国民健康保険を滞納すると起きる悲劇と今すぐやるべき対策


もし国民健康保険料を滞納してしまったら…

そもそも国民健康保険は、大きな病気や怪我などによる医療費を保険でまかなうための制度です。

日本国民で保険料を支払うことで、診療が必要になった際の医療費の自己負担を軽減させることが目的です。

しかし、この国民健康保険料は高額な支払いであることを理由に滞納してしまう方も多く、2018年度に保険料・税(国保料)を滞納していた世帯は、全加入世帯の15%近い約269万世帯であることが、厚生労働省の調査で分かっています。

ただし20歳以上の社会保険未加入者は「国民健康保険へ加入する義務」があるため、支払いを逃れることは原則できず、早急に支払いを行わなくてはいけません。

では、もしこのまま滞納を続けてしまった場合は、どのようなことが起こってしまうのでしょうか。

 

実際に滞納してしまったとしてもすぐに保険資格が失われるということはありませんが、段階を経て最終的には保険資格を喪失します。

また、この場合滞納したことによるデメリットもあるためここではしっかりと国民健康保険料を滞納してしまったときに起こり得ることを学びましょう。

 

国民健康保険は滞納しても支払い免除にならない

まず、国民健康保険は滞納しても支払いは免除になりません。
これは冒頭で述べたように、20歳以上で社会健康保険または国民健康保険に加入し支払うことが義務とされているからです。

 

健康保険料は税金と同じ納付の義務がある

この健康保険料は、税金と同じ納付の義務があり、例え債務整理(自己破産)をしたとしても無くなりません。

自己破産には、免責の対象にならない「非免責債権」があり、国民健康保険料はこの非免責債権となります。

税金と同じく滞納すると決して逃れることができず、滞納することによりペナルティも生じることになります。

 

国民健康保険に「時効」は事実上ない

また、国民健康保険に「時効」は事実上ありません。

保険料の場合時効は2年となっていますが、時効を成立させるためには滞納を始めた日から時効成立日まで一度も請求(督促)が無かった場合に限られます。

途中で請求や差押え命令がくると、その時点で時効はリセットされます。

滞納すると必ず督促状や督促の電話が入るため、現実的には時効を成立させることはほぼ不可能なのです。

 

 国民健康保険滞納した後の流れとは

では滞納した場合以下のように、処分が行われていきます。

 

納期限が過ぎると督促状が届く

まず、納期限が過ぎた翌日以降、国民健康保険を管掌している「市町村」から支払の督促状が送られてきます。
督促状の内容は、「定められた期日までに支払うように」とされており、納付期限の翌月20日迄と再期日が、記されていることがあります。

このときまでに支払いをすれば、それ以上に問題が大きくなることはなく、国民健康保険を継続できます。

ですがこの督促状の支払期日までも無視していると、保険料を納付するよう督促電話や職員による訪問がされる場合もあるようです。

 

滞納が1年未満の場合「短期被保険者証」に切り替わる

滞納をそのまま続けた場合は、2、3カ月~半年を過ぎたあたりから「短期被保険者証」に切り替わります。
短期保険証は市町村役場から発行されて、以前の健康保険証は使えなくなってしまいます。

健康保険料を滞納するとすぐに短期被保険者証に切り替わる自治体もありますが、滞納後の納付期限(翌月20日頃)を過ぎてから短期被保険者証に切り替わる自治体もあるため、所在地ごとに確認が必要になります。

【短期被保険者証:有効期限】

各市町村によって異なりますが、3~6か月程度と短くなっており、更新手続きには納税相談が必要となる場合があります。
そのため、納税世帯主の来庁が必要になり、代理人が来庁する場合は、委任状に必要事項を記入し持参しなくてはいけません。

 

1年以上滞納が続くと保険証は返納、被保険者資格証明書になる

そして滞納が1年以上続くと、短期被保険者証は返納となり、「資格証明書」を渡されます。

資格証明書とは、国民健康保険に加入しているという資格のみを証明する書類です。

また自治体によっては納期限から1年6か月以上滞納が続いた場合は、診療費、高額療養費、出産育児一時金等の保険給付の全部または一部の支払を一時差し止めることがあるとされています。

 

受診の際は、かかった費用の10割(全額)が一旦自己負担になる

資格証明書となってしまった場合、健康保険証とは異なり、病院で受診したときに医療費の全額支払いが必要となります。

受診の際は、かかった費用の10割(全額)を一旦は自分で負担し、自己負担を超える部分については、後に市町村に申請することで、還付を受けます。

つまり、一時的に医療費を全額負担しなければならないので、利用者にとっては非常に医療費負担が大きくなります。

場合によっては、還付されることなく滞納保険料に充てられることもあるため、このことで、事実上病院を受診できなくなる方も少なくありません。

 

滞納時のデメリットは大きい

国民健康保険料は滞納したときのデメリットは大きく、少しばかり滞納してしまったが故に財産の差押えに繋がってしまう場合もあるのです。

 

