老後破産の悲惨な現実!その実例と今からできる対策を専門家が解説
最近様々なメディアでも取り上げられて話題になっている「老後破産」。
金融庁が「老後資金のために2000万円必要」と発表したことで、国民の老後破産に対する不安が一層駆り立てられました。
では、実際に老後破産するとどのような状況に陥るのでしょうか?
そこには想像以上に厳しい現実があります。
当社では、実際に老後破産に陥ってしまった方からのご相談をこれまで300件以上お受けしてきましたが、本当に悲痛なものばかりです。
ここでは、その実例を交えながら
・老後破産に陥った方の実情
・老後破産してしまう人の共通点
・老後破産しないために今からできること
について解説していきます。
悲惨な老後破産の現実
まずは老後破産に陥ってしまった方々の生々しい実例をご紹介します。
病気で人生設計が狂い住宅ローンが払えず自己破産したKさん
病気で退職を余儀なくされ貯金が底をついた
Kさんは元々大企業にお勤めで、40代前半までは全く生活に困っていなかったことはなく、「当時は老後破産など考えたこともなかった」と言います。
しかし、40代後半から会社での役職が上がるにつれて責任も重くなり、精神的にも肉体的にも限界の状態だったそうです。
そのようなストレスもあってか、大病を患ってしまい最悪の場合は命まで危ないと医者から告げられます。1年間の闘病生活の末、幸にも完治して退院することができましたが、それまでと同じように仕事をすることは到底できない身体になってしまい、退職を余儀なくされました。
退職金や保険金もそれなりに出たそうですが、医療費と仕事ができない間の生活費に加えて、進学が決まっていたお子様の大学の学費などの出費で消えていきました。
貯金を切り崩しながら生活をした結果、60歳を迎えるころにはほとんど使い切ってしまい、老後のために貯めていたはずの貯金が底をついてしまいました。
重くのしかかる住宅ローンのボーナス払い
そして60代を迎え、大きな問題となったのが住宅ローンです。
Kさんは毎月9万円を返済しており、完済予定年齢は74歳でした。
老後の収入はわずかな年金とアルバイト代で、夫婦で月25万円程度。
平常月は何とかやりくりをしていましたが、体調が悪化してあまりアルバイトができなかった月や、医療費など臨時の出費があった月は完全に家計の収支がマイナスになります。
最大の問題は住宅ローンのボーナス払いでした。
もちろんアルバイトでボーナスなど出ませんでしたが、住宅ローンの返済はボーナス払いを併用していたため、年に2回は20万円の返済が必要なります。
25万円の収入で20万円のローンを返済することなど到底できず、次第にボーナス分の支払いが延滞してきました。
これは老後破産の典型例のひとつで、定年退職後にローンが残っているケース、特にボーナス払いがある世帯では老後破産のリスクが大きくなります。
積みあがった請求書、多重債務で返済に追われる日々
住宅ローンのボーナス払いが遅れがちになり、銀行からも催促の連絡や督促状が届くようになりました。
銀行からのプレッシャーもあり、何とか返さなければと考えたKさんはカードローンやキャッシングを利用するようになります。
しかし、家計の収支が改善していないのに借金をしたところで無理な延命にしかなりません。
「住宅ローンを返すために金利の高いカードローンやキャッシングをした結果、今度はそっちの返済に行き詰り、借金を返すためにまた借りるという多重債務のスパイラルでした」とKさんは当時を振り返ります。
月々の収支はマイナス、500万円以上の債務超過
私が老後破産の相談をいただいたのはそんなときでした。
ご自宅にお邪魔すると、開封されていない請求書が山のように積みあがっていました。
Kさんに確認しても「もういったいいくら借金があって、どのくらい返済が遅れているのかもよくわからない…」と言います。
多重債務に陥ってしまった人の典型例ですが、もう請求書を見ることも苦痛になって開封して確認することすらできなくなるのです。
