかる費用がいくらかかるかもわからないことは大きな不安でしょう。費用を捻出することができず、身動きができない場合もあるのではないでしょうか?

結論から言うと、任意売却の場合であっても基本的な費用は通常の不動産の売却と変わらず、仲介手数料や抵当権の抹消費用となどが必要です。

ただし実際には、任意売却では債権者(保証会社など)と調整したうえで、売却に必要な費用を不動産を売却した代金から配分されるため手出し費用は掛かりません!

またマンションの場合、滞納してしまったマンションの管理費や修繕積立金などについても原則は売買代金の中から配分されますので、新たに費用負担を求められることはありません。(※滞納年数により異なる)

万が一、買い手がつかずに任意売却ができなかった場合も、報酬として費用を請求することはなく、任意売却は完全成功報酬と考えてよいでしょう。

今回は、任意売却にかかる諸費用と、実際の負担について詳しくご説明します。

 

任意売却の費用は持ち出しがない理由

一般的に任意売却の費用は持ち出しがないと言われていますが、どのような仕組みや理由になっているのでしょうか。確認してみましょう。

 

諸費用は掛かるけど、すべて売却代金の中から捻出できる

一般的に任意売却の費用は持ち出しがない理由は、不動産を売却した代金から捻出されるからです。

イメージとしては下記の図の通りです。


基本的には、成約価格から配分案が決まり、これを抵当権者が承諾することでまとまります。

ただし、抵当権の設定が1番、2番と分かれている場合もあり、そのような場合には、どちらの抵当権者にも承諾を得てから配分金額が決定されます。(配分は1番抵当権者が優先されます。)

このとき、成約価格が住宅ローン残高を大きく下回ってしまうと、2番抵当権者に費用の配分が回らないことが生じてしまうこともあり、そのような時は、後順位抵当権者にはハンコ代で抵当権を抹消してもらえるよう交渉するのです。

 

ハンコ代とは、債権額の全額でないにしても応じることで少しでも債権を配分できる状態です。

債権者としてはゼロよりは少しでも回収しておきたいということで応諾してもらえることになりますが、必ず配分金額が認められるとは限りません。
認められない場合は、任意売却自体が不可能なので、売主に費用の請求はないということになるのです。

また、税金や住宅ローン以外の債務を滞納していると、既に「差押登記」が入っていることがあります。
このときも差押えた債権者に解除の依頼・交渉をします。

この差押解除応諾費用は、差押債権者によって違い、こちらも和解などによって成約価格から配分することになります。
差押えが解除されない場合は、同じく任意売却は出来ないため、費用請求自体はありません。


任意売却の諸費用は通常売却と同じです

実際に係る任意売却の諸費用は、通常売却と同じです。

自己資金での持ち出しがないだけで実際には費用は掛かっており、その分ローンの残債は増えてしまうわけです。

基本的な費用としては、仲介手数料や抵当権の抹消費用などが必要です。

仲介手数料

不動産仲介手数料は不動産を売却した会社に支払う報酬です。
下記の通り決まっています。

□成約価格の3%+60,000円+消費税

ただし、

成約価格が400万円以下の場合は計算式が異なります。
□成約価格の4%+20,000円+消費税
成約価格が200万円以下の場合
□成約価格の5%+消費税

この仲介手数料は基本的には変動がありません。
任意売却の開始時には媒介契約書を結ぶことになるので、売り出し価格が確定したら不動産仲介会社に確認をすることができます。

 

抹消登記費用

抹消登記費用は司法書士へ払う費用です。

抵当権の抹消とは、登記簿謄本に記載された抵当権の内容を削除することです。

金額の相場は、司法書士によって多少異なりますが20,000~30,000円ほどとされています。

 

滞納清算金(管理費または修繕積立金等)

またマンションの場合、滞納清算金がある場合は費用として支払います。

所有様が滞納した金額は、原則はこちらも成約価格から配分され支払われますので、新たに費用負担を求められることはありません。

ただし、管理費や修繕積立金の滞納額が大きい場合・滞納年数が5年を超えた場合、取り扱いが変わることもあります。
滞納金額が大きいことが分かった状態であれば任意売却時に買主に交渉する場合や管理組合側と交渉することも考えられます。

管理費なども滞納してしまったから売却が不可能になるわけではないため、早い段階で専門家に相談することが任意売却の成功に繋がります。


売却が決定して初めて費用がかかる

そもそも任意売却は、売却が決定して初めて費用がかかります。

先述した通り、任意売却は完全成功報酬となるため、万が一、任意売却ができず競売になってしまったとしても、相談費用や、売却活動に伴う経費が請求されることはありません。

費用の心配を含めて早めに相談することで任意売却の成功に繋がることから、最悪の事態を避けるためには、費用を貯めてからということはなく、まず専門家に相談するようにしましょう。


