固定資産税を滞納したら直面する4つの悲劇と、今すぐできる対処法
「固定資産税を滞納してしまった。」
「固定資産税が払えない…。」
「税務署から督促状が届いた。」…
このような状況で何を優先して行動すればいいのかわからないという事態になっていませんか?
本来、固定資産税などの税金の支払いは国民の義務であり、他の支払いより優先して払わなくてはいけません。
例えば滞納した場合は、延滞金のペナルティが納付期限の翌日から発生するため、どんどん払えない金額に膨れ上がってしまうからです。
滞納した場合の流れとして、あなたの元には税金の納期限を過ぎた20日以後に督促状が届きます。
その後10日以上経っても、税金が支払われない場合、役所は法律の通りに「差し押さえ」をしなくてはいけないため、いずれ「差し押さえ」を行うのです。
差し押さえをするタイミングは、通常であれば何度か督促状が届いた後ですが、役所ごとに対応は異なっており、弊社のご相談いただいた方の中には1回目の督促後すぐに差し押さえが入ってしまった方もいます。
いざ、ご自宅を手放して住宅ローンの支払い苦から脱したい!と考えていても役所から自宅を差し押えされてしまっては売却すら出来なくなることもあるのです。
このような事態に陥ってしまったとき、甘く見てはいけない税金の滞納が続いたらあなたの生活はどうなってしまうのか真実をお話しし、最善の対処ができる方法をお伝えします。
目次
固定資産税を滞納して起こる4つのこと
まず固定資産税を滞納したら起こることについて解説いたします。
消費者金融で借りる利息よりも高い延滞金
固定資産税を滞納して起こること1つ目は、延滞金の発生です。
この延滞金の税率は、納付期限の翌日から1ヶ月経過する日を境に大きく変わり、下記の通り納付期限の翌日以降は非常に高額です。
納付期限の翌日から1ヶ月経過する日までの税率:年2.6%
納付期限の翌日から1ヶ月経過する日以降の税率:年8.9%
(特例基準割合:令和1年12月時点)
上記の場合、仮に100万円の税金を滞納した場合、1年間で約9万円が加算されます。
5年後には50万円以上も延滞金が増えているのです。
これは毎年1割ずつも増えていることになり、一般の消費者金融は金利5%~18%なので消費者金融の利息のほうが安くなることもあるということなのです。
例えば、5年間放置した場合は下記のようになります。
たった5年間で延滞金がとても増えていることが分かります。
少しの遅れであれば問題ありませんが、何十年も延滞してしまったら恐ろしい延滞金になっているのでご注意ください。
給与の差し押さえ
2つ目に給与の差押えが考えられます。つまり強制的に給与から天引きされて税金の返済に充てられてしまうのです。
しかも、役所が給与を差し押さえるために滞納者が務める会社に連絡をしてきますので、給与を差し押さえれると会社に税金を滞納していることが知られてしまいます。
一度差し押さえが始まってしまった場合には、翌月以降も継続されて引き落とされてしまうので、固定資産税を滞納した場合に最も生活に響くのではないでしょうか。
ただし、生活をするにはある程度のお金が必要なため、給与全額が取られる訳ではありません。
では、この生活をする上での「ある程度のお金とは」は決められています。
下記①~④を足した金額は差し押さえされません。
① 給与から控除されている所得税や住民税・社会保険料
② 本人生活費として月額10万円
③ 同一生計の配偶者や子供等の親族一人当たり4万5000円の最低生活費
④ 給与から所得税や住民税、社会保険料を控除した額の20%(ただし、この20%相当分が最低生活費の2倍を超えてしまう場合には、その2倍までとなります。)
こうして差し押さえされない金額があったとしても元々が苦しくて税金を払えなかったわけなので、実際の生活に大きなインパクトを与えることになるでしょう。
生活が苦しくなり、この差し押さえを解除してもらうためには、「生活を著しく窮迫させるおそれがあるときに該当する事実」を証明しなくてはいけないため、簡単に解除もしてもらいません。
何より、給与口座の差し押えとなってしまうと会社にも分かってしまう為、滞納していることが公になってしまうということも考えられます。
【補足】
自営業者の方の場合:経営者という立場上、自身の給料がないから大丈夫ということはありません。
代わりに自宅にある動産を差し押さえるケースとなり、車や貴金属が対象となります。
さらに差し押さえる動産が無い場合は後述する、自宅(不動産)の差押えになるのです。
自宅の差し押さえ
3つ目に自宅の差押えがあり、これは土地や自宅など不動産に差し押さえ登記を入れるということです。
この差し押さえ登記がある場合、自宅は勝手に売却することが出来なくなります。