家計の状況と債務の総額や毎月の返済額などを、ヒアリングや書類から確認していきます。
その結果、以下の通り500万円以上の債務超過の状態でした。
【収入】25万円/月(夫婦の年金+アルバイト)
【支出】28万円/月(生活費13万円+返済15万円)
※ボーナス払いや固定資産税などの臨時出費は除く
【資産】
・自宅:推定資産価値800万円
・車:推定資産価値15万円
【負債】
・住宅ローン:1300万円
・カードローン・キャッシング等:130万円
・税金滞納:約30万円
「もう楽になりたい…」自己破産でリセットすることに
最初は借金の債務整理(任意整理)や住宅ローンのリスケジュールなどにより、ご自宅を残す方向でご相談を進めていきました。
しかし、ヒアリングの結果、前述の通り
・月々の収支が完全にマイナスであること
・尚且つ任意整理による債務整理しただけでは大幅な収支の改善が見込であること
・資産と負債を比較して大幅な債務超過であること
という状況であったことから、自宅を残すことを断念し、自己破産により債務を帳消しにして一度リセットすることが最も負担が少ないという結論にいたりました。
Kさんも返済に追われる生活にもう精神的に限界がきており「まるでお金を返すために生きているよう。もう楽になりたい」と、最終的に自己破産を決断しました。
自己破産後の生活
結局、Kさんは自己破産により長年住み続けた自宅を失うことと引き換えにすべての債務を免責にしました。
これにより、500万円以上あった債務超過を解消し、返済負担がなくなったことで引越し先のアパートの家賃を差し引いても月々の収支をわずかながらプラスに改善することができました。
Kさんは、「病気になる前は自分の老後がこんな苦しいものになるなんて想像していなかった。自己破産して今まで積み上げてきたものをすべて失ったような気持ちです。」
と悔しさをにじませつつも、今後の生活について静かに語りました。
「でももう限界でした。これ以上苦しい想いをしながら生活を続けていくことは無理だし、生きている意味を感じられない。自己破産して家も信用もすべてを失いましたが、今は返済に追われない平穏な生活を取り戻せていますし、子供を大学卒業させてやれたのだけが救いですね。残りの人生は妻とつつましい穏やかな生活をしていきたいです。」
個人事業が行き詰り老後破産したTさん
バブルが続くと錯覚していた…
老後破産する人の特徴で多いのが「個人事業主」の方です。
Tさんは老後破産する個人事業主の典型的な例でした。
Tさんは、30代の後半で独立して建設工事の仕事をしていました。当時はまだバブルで建設ラッシュが進み、余るほど仕事があったと言います。
「あの時ちゃんとお金を貯めておけば今ごろこうはならなかったかもしれない。でもあの時は何の根拠もなくこれがずっと続くと錯覚しちゃったんですよね」
当時は老後のことなど考えず、派手に飲み歩いて散財していたそうですが、バブルが崩壊すると仕事が急激に減ったうえに仕事の単価も大幅に下がって収入が激減してしまいます。
ようやく収入が安定したころにリーマンショックが襲った
それでも必死に営業と現場をこなして仕事をもらい、バブルの時に6000万円で購入した自宅の住宅ローンと家族の生活費を工面していました。仕事も少しずつ安定し、わずかながら老後資金も溜まってきたそうです。
しかし、そんな矢先にリーマンショックで再び悪夢が起こります。
不況で多くの建設会社が倒産の憂き目にあい、Tさんが仕事をもらっていた複数の元請会社も倒産したことで、仕事が一気になくなりました。
「収入が3分の1以下になりました。それでも家族を守らなければならないので、ようやくできた貯金を切り崩して生活費やローンに充てました。おかげでもう貯金ゼロですよ」
厚生年金だけでは食べていけない
リーマンショックで収入が激減しても懸命に働いて何とか生活を維持していたTさん。生活が苦しいときは何度か滞納もしてしまったそうですが、何とか無事に住宅ローンも払い終えました。
