Q:新築を建設中に離婚に。家とローンはどうすればよいでしょうか?
新築の家を建てる契約してすでに着工してしまったのですが、家が建つ前に諸事情により離婚することになってしまいました。
家が建っても1人ではこんな広い家は必要ないですし、何より1人では住宅ローンの負担が重く、支払っていくのが厳しいです。
できれば契約をキャンセルしたいのですが、すでに着工しているため高額な解約金が掛かり払えません。どうすればよいでしょうか?
目次
選択肢① 夫婦どちらかが住む
まず、考えられる選択肢としては離婚後に夫婦のどちらか一方がその家に住むことです。
夫婦のうち家の名義を持っている方がそのまま住み、住宅ローンも名義人が支払っていくというのが一番シンプルなかたちです。
また、もうひとつ良くあるパターンとしては妻と子がその家に住み、子供の養育費代わりに月々のローンの一部または全部を夫が返済していくというかたちです。
夫婦どちらか一方が住む場合のリスクと注意点
夫婦のどちらかが住む場合、長期的なリスクを考えず、安易にその家に住み始めて後で大きなトラブルになるケースが非常に多いのも事実です。
夫婦どちらかが住むという判断をする場合は、下記のリスクを十分に留意しておく必要があります。
新築は一度でも住んだ瞬間に資産価値が大きく下がる
新築の物件は一度でも住んでしまうと「中古」になります。
そのため、一度そこで生活を始めてしまうと、その瞬間に資産価値が大きく下がり、その後に売却し用としても価格が大幅に下がってしまいます。
そのため、多額の頭金を入れていた場合を除いて、当面は売却しても住宅ローンを完済できないオーバーローンの状態が続くことになります。
オーバーローンの状態では後でやっぱり売りたいと思っても簡単に売却することができませんので、最後までローンを1人で払い続ける覚悟をしておかなければなりません。
相手方にローンを負担してもらう場合、払われなくなる可能性がある
例えば離婚後に妻と子が新居に住んで、夫が養育費代わりに住宅ローンの返済をしていくという離婚条件がまとまったとします。
しかし、住宅ローンは最長35年という長期間に渡る返済になりますので、途中で何が起こるか分かりません。
そのような長期にわたって、元夫が今の収入を維持して支払い続けられる保証などどこにもないのです。
実際に、私共のところにも「元夫が払う約束をしたのに返済が止まって家が競売にかけられてしまいそう」という悲惨なご相談が多数寄せられます。
最低限として、その離婚条件を離婚協議書(できれば公正証書)に書面で残しておくことは必須ですが、もし元夫が無収入になってしまったらどうにもならず、このリスクを完全に排除することはできません。
ご自身が家に住んでローンは相手方に払ってもらうという場合は、万が一の時は自分でローンを肩代わりするか、家を出ていくという覚悟をしておくことが必要です。
選択肢② 賃貸物件として貸し出す
夫婦双方が離婚後にその家に住む必要がない場合は、第三者に賃貸物件として貸し出しすというのも選択肢の1つです。
住宅ローンの月々の返済額と同等程度の賃料で貸すことができれば、その家賃収入を住宅ローンの返済に充てることができて負担なく返済をしていけます。
しかし、これにも大きなリスクと出費が伴いますので、それも踏まえたうえで判断が必要です。
※第三者に貸してご自身が住まない場合、厳密に言うと銀行との住宅ローン契約上、契約違反になります。
賃貸として貸し出すときのリスクと注意点
新築物件を賃貸として貸すときは、以下の点に留意する必要があります。
途中での売却は難しい
これは選択肢①でも解説しましたが、新築物件に人を住まわせてしまうとその瞬間から中古物件となります。
そのため、後でやっぱり売ろうと思ったきには資産価値が大幅に下がっている可能性が高いです。
また、将来的に物件を売却しようと思った時に賃貸中だと、その物件は投資用という扱いとなり空き家の状態で売るよりも安値になってしまう傾向があります。(かといって賃借人に立ち退きをしてもらうのは簡単ではありません)
従って、一度賃貸で貸してしまうとその後に売ってもローンを完済できないオーバーローン状態になる可能性が高くなります。
賃料は年々下がる
当然ですが、新築の物件と築10年の物件では取れる賃料は大きく異なります。
新築当初は月々の住宅ローンの返済額と同等かそれ以上の金額で貸せたとしても、築年数の経過とともに賃借人が変わるたびに取れる賃料は下がっていきます。
特に地方都市や郊外、都市部でも駅から遠い物件は家賃の下がり方が大きい傾向にあります。
一方で住宅ローンは元利均等方式で、基本的に完済するまで返済額は下がりませんので、最初は良くても後々厳しい状況になる可能性があります。
修繕費等ある程度の資金の持ち出しは覚悟する