ではなぜ役所は不動産を差し押さえて売却を止めてしまうのかですが、この場合役所としては財産を勝手に売られてしまうことを恐れているからです。
不動産を差し押さえることによって、売却益を税金の滞納に回してもらう為、このように差し押さえ登記を入れておくことになります。
土地や建物に差し押さえ登記があっても、販売活動自体は可能となりますが、差し押さえされたままでは所有権移転が出来ず、そんな土地や家を買う人はいないので売却することが出来なくなるのです。
自宅を差し押さえられてもすぐには追い出されない
ただし、生活上に置いては、一見すると普通の生活が送れる状態です。
差押え登記されたとしても、急に追い出されるということもないため、差し押さえに気づかなかったという方もいらっしゃいます。
差し押さえが入った状態だとしても、住宅ローンの滞納が無い場合は、しばらくは今まで通り過ごすことが可能ですが、登記簿謄本にはしっかりと「差押」と記載されています。
では、普通の生活が送れるのならば、そのまま払わなくてもいいのではないか。という考えになりますが、結論、このまま放っておいた場合は給与が差し押さえられてしまうでしょう。
先に給与の差し押さえが入ることもありますが、自宅差し押さえ後、給与の差し押さえも考えられます。そうなると今度は生活を圧迫し、結局住宅ローンも払えないという事態に陥るのです。
(「住宅ローンを滞納してしまうとどうなる?」⇒詳しくはこちら)
公売
4つ目として最悪のケースですが公売になってしまいます。公売とはその名の通り行政が一般に向けて(公に)差し押さえた不動産を売却することです。
この段階になって不動産の買い手が決まると家を出なくてはいけません。
実際に公売までされることは多くない
国税庁の公売情報で現在の売り出し不動産を確認することができますが、固定資産税の滞納で公売となるケースは実は少なく全国で出ている数も200件程で多くはありません。
また、この多くが宅地ではなく使われていない山や田んぼ、空き家などに該当するため実際に人が住める物件となると60~100件程になり、公売になってしまったケースというのはほぼないのです。
自宅が公売に100%ならないとは言えませんが、役所側も人が住んでいる自宅を公売にするよりも給与の差押えを優先することのほうが多いようです。
ただし、すぐには公売にならなくても、払わない間は延滞金が発生し続けているので最優先で支払いをすべきでしょう。
差し押さえを避けるためにできること
では、1章で述べた差し押さえを避けるためにはどうしたらいいのでしょうか。2章では対処法をお伝え致します。
誠実な対応によって分割払いを同意してもらう
1つ目の方法は、役所や税務署に自ら出向き、誠実な対応で少しずつでも払う意思があることを伝えることです。
すぐには手持ちがなく払えない状況だとしても、期日を伝えて払う予定を決めることで、当面は役所側も差押を行いません。ここで「払う気がない!」「払えない」など言ってしまうとすぐに差し押さえされてしまう可能性もあるため慎重に話を進めてください。
口頭での約束にはなりますが、役所側も差し押さえなくてはいけないとされているため、払う意思が無いと判断した場合はそのまま作業的に差し押さえを行ってしまいます。
とにかく、給料・不動産どちらも差し押さえが入らないほうが良いため、誠実な対応を心掛けて分割払いを同意してもらいましょう。
ただし、分割払いを行っていても、稀に差し押さえが入ってしまうこともあります。
これは役所ごとの判断になってしまい、1年以内で差押を行う市区町村もあれば、3年間滞納し続けても差押をされない市区町村もあります。いつまでにいくら滞納してしまったらという基準はないのです。
督促状が必ず届いていると思いますので、この督促状が来たら差し押さえがいつされてもおかしくないと思っておいてください。
支払いの優先順位を上げる
2つ目に大事なポイントは、税金は自己破産しても消えない為に支払いの優先順位を上げるということです。他のどんな支払いよりもこの段階では優先度を上げてお支払いすべきです。
固定資産税の滞納者に多いのが、住宅ローンの支払いを優先しており、固定資産税に回らないというパターンです。
ですがこのような場合役所側は、「住宅ローンの返済=資産形成」を優先したと考えます。
税金を払わず資産を増やすならば、その資産を差し押さえようとなってしまうため、給与・自宅に差し押さえが入ってしまう結果になるのです。
「税金を優先することによって住宅ローンが払えなくなったら家を追い出されてしまうのでないか?」と不安になる声もありますが、銀行側もすぐに競売にするということはありません。
銀行から保証会社に債権が移動するのも4~6か月滞納した場合となりますので、この間に対処法を考えることが出来るため、差し押さえを避けるためにはまず税金の支払いが優先となるのです。
(「住宅ローンを滞納してしまうとどうなる?」⇒詳しくはこちら)