しかし、年齢を重ねるごとに体力的に現場仕事は厳しくなっていきました。65歳になった今も生活のために少しは仕事を続けていますが、もう若い時のようには働けません。
Tさんは自営業だったため国民年金に加入していましたが、厚生年金と比べると受給できる年金額は微々たるもので、年金だけでは到底生活していけません。これが個人事業主に老後破産が多い要因です。
待っていた老後破産の現実
住宅ローンを払い終えても毎月の収入ではどんなに家計を切り詰めてギリギリの生活で、どうしてもやむを得ない臨時出費があるとキャッシングなどに頼るしかありませんでした。仕事ももう長くは続けることができず、もし今後夫婦どちらかが病気なったら医療費もかかってきます。
「もう不安しかありませんでしたよ。何とかやりくりしてきましたが、この生活をあと10年続けることはできないと思いました。もう老後破産は他人事ではなく、まさに自分がそうなろうとしています。この歳になって生活がこんなに苦しくなるなんで…」
家を売ったお金で生活し、足りなくなったら生活保護
結局、貯金が全くない老後の生活は無理だと判断したT様は自宅を売却する決断をされました。せっかく必死に働いて住宅ローンを返しきったものの、これ以上の維持はできないという断腸の思いの判断でした。
愛着のある家を売ることには抵抗があったそうですが、「もう気持ちの問題ではどうにもならなかった。生きていくことが優先」と決心をしたそうです。
購入時6000万円もした自宅を約1000万円で売却し、家賃6万円の家に引っ越しました。
家賃の負担が増す分、売却して得たお金を使い切ると余計に生活が苦しくなってしまいますが、Tさんは「質素な生活をして、それでも長生きしたら家を売ってできた貯金も使い切ってしまう。その時はもう生活保護に頼るしかない」と力なく語りました。
貯金なく老後に突中してしまうと、いずれ生活が行き詰り、慣れ親しんだ自宅も手放さざるを得なくなります。そして、最悪の場合は自己破産に追い込まれる。これが老後破産の現実です。
老後破産する人の特徴と原因
前述の事例のKさんは病気によって「人生設計が狂った」ことが原因で老後に自己破産に追い込まれました。
また、Tさんは「個人事業主で収入が不安定で、なおかつ国民年金のため老後に受給できる年金が少なかった」ことが老後に自宅を手放さざるを得なかった原因です。
決して2人ともギャンブルや浪費をしていたわけではありません。この2人の例から分かることは、まじめに働いていても、病気や不況など予期せぬことで老後破産に陥ってしまうことがあり得るということです。
では、実際に老後破産をしてしまう方々はどのような原因や特徴があるのでしょうか。
40代で貯金ゼロは黄色信号
老後破産する人の共通点は、貯金がゼロ~500万円未満で定年退職を迎えているということです。つまり、平均余命を考えれば残り20年以上ある老後を、年金やアルバイト収入だけで生きていかなければならないということになります。これでは老後破産は見えています。
当たり前の話ですが、老後破産を回避するためには、定年退職を迎えるまでにある程度の資産を蓄えておかなければなりませんが、そこから逆算すると40代からはある程度の貯えが必要になってきます。
貯金がゼロかそれに近いということは、月々の収支がトントンということです。
そんなギリギリの生活では、急に病気になったり不況で給料ダウンなどの事態に見舞われた時に、老後を待たずに破産してしまいます。
確かに40代は子供の学費や食費などにお金がかかる年代ではあります。しかし、それを言い訳にしていると手遅れになります。貯金ゼロで50代に突入した方が、定年までの10~15年で十分な老後資金を蓄えられる可能性は極めて低いと言えます。
住宅ローンの完済年齢が70歳以上
前述のKさんがまさにそうですが、住宅ローンの完済年齢が70歳を超えている方も老後破産の予備軍です。
そもそも定年退職後に年金だけで現役時代と同じ金額のローンを返済していくというのはあまりに非現実的です。なぜこのような返済計画になっているかというと、退職金による一括返済が前提となっているのです。これは、ひと昔前の終身雇用と年功序列が基になっている考え方です。