借り手がついている間は問題ありませんが、その人が出ていってしまうと次の借り手を探さなくはなりません。
そのためには室内をリフォームしたり、不動産会社に依頼するための費用が発生します。
また、借り手が出ていってしまうと次の借り手が見つかるまでは賃料収入が入ってきませんので、その間は住宅ローンが丸々持ち出しになってしまいます。
さらに、築年数が経過すると設備が故障したり建物が劣化して修繕が必要になります。
この修繕費用は基本的にオーナーの負担となりますので、年々コストは上がっていきます。
従って、賃貸として貸し出すにしてもある程度の資金の持ち出しは予め覚悟しておいた方が良いでしょう。
新たに住宅ローンを借りられなくなる
よほど収入がある方を除いて、すでに1つ家を所有していてローンを払っている状態であれば、新たにご自身の家を購入しようと思っていても住宅ローンを組むことができません。
そのため、将来的に新たにご自身で家を買いたいと思っても、ローンを組めずに購入できなくなってしまいます。
※これは選択肢①で夫婦の相手方に住まわせて自分がローンを支払っていく場合にも同じことが言えます。
選択肢③ 未入居のまま売却する
離婚後に新築した家に居住する予定がないのであれば、未入居のまま売却してしまうのが最も長期的リスクの低い選択肢です。
未入居のままであれば新築あるいは未入居物件として販売することができるため、住宅ローンを一括返済できる可能性が上がります。
未入居のまま売却するときのリスクと注意点
しかし、この方法にもリスクやデメリットがあります。
完成後、売れるまでローンを払い続けなければならない
まず最初に考慮すべきは、新築が完成してしまうと住宅ローンの返済が始まってしまうことです。
住まない家のためにローン返済が開始されると、住まない家のローンの返済を続けなければならず、その間は資金の持ち出しが必要です。
オーバーローンの可能性も
新築をとして売ろうにも、買った金額で売れる保証はありません。
高額な頭金を入れている場合は別として、売却してもその代金だけで一括返済ができないことも考えられます。
特に「諸費用(土地の仲介手数料や銀行の保証料など)までフルローンで借りている」「土地を相場より割高で買ってしまった」「注文住宅で建物にお金をかけた」といったケースでは、売ってもローンを一括で返済できない可能性が高いと言えます。
まだ自己資金に余裕があり、足りない分を穴埋めして一括返済できるのであればまだ良いですが、それができない場合は任意売却するしかありません。
夫婦で共有名義・連帯保証の場合のリスク
離婚後に家をどうするかは、新築中の家や住宅ローン名義などによっても判断が変わります。
特に共有名義で家を建てる予定の方や、住宅ローンを連帯債務あるいは連帯保証で契約する場合は将来的に大きなリスクがあります。
共有名義の場合
不動産を売却したり贈与する場合には、共有名義人全員の承諾が必要です。
そのため、共有名義のまま離婚して、将来その家を売却しようと思った時には、離婚した夫や妻と協力が不可欠となるのです。
離婚してそれぞれが別々の道を歩んでいったとき、10年以上経って家を売ろうと思っても相手と連絡を取れる保証はありません。
また、もし離婚に伴って親子の関係が良くないという場合には、相続の時にもトラブルの原因となりかねません。
離婚をするのであれば、できる限り共有名義の不動産は残さず、離婚時に2人で売却してしまうか、片方が持分を買い取って共有状態を解消することをお勧めします。
連帯保証(連帯債務)の場合
連帯保証(連帯債務)はあくまでも保証人と銀行との間の契約です。
従って、夫婦が離婚したとしてもそれは銀行には何ら関係のない話であって、離婚を理由に連帯保証が解除されることはありません。
例えば、夫だけが家に住みローンを払っていくという取り決めをしたとしても、数十年後に元夫がローンを払えなくなってしまえば、連帯保証人である元妻へ請求されてしまうのです。
従って、住宅ローンが連帯保証である場合は、できる限り離婚のタイミングで家を売却してローンを完済するべきでしょう。
まとめ
以上のように、新居の建設中に離婚をしてしまうと、いずれの方法を採ってもリスクやデメリットがあります。
どの方法を採るかはケースバイケースですが、離婚をしてそれぞれがご自身の道を歩んでいく以上、お互いに将来のリスクを最小限に抑えたいところです。
その点では、もし売却してローンを一括返済できるのであれば、未入居のまま売却してしまうのが良いでしょう。
問題は売っても一括返済が難しいケースです。
その場合はオーバーローンのまま任意売却するのか、あるいは将来のリスクを残してでも夫婦どちらかが住むか、あるいは賃貸として貸すかという決断をすることになります。