差し押さえられたらすぐにすべき対処法
では、既に差し押さえが入ってしまったら、差し押さえを解除しなくてはいけませんので、やはり誠実な対応で交渉し、固定資産税を払う意思があることを伝えることが大切なポイントとなります。
この章では、解除してもらう方法をお伝えします。
役所と相談して滞納額の返済計画を立てる
本来、差し押さえ解除は一括払いでなくてはいけません。
とても一括で返済するのは難しい場合、ご自身にて役所に出向きお願いをすることで支払猶予や分割払いを認めてもらいます。
分割払いには、通常分納・徴収の猶予・換価の猶予と3つ方法があります。
ただし徴収の猶予と換価の猶予は、条件を満たした方のみが申請することができるもので、経済的に困窮していることなどを明確に示さなければ簡単に認められませんが、災害など相当なる理由による場合はこの方法を取ります。
基本的には、通常分納を認めてもらい、少しずつでも返済し完済することで解除してもらうことができます。
リースバックをして滞納金額を払う
リースバックとは、資産であるご自宅を一度売却し買い手になるオーナーから賃貸として借りることで今まで通りの家に住みながら資金を得ることができる仕組みです。(リースバックとは⇒詳しくはこちら)
この方法で得た資金を滞納してしまった固定資産税や他借入金に充てることができます。
リースバックは何よりも今まで通りの家に住み続けることが出来るのがメリットです。
また、ご自宅の売却で所有権は無くなりますので、今後は固定資産税もかからなくなります。
転職や入院などを機に現在のご収入が少なくなり、今後も収入の回復見込みが少ないため、通常分納が難しい場合はこちらの方法をご検討いただくとよいかもしれません。
ただし、リースバック自体は売却利益によって債務を全額返すことが条件となりますので、住宅ローンの残債が多く完済が難しい場合は後述する任意売却という方法を取ることになります。
任意売却で滞納金額を支払う交渉をする
任意売却とは、住宅ローンの残債がある状態で銀行または保証会社、差し押さえた役所と交渉し、ご自宅を売却できるようにすることです。
銀行・保証会社側からも売買代金の中から固定資産税の滞納分の捻出を約束してもらうことで成立します。
自宅を売却し、得た売却益の中から滞納金額を払うのですが、差し押さえが入ったままではご自宅の所有権移転ができず売却できないため、事前に役所から差し押さえ解除を合意してもらうのです。
滞納金は全額返済か応諾金額での返済
売却益の割り振りは、抵当権の順番から銀行・保証会社が優先となります。
例えば、1500万円の残債があり、1300万円で任意売却が可能となった場合には住宅ローンの残債に充ててしまうので売却益は固定資産税の滞納分が残りません。
このままでは税金滞納を返済することができないため、差し押さえは解除されないということになります。
この場合、重要なのは役所側がいくらの金額返済で応じてくれるかなのです。(応諾費用)
この役所側が応じる金額は市町村によって異なります。
大都市であるとやはり滞納金額の全額返済でないと受け付けないこともありますが、なかには滞納金額が50万円だとしても30万円で応諾してもらえることもあります。
その応諾費用を銀行・保証会社側に売却益から捻出してもらい差し押さえを解除してもらいます。
解除されないと自宅は売却できない
では、役所側が全額納付ではないと差し押さえを解除しないとした場合、その金額が多く、銀行・保証会社側が応じれなかった場合は売却することが出来なくなります。
お互いの合意があって任意売却ができるということなのです。
最悪は公売になるケースもある
前述のとおり、売却自体が不可能になってしまうと、いずれは公売になってしまう可能性が高いです。
または、公売の前に給料の差し押さえがあり、結局は住宅ローンが払えなくなってしまい競売へと繋がってしまうことも考えられます。応諾費用などの調整がうまくいかない場合は残念ながら任意売却という最後の手段もできなくなってしまうでしょう。
【補足】
不動産に差し押さえ登記が入ってしまった後、公売開始までの期間も市区町村によって大きく異なるため決められた期間がないのが特徴です。
また、任意売却は引っ越しを余儀なくされますので、ご検討の場合はデメリット等をよくご理解の上、専門業者に依頼することをおすすめします。
まとめ
税金を滞納すると全額返済するまで逃れられないことがお分かりいただけましたでしょうか?
差し押さえされることによって、生活が困窮してしまうため、わからないままに放っておいてしまうのではなく、早めの段階で役所・税務署でご相談されることがいいでしょう。
既に差し押さえがされてしまった場合でも、すぐには公売にはならないため、落ち着いて解除してもらうために専門家にご相談いただければと思います。