従って、退職金で一括返済できるという方は完済年齢が70歳以上でも問題ありません。しかし、転職を繰り返せば退職金は期待できませんし、1つの会社で長く勤めたとしても中小企業ではそれほど多くの退職金は見込めない会社が多いでしょう。
そのため、退職金は不確定要素が強く、それを前提にするのは非常に危険です。また、ボーナス払いを併用していると更に老後破産リスクが高まります。
当社にいただく老後破産のご相談の中でも最も多いのが、老後に残ってしまった住宅ローンによる破産なのです。
個人事業主に老後破産が多いという事実
老後破産してしまう人に多いのが、個人事業主の方で、当社にご相談いただく方の約3分の1を占めています。
これにはいくつかの要因があります。
①収入が不安定
②儲かったときは使ってしまう人が多い(貯金が少ない)
③受給できる年金が少ない
前述の事例のTさんがまさに典型的なケースです。収入がどうしても不安定なうえに、なおかつ個人事業主が加入する国民年金は会社員が加入する厚生年金よりも現役自体の負担が小さい分、老後に受給できる年金額は低くなります。
現役時代にどれくらい負担したかにもよりますが、ほとんどの個人事業主の方は、年金収入だけで老後の生活をしてくことは到底できないのです。
そのため、個人事業主の方は、個人年金に加入しておくなど現役時代から老後の資金計画を立てておかないと取り返しのつかないことになります。
最も多い原因は「病気」
現役時代に大病を患い収入が下がってしまったり、老後に病気にかかり医療費がかさんだことがきっかけで、人生設計が狂い、最終的に老後破産に陥るというのが最も多いパターンの一つです。
病気は、
・誰にでも起こり得る
・本人の努力だけでは回避できない
・収入ダウンと支出の増加が同時に起こる
という点から老後破産を引き起こしやすい要因となっているのです。
健康に気を付けて病気にならないようにすることが大切ですが、100%回避することはできませんので、若いうちから医療保険に加入するなどのリスクヘッジをしておくことが重要になります。
「老後資金2000万円」は本当か?老後破産を避けるためにできること
では、老後破産を避けるためにはどうすれば良いのでしょうか。
本稿では、老後破産回避のための根本的な考え方を解説し、具体的な個別の手法は他のサイトに譲ります。
まず老後の生活はいくらあれば足りるのか計算してみる
老後破産を避けるために、何より最初にやらなければならないのは、自分たちの生活を維持するために実際にいくら必要なのかを計算してみることです。これが分からなければ対策の使用がありません。
逆にこの試算をするだけでも、今から老後までにいくらくらい貯めないといけないのか現状を把握でき、老後に対する意識が高まり、老後破産するリスクを大幅に低減できます。
逆に老後破産する人の共通点として、この点の意識が弱く、老後になってから真剣に考え始めて手遅れになるというパターンが多く見受けられます。
まずは現時点で何にいくら使っているかを確認し、そこから老後に増えるであろうコスト(医療費など)を加え、逆に老後にはなくなるコスト(子供の学費や食費など)を差し引いてみるのが分かりやすいでしょう。
【主な生活費の項目】
・住居費用(家賃、住宅ローン、マンション管理費、固定資産税等)
・食費
・家具、家電
・衣料品
・保険医療
・通信費(携帯代等)
・交通費(電車賃、車、ガソリン、駐車場代、自動車税等)
・趣味、娯楽
・水道光熱費
・住民税等の税金
・その他
食費などは子供が独立すれば今よりも減額できるでしょう。逆に医療費は年齢を重ねるごとに高くなっていきますので、読めない部分ではありますが、多めに見ておいた方が良いでしょう。
【金融庁の「老後資金2000万円必要」は本当か?】
金融庁が発表して話題になった「老後資金2000万円」について検証してみます。
