差し押さえされて困ったら?差し押さえで知っておくこと
借入やカードローンの返済が遅れたり、税金を滞納したりすると、資産や給料の差し押さえを受けてしまうことがあります。
また、住宅ローンを滞納した場合も行く行くは差し押さえが入り、自由に売却ができなくなってしまいます。
このように、差し押さえが起こったら、どうしたらよいのかわからず、不安になる方も多いはずです。
ただし、いきなり給料や預貯金を差し押さえされてしまうわけではありません。
債権者はまず、電話や郵便による督促をしています。
これを無視していると、残額の「一括請求書」が届くのですが、書面には「残金と遅延損害金を一括払いするように」ということと「支払いがない場合には、裁判や強制執行をします」ということが書かれています。
何度か届くこの督促状を無視していると、ある日突然「差し押さえ」という事態になるのです。
そしてこのとき、給与の差し押さえや、口座自体を差し押さえされ、預金を引き出せなくなることもあります。
「まさか本当に差し押さえされるとは思わなかった…」という安易に考えてしまうと、更に状況は悪化の一途を辿ります。
今回の記事では、差し押さえで知っておくと良い5つの事を説明します。
差し押さえで知っておくと良い5つのこと
差し押さえで知っておくと良い5つのことを説明します。
まず、基本的差し押さえは、滞納があることで行われます。
差し押さえは他に、養育費の不払いが原因で将来発生する債権に対しても強制執行できる場合があります。
①滞納していると差し押さえが行われる
まず基本的には、滞納していると差し押さえが行われることがあると知っておきましょう。
そもそも差し押さえとは、金融機関などからの借金の延滞を続けている場合に、裁判所が強制的に債務者の財産を取り立てることができる手続きのことです。
仮に税金だとしても納税者が納付期限までに納めなければ滞納となります。
法律では「徴税吏員は督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、財産を差押えなければならない」(国税徴収法第47条)と規定されています。
このことから、税金の差押えは事前連絡や納税者の同意を必要としない、正当な行政処分となり、ある日突然に差し押さえになっていることがあるのです。
②差し押さえは債権者の権利を法律上で確保すること
つまり、差し押さえは債権者の権利を法律上で確保することとされています。
「差し押さえ」を行うことで、強制執行をする前段階の手続きとして、債務者の財産などの処分を制限していますが、給与は差し押さえをしただけでは債権を回収できません。
差し押さえた財産に対して、強制執行をしてはじめて債権が回収できることとなります。
したがって、差し押さえと強制執行は同時に手続きをされることが一般的なのです。
このことからも、「債権者が権利を確保する=急に差し押さえられた」と感じるかたもいます。
(※不動産を差し押さえた場合は、強制執行である競売落札までは手続き上、半年程の期間があります。)
(>>差し押さえとは)
③一度差し押さえされると解除は難しい
そして、一度差し押さえされると解除は難しいのです。
給与差し押さえがされている場合には、「差し押さえを外してほしい」と伝えても、応じる債権者はほぼありません。
和解するよりも給与の差し押さえを継続するほうが、確実に債権を回収できるからです。
滞納していた全額を回収できれば外してもらえますが、通常差し押さえられた場合は、ようやく回収できる状況ですので、他の解決策を考えなくてはいけません。
2章で解決策を説明致します。
④給与と口座の差し押さえの違いに注意する
次に、給与と口座の差し押さえの違いに注意しましょう。
給与の差押の対象になるのは、給与額から税金や社会保険料などを引いた手取り額の4分の1の金額です。
給与の残り4分の3は債務者(ご自身)に支払われるとされています。
しかしながら口座の特定がされている場合は口座を差し押さえることで、残高預金を差し押さえることが可能となりますので上記のルールが適応されません。
つまり、口座が差し押さえられて、そのあとに給与が入った場合、同時に口座残高(給与全額)を差し押さえられてしまうこともあるのです。
このとき口座から自身のお金は取り出せません。
給与が振り込まれる前に、給与口座を変えることができれば防げますが、勤務先に急ぎ伝える必要があり、差し押さえられた給与は返ってきません。
ローン滞納時の差し押さえまでの流れ
では、ローン滞納時の差し押さえまでの流れを確認しましょう。
カードローン等の借り入れの返済を滞納しても、いきなり給料や預貯金を差し押さえされてしまうわけではありません。
まずは、電話や郵便による督促がきます。これを無視していると、残金と遅延損害金が合わさった一括請求書が届きます。
このとき。書面には「支払いがない場合には、裁判又は強制執行をします」ということが書かれていると思います。
この一括請求書が届いたとしても支払うことができず放置していると、債権者は「裁判(貸金請求訴訟)」や「支払督促」を申し立てることになります。
この後は、裁判所から「特別送達」という郵便で書類が届き、債務残額と遅延損害金の全額の支払い命令が出て、判決が下されます。
この裁判所からの支払督促を無視した場合に、債権者の主張が認められて「仮執行宣言付支払い督促」が確定し、債権者は、債務者の財産や給料を差し押さえられる状態になります。
税金滞納時の差し押さえまでの流れ
次に、税金を滞納した場合の、差し押さえまでの流れをご説明します。
ローンの返済を滞納した場合と税金を滞納した場合の差し押さえの流れは、少し異なります。
これは、税金の滞納の場合には、裁判所で債権を確定させる手続きは必要なく、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに税金が完納されない場合には、預貯金の財産の差し押さえが可能となるということです。