任意売却では譲渡所得税は掛からない

次に、不動産を売却する際には、売却して得られた利益額に応じて税金がかかります。
譲渡所得税と呼ばれている税金です。

不動産は売却にかかる税金は多額であることから、任意売却後の心配事として、不動産は売却にかかる税金も払えないかもしれないということも費用の懸念点ですが、この譲渡所得税は原則掛かりません。
こちらも理由を確認してみましょう。

 

任意売却は譲渡損失が発生する

任意売却は、基本的には譲渡損失であることです。

住宅ローンの残債があり、オーバーローンの状態で販売をするため、譲渡益がでることはありません。
譲渡損失に関して税金はかからないため、売却による税金の心配はしなくても大丈夫なのです。

 

マイホーム3000万円控除を適用できる

ただし、相続などで取得費等が無く費用計上が少ないことで利益が多少出ることになった場合は、マイホーム3000万円控除を適用することが可能です。

要件は、「譲渡益が3,000万円に満たない場合は、その金額までの控除となり、税額は0になります。」とされています。

譲渡益が3,000万円を超える場合には、超える金額に対して、短期譲渡所得又は長期譲渡所得などの税率を適用することになり、所有期間の長さには一切関係なく適用することができます。


このことから任意売却である時点で、譲渡損失となることが多いほか、万が一、譲渡益が出る売却をしたとしても、3000万円を超える利益が出ることは少なく、またこの適用を利用することで税額はかからないのです。

(詳しくは>任意売却の税金


任意売却での引越し費用は交渉できることもある

任意売却での引越し費用は交渉できることもあります。

任意売却は自宅を手放すことになるため、引越しが必要です。

債権者によっては、売買代金の一部から控除費用として認めてくれることもありますが、認められない場合は、不動産会社が購入者に交渉し協力を得ることもあります。

この引越し費用に関しては必ず成約価格から配分を認められるとはならないので注意が必要なのです。
任意売却を行っている期間などで費用を捻出することも考えておきましょう。

 

【特例】任意売却で特別費用がかかる場合とは

さて、任意売却で特別費用がかかる場合があります。
基本的な費用は債権者に認めらますが認められない事例を2章で事例別に説明します。

 

差し押さえがある場合の「差押解除費用」

冒頭で述べましたが、差し押さえがある場合の「差押解除費用」が必要となる場合があります。

金銭契約の担保、または税金や管理費等滞納額の担保として、差押えが入ってしまった不動産であれば、解除(交渉)を売却時に必ずしなくてはいけません。

(※差押えがある状態では移転登記が出来ないからです)

差押えは様々な理由で登記されていますが、基本的には差押えた権利者へ交渉します。


下記の差押え例で費用が発生するパターンを解説します。

① 主に固定資産税や住民税滞納が原因である時
お住まいの市役所にて直接交渉をします。自宅を売却し、返済することを伝えます。
このとき、市区町村によっては滞納金額を一部免除してくれることもあります。
全額納付を求められた場合は、差押え解除のためには資金をご用意する必要があります。

② 金銭を他から借り入れたことが原因である時
権利者または、弁護士を通して和解の金額を交渉します。
全額納付を求められた場合は、差押え解除のためには資金をご用意する必要があります。


登記識別情報(権利証)を無くした場合の「本人情報確認費用」

次に、登記識別情報(権利証)を無くした場合の「本人情報確認費用」が掛かります。

これは申請者が間違いなく本人であることを証する「本人確認証明情報」を提供することによって、事前通知を省略することができるという制度のもと必要なのですが、売却時にこの権利証を無くしてしまった場合は、余分に費用が必要になるのです。

この費用は、債権者が配分費用としては認めてくれないことが多く、万が一見つからない状況であれば追加費用として5万円程用意しなくてはいけません。

 

配分が認められなかった場合の「引っ越し費用」

配分が認められなかった場合の引っ越し費用は用意しなくてはいけません。
任意売却を開始してから約3~6か月間(※更に詳しくは>任意売却流れと8つのステップ)は引っ越しに向けての準備期間と考えましょう。

 

税金の滞納(固定資産税)は支払いから逃れられない

任意売却が成功したとしても、税金の滞納(固定資産税)は支払いから逃れられないことを忘れてはいけません。

任意売却に伴う費用とは異なりますが、どのような税金も支払うことは義務とされているため、家を売却したとしても所有していた期間の税金は支払う必要があります。

ただし、「税金の滞納分」については管轄する役所により取り扱いが異なることもあるため、詳しくはお住まいの税務署に確認を取りましょう。

 

まとめ

任意売却は「売却時の費用」は掛かかりますが、基本的には売却代金より捻出することで解決しています。

このことから、売却時に

「現時点で残債額が売却可能額よりかなり上回る状態なので売却費用まで用意が不可能です。」
「固定資産税・管理費などの滞納もしています。」
「住宅が古く、室内の状態も悪いためリフォームもしていません。」
「差し押さえがある不動産です。」

といった様々な悩みがあっても、特別な費用の捻出に関しても専門家のアドバイスを得ながら進めることが可能となるため、まずは何でも相談することがよいでしょう。

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