下の図が、金融庁が根拠とした総務省の「高齢夫婦無職世帯の家計収支(2017年」です。
【出典】総務省「家計調査」(2017年)
これは、高齢夫婦の平均的な収入と支出を算出したものです。
金融庁はこの表を基に、以下のように試算しています。
毎月の不足分5.5万円×12ヶ月×30年=1980万円
しかし、当然ながらこれはあくまでも平均であり、個別の家庭の状況によって大きく異なります。
個人的には、仕事を継続しない前提であれば、老後の必要資金2000万円というのはかなり甘い試算だと感じます。
例えば、この表では住居費用が消費支出の5.8%、つまり約14,000円程度と計算されていますが、これは明らかに持ち家で住宅ローンを払い終えている前提です。
住宅ローンを払い終えていない世帯や賃貸で暮らしている世帯ではこんな金額で収まるはずはありませんし、住宅ローンを払い終えていてもマンションであれば管理費と修繕積立金だけでももっと高額になるでしょう。
また、年金収入が夫婦2人で約21万円と試算されていますが、現役時に「夫:自営業、妻:専業主婦」であった世帯では受給できる年金はもっと低くなる可能性があります。
つまり、世帯によっては老後資金2000万円では到底足りず、より多くの資産を蓄えるか仕事を続けなければ老後破産に陥ることになります。
「資産」と「負債」のバランスもチェック
前項で、毎月の収支(フロー)のバランスをチェックしましたが、同時に資産と負債(ストック)のバランスも定期的にチェックすることをお勧めします。
つまり、今自分の資産をすべて現金化したらいくらになり、すべての借金を返したらどのくらい残るのかということです。
【主な資産の例】
・預貯金
・株式、投資信託等の有価証券
・自宅などの不動産
・解約返戻金のある保険
・現時点での退職金
【主な負債の例】
・住宅ローン
・自動車ローン
・その他の借入金や未払金
これは意外に見落としがちなポイントですが、月々の収支(フロー)はプラスでも、資産よりも負債の方が大きい(債務超過)という方が実は大勢いらっしゃいます。
それは住宅ローンの残高が自宅の現時点での資産価値を大幅に上回るケースが多いからです。
特に、フルローンで家を買うと最初の20~25年は債務超過に陥ることがほとんどです。
もちろん家を買う場合はある程度は仕方ないことですが、このバランスが大きく崩れると老後破産の危険度が増します。
目指すは50歳までに債務超過の解消
老後破産に陥りづらい状況をつくる一つの目安としては、50歳までに債務超過を解消することです。
なぜ、毎月の収支(フロー)だけでなく資産と負債のバランス(ストック)が大切かというと、老後に毎月の収支がマイナスに陥って貯金が枯渇したとしても、資産(主に不動産)があれば、何らかのかたちで現金化できるからです。
例えば、自宅を使い続けながら現金を調達する方法として、リバースモーゲージやリースバックなどの方法があります。(詳しくは後述します)
従って、毎月の収支や貯金(現金)の額だけを気にするのではなく、資産と負債のバランスを常に意識することが大切なのです。
なお、50代の後半になっても債務超過が解消できないと、たとえ貯金があっても老後破産のリスクは高くなります。
「運用」や「投資」で老後資金を稼ぐのはNG
金融庁の「老後資金2000万円」の発表があって以降、銀行や証券会社がそれを謳い文句に使って投資信託などの販売に力を入れています。「老後2000万円必要ですよ。だから投資信託で運用して増やしましょう」という具合です。
これは資産運用の商品を販売している会社からすれば、営業の格好のネタができたわけですが、私は運用や投資では老後破産回避の根本的な解決にはならないと考えています。
理由は、以下の通りです。
①投資信託などの多くの金融商品は元本保証されていない
②そもそも多額の投資ができる人は投資しなくても老後破産しない
③老後破産する人のほとんどは現役時代から運用するほどの資産がない
