税金を滞納して差押えを受けた!差押え解除の4つの方法

税金が支払えなくて「差し押さえ」になってしまった。

差し押さえの通知書が届いてようやくことの重大さに気づく方もいるのではないでしょうか。

このような事態が起きてしまうのは、生活費や教育費、予期せぬ出費に追われ、税金の支払いを後回しにしてしまい、結局支払えないままになってしまったことや、国民健康保険・国民年金の払い忘れ等を放置してしまったときです。

それに加え、税金は高い利率で延滞料もかさんでいくので、延滞税込みでとても簡単には払えない金額になってしまっていることもあります

なかには、100万円を超える税金を滞納してしまい、払いたくても払えないという結果になってしまう例もあるため、甘く見てはいけません。

そして、そのまま放置してしまうと給与や預金、持ち家(不動産)は役所に「差し押さえ」されてしまうのです。

ただし家を差押えをされたからといって、不動産はすぐに売り飛ばされるわけではありません。
また給料の差し押さえでも、税金等を控除した残額の4分の1までが差押えの対象であり、全額を取られてしまうわけではありません。

とはいえ、生活が困窮することは想像でき、やはり早めに差押えの解除をしてもらうことが必要です。

今回は「差し押さえの解除」にポイントをあて、公的機関による差し押さえの理解を深めるための解説をしていきます。

 

 税金滞納による差押さえ解除

差押えは、債務者の最低限度の生活保障、配慮を行ってなされますが、生活を圧迫する恐れがあり、一刻も早く解除することが望ましいものです。まずは、基本的に税金滞納による差押さえ解除に関して説明します。


 差押さえ解除とは

差押え解除とは、差押えによる処分の禁止の効力を将来に向かって失わせるものとされています。

したがって、既に差し押さえに基づいて、「差押解除前に一部の取立て及び国税への充当がされていた場合には、差押えの解除は、既にされていた取立て等の処分には影響を及ぼさない」とされています。

つまり、取られてしまった給与(滞納に充当された金額)は戻ってはこないということです。
仮に、公売により差し押さえられた自宅が売れてしまった場合も、差し押さえがその後解除されたからといって戻ってはきません。※公売された代金をもって換価したと捉えることができます。

また、差押え解除は「その旨を滞納者に通知することによって行う」とされています。
そのため債務者には通知がされますので、解除されたか否かは確認することができるでしょう。


 税金の滞納は延滞金を含めて全額支払うことが条件

そして差し押さえを解除するためには、原則として、「税金の全額」を納付しなければ解除してもらえません
税金の「分割」納付を約束するだけでは、差し押さえは解除できないのです。

つまり、税金の滞納は払い終わるまで決して逃れられないわけです

このような強い条件であることから、注意が必要なのは、給与が入金された預金です。
預金は差押え禁止部分がないため、滞納額の全部を差し押さえられるという事象も発生しています。

全額の支払いが条件とはなりますが、急に預金が差押えられてしまうと生活が困窮するため、早めに役所への相談が必要となります。

 

差し押さえ解除の方法

さて、重要となる差し押さえ解除の方法を説明します。

先述した通り、原則は完納が条件となりますが、滞納税金の完納を目的とする自治体は、差押えをしたとしても、滞納者が誠実に支払いの意思を見せれば分割払いに応じてくれることや、公売を待ってくれるでしょう。

解除の方法は主に以下の4つです。
(類似記事>差し押さえ解除は可能なのか?