つまり、滞納後は役所の判断で差し押さえが可能になるのです。
※前述で少し触れましたが、手取り金額の4分の3の給与や年金といった差し押さえが禁止されている債権でも、口座に入金がされた時点で預金となり、預金債権が差し押さえられた場合には預金口座の残高全てが対象となるため、注意が必要となります。
⑤不動産の差し押さえは自由に売却できなくなる
また、不動産の差し押さえされた場合は自由に売却できなくなります。
債権者にとって、不動産を差し押さえは裁判所の手続きにお金や手間がかかるため、大きな金額の回収を見込む時以外は負担が大きいため行いません。
不動産の競売申し立て費用は60~80万円と高額であり、余計なコストをかけずとも、給与・預金を差し押さえて借金を回収する方が手間は少なく、確実なのです。
そのため、持ち家は差し押さえられる可能性は低いのですが、一度差し押さえが入ってしまうと簡単には外してもらえず、競売という強制執行にまで至らなくとも、所有者の意思だけで売買することができなくなります。
住宅ローン滞納による差し押さえは競売に繋がる
住宅ローン滞納による差し押さえは競売に繋がります。
住宅ローンは大きな金額であり、給与の差し押さえでは回収しきれません。そのため、債権者は不動産自体を差し押さえ、競売にかけて債権の回収をします。
また、税金を滞納した場合は、滞納金額がそれほど高額でなくても自宅に差し押さえ登記をいれておき、万が一自宅売却による利益が出たときに回収できるようにします。
差し押さえが役所から入った場合は、この差し押さえ権者の同意なしでは売却はできないため、税金の滞納には注意が必要です。
(>>競売を避ける方法)
差し押さえ解除の方法
2章では差し押さえ解除の方法をお伝えします。
差し押さえの解除は難しいとされていますが、以下の方法で状況を改善できるケースもあります。
①滞納した金額を全額支払う
確実に債権差押命令を取り下げてもらうためには、債権者が請求している金額のすべてを一括で返済することです。
遅延損害金を含めて全額を返済してしまえば、債権者は給料や口座を差し押さえる必要がなくなります。
そのため、債権差押命令は取り下げられます。
②債権者と支払いの交渉をする
次に解除してもらう方法として、債権者と支払いの交渉です。
この方法は早い段階で行う必要がありますが、財産を差し押さえるには、債権者も手続きにかかる時間やお金がかかります。
差し押さえ以外の方法で未払い金を確実に回収できるとわかれば、そちらのほうが債権者にとっても負担が少ないので応じてくれることになります。
ただし既に強制執行を行っている場合には、取り下げてもらうのは難しいと思いましょう。
③債務整理で差し押さえを中止する
債務整理で差し押さえを中止する方法です。
実際に、給料・口座等が差し押さえられ始めたあとでも、個人再生や自己破産といった法的手続きは可能です。
ただし、この個人再生や自己破産は、申し立てをしてから手続きの開始決定まで1ヵ月程度かかる場合もあります。
どうしても手続きから開始決定までに時間がかかることから急ぎで解除して欲しくても難しいとなってしまいます。
例えば個人再生の流れは、申し立てて「個人再生手続き開始決定」が出ると、それまでに行われていた強制執行が中止されます。
差押分の給料は、すぐには自身には戻ってこず、個人再生の手続きが終了したときに、まとめて受け取ることができます。
同じくして、自己破産によっても給与差し押さえを止めることができます。
自己破産もそのまま免責がおりれば、申立から給与差押を受けていた分の借金の返済義務がなくなり、受け取れるようになるのです。
(類似記事>>税金滞納の差し押さえ解除)
差し押さえをされないために
最後に、差し押さえをされないためには、気を付けておくべきことがあります。
税金等の支払いを滞納しないようにする
1章でお伝えした通り、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに税金が完納されないときに、差し押さえが行われる税金の滞納は注意しておかなくてはいけません。
納付期限は税金の種類や自治体によって異なりますので、納税通知は必ず目を通すことを心がけておくことで、給与・口座の差し押さえを防げます。
少し支払いに困ったときは、税金を優先して支払うことで急な差し押さえを防ぐことにも繋がります。
督促通知などを確認して差し押さえを防ぐ
次に、滞納してしまったら、督促通知などを確認して差し押さえを防ぎましょう。
「差押予告通知」は、借入をしている金融機関から届きます。この場合はしっかりと督促を確認して、債権者に連絡をすることで期日が明確になります。
優先して差し押さえられるのは、給与や預貯金といった現金のため、期日までに対策がとれることもあります。
「銀行」と「支店名」の特定をされないようにする
最後に、「銀行」と「支店名」の特定をされないようにしましょう。
これは、返済の設定口座が給与口座になっている場合など、変更することで防ぐことができます。
のちに、債権者が会社に確認して給与を差し押さえるリスクはありますが、特定されていない口座は差し押さえることはできないため、預金を移すことで全額の差し押さえを防ぐことができます。
ただし、差し押さえる口座がないと分かり、他の動産や不動産に差し押さえが入ってしまうこともあるため、慎重に判断しなくてはいけません。
まとめ
差し押さえで知っておくと良い5つの事を説明しました。
差し押さえを受ける前であれば、債権者と支払い方法を交渉をしたり、税金の分納の合意してもらい、給与の差し押さえを回避することができる場合があります。
ただし、一度差し押さえを受けてしまうと、対処法は限られており、生活に支障がでてしまうため、いずれにしても差し押さえをされる前に専門家に相談することがおすすめです。
支払いが多くなり、どの債務から支払うことが適切なのか、債務整理を依頼するのかも含めて、「差し押さえ」の知識がある会社に相談するようにしましょう。