投資信託などは株や不動産投資と比べれば比較的リスクの低い投資ですが、決して元本が保証されているわけではありません。つまり「減る可能性もある」わけで、増える保証がないものに老後の人生を賭けるというのはあまりにもリスクが高いと言えます。
もちろん、投資信託などの投資や運用が悪いということではありません。
長期的な計画を立てて運用を行うことはむしろ良いことだと思います。
しかし、投資した資産が減る可能性がある以上、そこに老後の人生を賭けるのではなく、資産が増えなくても生活していけるだけの準備をしておきつつ、増えたら娯楽や趣味に使おうくらいの心構えが大切です。
実際に私がご相談を受けた老後破産者の方たちが、現役時代から資産運用をしていたら老後破産しなかったかと言えば、結果は同じだったと思います。(そもそも現役時代から運用する資産が無かった方も多いです)
根本的な解決策は「支出を抑える」以外はない
前述の通り、資産の投資や運用はプラスアルファとしては良いですが、根本的な解決策にはなりません。
あくまでも家計の収支やりくりして、現役のうちから資産を蓄えるしかないのです。
もちろん、収入を増やす努力は必要ですが、簡単にできることではありません。
となると、あまりにもありきたりな結論になりますが、結局は支出をコントロールするのが一番確実な方法です。
子供の教育費や生活費がかさんで貯金ができない嘆く方もいらっしゃいますが、厳しい言い方をすれば「できないではなくやるしかない」のです。
遅くとも40代に突入したら資産を蓄え始めなければ手遅れになりかねません。そうでなければ冒頭でお伝えした事例のような老後破産の現実があなたを待ち構えています。
老後破産しそうになったら
では、実際に老後破産しそうになってしまったらどうすれば良いか解説します。
相談する窓口を確認する
まずは各市区町村に相談することが先決です。市区町村ごとに生活困窮者への様々な支援制度があるため、まずは役所に事情を説明して、受けられそうな制度を確認してみましょう。
最終手段として生活保護も検討するべき
どうしても生活が成り立たなくなれば生活保護も選択肢です。
浪費をして生活が成り立たなくなったというのは話になりませんが、努力をしたうえでどうしても老後破産が避けられなかったのであれば、国が認めている制度ですので堂々と相談しましょう。
持ち家がある場合、売却やリバースモーゲージも視野に
ただし、持ち家があると原則として生活保護は認められません。
その場合は、まずは自宅を売却してその売却資金で当面の生活をしていくしかありません。
その後、売却資金が底をついてどうしても生活が成り立たなければ、その段階で改めて生活保護を申請しましょう。
自宅に住みながら家を売るリースバック
老後資金の確保のために自宅を売却する際に、家にそのまま住み続けながら売却できるのがリースバックです。
リースバックは、自宅を売却したうえで買い手から賃貸として借りることで、自宅を売却して現金化した後も家賃を払いながらそのまま家に住み続けられるという仕組みです。
自宅を担保にお金を借りるリバースモーゲージ
リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関からお金を借りて、債務者(お金を借りた人)が死亡した時に相続人がその家を売却して返済するという仕組みです。
債務者が存命の間の返済は利息のみで元金の返済がないため、月々の返済額を小さく抑えられるのがメリットです。
ただし、対象となる地域が都市部に限られるので、ご自身の自宅が対象地域になっているか確認しましょう。
まとめ
本稿では、老後破産の実例と対策について解説しました。
老後破産を避けるために早い段階から以下のことを心がけましょう。
・老後にどれくらいの資金が必要か試算する
・月々の収支(フロー)だけでなく資産と負債のバランス(ストック)にも注意する
・支出を抑えて40代から資産を蓄える
そして、どうしても老後破産してしまいそうになったら、早い段階で市区町村に相談するなど対策を取ることが大切です。