延滞税は年14.6%と高い利率である

その理由として、滞納した時の延滞税は年14.6%と高い利率(納期限の翌日から1か月を経過するまでの期間、1ヶ月を経過した日以降から納付した日まで期間で延滞利率の割合)をもって計算した延滞金が加算されます。

延滞金の計算式は、

滞納料金×延滞金利率(年率)×延滞日数÷365日

によって求められますが、現在の利率は納付日によって異なります。

 

【東京都新宿区の利率】

延滞金の割合…「特例基準割合」が定められており、各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に年1%の割合を加算した割合となります。

A 特例基準割合に年1%の割合を加算した割合(最大で年7.3%)
B 特例基準割合に年7.3%の割合を加算した割合(最大で年14.6%)

       期間          A
 (納期限の翌日から1か月)
          B
 (納期限の翌日から1か月以降)
平成31年1月1日から
令和元年12月31日まで
       年2.6%         年8.9%
令和2年1月1日から
令和2年12月31日まで
       年2.6%         年8.9%

 

このように、支払いが遅れれば遅れるほどに払うことが困難になってしまう恐れがあります。

 

そのまま延滞し続けると、給料・不動産等を差押さえされる

そのまま国民保険料を滞納し続けていると、最終的に給料・不動産等を差し押さえによる強硬手段を取られることがあります。

給料は全額を差押さえられるわけではありませんが、(記事:差押えとは?)滞納した保険料を返済し終えるまで差し押さえ解除がされません。

また、不動産が差押えられた場合は、債権者の同意(債務の返済)が条件で解除してもらうことになりますので、勝手に売買することができなくなります。

法律上は督促状の発行日か10日経っても保険料の納付がなければ、差し押さえが可能です。

つまり、納付期限から30日が経てば、行政側は差し押さえすることができるわけなのですが、実際には、差し押さえ可能だからといって直ぐに差押えが入る例は少ないとされています。

ただし、いつでも差押さえをすることができることを認識しておくとよいでしょう。

 

差押えがある不動産が競売に繋がってしまう理由

この差押えによる最悪のパターンは不動産が競売になってしまうことです。

なぜ競売へと繋がってしまうかというと、差押さえられた不動産は管轄する地方裁判所にて、不動産強制競売の手続きを行う事ができます

こうして競売によって債務を回収するのです。

健康保険料の滞納による行政からの差し押さえですぐに競売(公売)になることはほとんどありませんが、仮に住宅ローンの支払いも苦しくなったので不動産を売却したいと考えても、行政は勝手に財産を売られては困ると「差押え」を入れています。

こうして売却が不可能になった自宅は競売となってしまうこともあるのです。

 

滞納する前に分割納付などの相談をする

このように、国民健康保険料の滞納は思わぬ事態を招く恐れもあります。

まとまった金額になっては返済も大変なことになり、差押さえがいつ入るのかもわからないことは不安となるでしょう。

そのため滞納をしてしまう前に相談することが一番の対処法です。

 

相談窓口にて分割納付を依頼できる

まずは、少し健康保険料の支払いが厳しいな、数カ月まとまったお金がなく、支払えないかもと思った時点で相談窓口にて分割納付を依頼しましょう。

また、既に滞納している分を分割払いにしてくれないかと申し出るのも有効な手です。

 

納付漏れを防ぐため、保険料を口座振替に切り替える

自営業の方で、仕事が忙しく納付期限を過ぎてしまっていたといった方は少なくありません。

つい納付を忘れてしまいそのままにしてしまったという人的な納付漏れを防ぐためにも健康保険料の支払いを口座振替にしておくとよいでしょう。

 

保険料の減免が受けられる場合がある

保険料の減免が受けられる場合があるため条件を確認しましょう。
減免条件はお住いの役所のHPで調べることができますが、代表的な条件は下記の通りです。

【保険料の減免条件】

・世帯所得の合計が基準額以下になった場合
・非自発的失業者(倒産・解雇など)になった場合
・退職・廃業・営業不振等になった場合
・災害にあった場合
・給付制限にあった場合

万が一の事態で保険料の支払いが困難になった場合は、減免が受けられるか一度役所へ相談にいくことをおすすめします。

 

まとめ

滞納したことをそのままにしておくと、ペナルティがあることはお分かりいただけましたでしょうか。

国民の義務である保険料の納付ですが、自身の身に起こる病気や事故の時に保険給付が受けられないという事態は避けたいところです。

国民健康保険料の滞納をした場合は、速やかに納税役所に相談に行くことが一番の解決策となりますので、支払うことが難しい段階でも、必ず相談に行くようにしましょう。

 

無料相談実施中!

当サイトの記事をお読み頂いても問題が解決しない場合には専門家にご相談頂いた方がよい可能性があります。

ご相談は無料ですのでお気軽にライフソレイユまでお問い合わせください。