 

①交渉による解除

まずは、役所に行き、交渉による解除です。

交渉を行うには、返済計画をきちんと示す必要がありますが、市区町村によっては、この交渉によって「滞納分の全額ではなく一定額を支払って、残りを分納する」という取り決めにて、差し押さえの解除に合意してくれる場合もあります。

例えば、100万円滞納していたとしても、資産売却にて50万円を売買代金利益から拠出して納付し、残りを分納するといった交渉です。

また、今後収入回復の見込みがあるなど示せれば、期日指定にて分割払いも認められることもあります。
ただし、市区町村によっては交渉に一切応じないというところもあるため、各自治体に確認しましょう。

 

②不動産売買により解除

次は、不動産売買により解除が考えられます。
差し押さえによって、不動産の所有者は、自由に不動産の売却をすることができなくなります。

ただし、不動産売買によって得た売却益を滞納した税金に充てることを事前に役所に報告することで売却の許可を得ることが可能です。

したがって、解除について同意を得ることができれば売却は可能になります。

また、この時不動産の価値が残債より少ないオーバーローン状態であったとしても、「任意売却」という手段にて売却することも可能になるため、滞納した税金の金額が大きく払うことができない場合は、一つの手段として不動産の売買で解決することも可能です。

(詳しくは>住宅ローン残債がある家を売却方法と条件

 

③個人再生申立てをすることで解除

また、もう一つの交渉として個人再生申立をすることでの解除です。

個人再生を申し立てた後、その裁判所に対し、強制執行の中止命令を出してもらうように申立てをします。
裁判所がその必要性を判断し、中止命令が出されれば差押えは解除されます。

ただし強制執行の中止命令が出ても、すぐに給与は全額を受け取れるわけではありません

中止命令だけでは給与は、一旦留保されるためです。(※免責許可後受け取り可能です)

直ぐに全額を受け取るためには、個人再生の裁判所に、「強制執行取消命令」の申立てを行い、認められた場合に、個人再生の手続きの途中でも支払いを受けることができるのです。

もっとも、「強制執行取消命令」は、給与の手取り額が減ることにより債務者の生活に著しい支障が及び、今後の手続きに著しい支障がでる恐れがある場合という要件があり、個人再生で実際に差押え解除が認められることは非常に少ないとされています。

個人再生申立てでは、直ぐに元の生活に戻るということは難しいでしょう。

 

④自己破産で手続き停止

次は、自己破産で手続き停止させて解除します。

弁護士を通し、裁判所に自己破産申立てを行います。
ただし、破産開始決定が出るまでに通常、1か月程度かかることがあるため、個人再生同様に時間がかかります

例えば、給与が差し押えられている場合、(他財産がないことが明らかで)破産手続開始と同時に破産手続廃止となる「同時廃止事件」であれば、破産手続開始決定により差押えは中止となります。

ただしその場合でも、給与の4分の3を超える額の支払は留保されたままとなるのです。

免責許可決定が確定すると、差押え処分は取り消され、留保されていた給与もようやく全額受領することができます。

一方で管財人が選任される「管財事件」の場合、通常は管財人の手続によって差押処分は取り消され、将来の給与は全額受領できるようになります。

 

ちなみに、不動産強制競売の申立がなされている場合には、競売手続が破産手続の中で続行することになるため、差押えを解除することはできません。銀行預金の差押えも同様に解除が不可能です。

つまり、財産である不動産がある状態では自己破産は完了できず、それに伴い差押えも継続してしまうため、順序としては不動産(財産)を無くしてから自己破産の手続きが開始となり、差し押さえの解除となります。故に、時間がかかってしまうということなのです。


 差押さえ解除にかかる日数は完納した日から数日後

このようなことから、差押えの解除にかかる日数は完納した日から数日かかるということになります。
先述した通り、手続きに時間が掛かることもあり、債権者が差押えた対象物が何か、によっても大きく異なります。

大きく分けて、給与・預金口座の場合と不動産の場合をご説明します。

 

給与・預金口座差押えの場合

給与の差し押さえの場合は、通知が会社に行くため、完納した時点から次の給与振り込み日には全額が受け取れることになります。
預金口座差押えの場合では、この口座の差し押さえは「凍結」とは違うので、その後も該当の口座に入金等をすることは可能です。

つまり、滞納を完納した場合や、自己破産による免責許可が下りれば受け取れるようになるため、差し押さえ解除後の数日後には利用できるようになり、その口座にて預金を開始することができます。

 

不動産差押えの場合

ただし、不動産差押えの場合は少し日数がかかります。

通常、売却代金より税金の滞納を支払う旨で交渉が完了した場合、決済日の当日納付書と差押え解除証書をもって、移転登記の手続きが行えます

つまり不動産売買の通常のスケジュールに沿って進めていくことになるため、売却が決まったから直ぐに差押え表記が解除される訳ではないのです。

しかしながら、滞納した金額を預金などで完納した場合は、役所は直ぐにでも差し押さえを解除してくれることにはなりますので、登記手続き上の日数がかかると考えていいでしょう。

 

税金滞納による差押さえを放っておくと起こること

1章では差し押さえ解除に向けて動いた場合を解説致しましたが、税金滞納による差押さえを放っておくとどうなるのでしょうか。

 

賞与も差押さえられることがある

まず、給与を差押さえられていた場合、関連して賞与も差押さえられることがあります

給与差押の対象は、税金や健康保険料などを引いた手取り額の4分の1までの金額でした。
(※「給与額の1/4が33万円を超える場合」には、33万円を超える部分の全額が差し押さえの対象)

いったんこの給与差し押さえが始まると、滞納した税金と遅延損害金を全額支払うまで毎月差押が続いてしまいます。

そして、差し押さえを解除せずにいると、ボーナスや退職金も差押の対象になることがあるのです。


最悪は公売になってしまうことがある

不動産の差し押さえは最悪、公売になってしまうことがあります

公売とは、国や地方公共団体が、税金の回収のために差し押さえた財産(不動産や動産)を売却・換金するための手続きのことをいい、一般的に知られている競売と近い処分になります。

国税庁のHPにも記載されていますが、公売では、買受後の返品が認められないほか、品質・機能について保証がないため、一般的に市場価格より低い見積価額が設定されています。

そのため、不動産を処分するにしても公売や競売を避けるべきといわれており、早急に差し押さえ解除に動き、通常売却もしくは任意売却をすることも視野に入れましょう。

(詳しくは>任意売却と競売(公売)の違い

 

差し押さえ解除できない場合の対処法

万が一ですが、差し押さえを解除できない場合もあるでしょう。
3章では、その際の対処法をご紹介します。

 

差押禁止範囲の変更申立てを行う

まずは、差押禁止範囲の変更申立てを行ってみましょう

この制度が使われる例としては、公的年金や生活保護費が預貯金口座に入金されたタイミングで預金差押えをされた場合です。
給与の差し押さえは禁止範囲がありましたが、預金口座にはないために生活費の全額を差押さえられてしまったときの対処法となるのです。

「債務者及び債権者の生活の状況その他の事情」を考慮する場合も適用になることがあるため、一度この制度を相談してみると良いでしょう。

ただし、こちらの方法は根本的な解決とはなりません。

禁止範囲を変更しただけでは差押えの原因となっている税金の滞納額には影響がなく、債務が減るわけではないからです。
この間も、遅延損害金は膨れてしまうので、支払うことが可能であるならば、滞納額を完納することを優先することも大切です。

 

不動産であれば任意売却を検討する

不動産であれば任意売却を検討しましょう

これは、1章でも少し触れましたが、不動産を売却することで得る金額の充当で、解決する方法もあります。
「差押え」の入った不動産のままでは、一般的には買い手は見つかりません

つまり、放っておくといずれは公売になってしまうため、住み続けることはできないことや、不動産を所有したままでは、自己破産もできないため処分に時間が掛かってしまい、その間も生活に支障をきたします。

税金を滞納してしまい、完納することが不可能であるならば早めに専門家に相談し、任意売却も検討してみましょう。

(詳しくは>任意売却とは

 

まとめ

今回は「差し押さえの解除」について詳しく解説いたしました。

自己破産や個人再生の手続によって解決を図ることも可能ですが、どちらも手続きには時間がかかってしまうことがあります。
そのため、税金を滞納した場合は「解除」に向けて動ける先手として、放っておくのではなく役所へ相談または任意売却の相談、専門家への連絡も動くようにしましょう。

 

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