マンション管理費を滞納してしまった!滞納で起きることと対策を解説
「マンションの管理費を滞納してしまい、管理組合から訴えられそうです…」
当社はこれまで、このような様々な事情で家計が苦しくなってマンションの管理費や住宅ローンを滞納してしまった方のご相談を1000件以上お受けしてきました。
もちろん、マンションに住んでいる以上、管理費や修繕積立金は支払い義務があり、滞納してしまうと大きな問題が起こります。
しかし、払いたくても何らかの事情でどうしても払えない状況に陥ってしまうということもあるでしょう。
では、家計が苦しくどうしても払えないという状況陥り、実際にマンションの管理費を滞納してしまうとどうなってしまうのでしょうか。
本稿では、その実際の事例を交えながら、
・マンションの管理費を滞納してしまうとどうなるのか?
・どうしても払えず滞納してしまった場合、どのような対策をするべきなのか?
について解説していきます。
マンションの管理費や修繕積立金を滞納すると起きること
ではまず、実際にマンションの管理費や修繕積立金を滞納してしまった場合に何が起きるかについて解説します。
管理会社からの督促が来る
マンションの管理費を滞納してしまうと、まず初めに管理会社からの督促が来ます。
最初のうちは、「引落ができなかったのですがどうされましたか?」「すぐに払ってもらえますか?」という確認程度の電話による督促がきます。
しかし、管理費の滞納が2ヶ月、3ヶ月と溜まってくるにしたがってその督促が厳しくなっていき、電話だけでなく督促状や催告書が届くようになります。
そして、滞納が続くとその滞納状況が管理会社から管理組合の理事会に報告されてしまいます。
管理組合の理事会や総会で名前が公表されてしまう
管理費の滞納が管理会社から管理組合の理事長に報告されると、そのことが理事会で公開されます。
管理組合の理事会の理事は、基本的にはそのマンションの居住者ですから、この時点で同じマンションの住民にも滞納したことが伝わってしまいます。
そして、理事会は年に1回開催される管理組合の総会で管理費や修繕積立金の滞納状況について報告します。
従って、総会の時点で管理費を滞納していると、そのことがマンションのほとんどの住民に知れ渡ってしまうのです。
マンションによっても対応の厳しさが異なりますが、厳しい理事長や口うるさい住民がいるマンションでは、顔を合わせる度に滞納のことを突かれることもあるようです。
実際に、過去に当社にご相談いただいた方の中にも、
・理事長に会う度にしつこく言われた
・何度も家に訪問されて、支払いの念書を書かされた
・子供にまで文句を言われた
というような方もいらっしゃいました。
高額な遅延損害金が加算される
また、マンションの管理費を滞納してしまうと、ペナルティとして高額な遅延損害金が加算されてしまいます。
遅延損害金の利率はマンションごとの規定によって異なりますが、年率14.6%としているマンションが多いようです。
年率14.6%というと超高金利で、(決してお勧めはしませんが)消費者金融やカードローンでお金を借りてきて管理費を払った方がまだ金利が低い計算になります。
そのため、数日の遅れであればまだ良いですが、半年~数年単位で滞納を続けてしまうと滞納額が膨れ上がり、払っても払っても減らないという状況に陥りかねません。
最悪の場合は競売で強制売却されてしまう
マンションの管理費の滞納が長期に渡ってしまい、悪質と捉えられた場合は、最終的に管理組合から競売を申し立てられてしまうこともあります。
競売とは、債権者(この場合は管理組合)が債権(滞納された管理費や修繕積立金等)を回収するために、滞納者の不動産を裁判所を通して強制的に売却し、その売却代金で回収する方法です。
競売は自宅の強制退去を迫る強硬な最終手段であり、数年前までは脅しては言われても、管理費の滞納で本当に競売までされてしまうのは珍しいケースでした。
しかし、近年は管理費や修繕積立金の滞納が社会問題化し、ここ数年で滞納解消のために本当に競売を申し立てる管理組合も増えてきています。
どのくらい滞納したら競売になるという規定はない
どのくらい滞納すると競売にされるのかという滞納期間に関する明確な基準はなく、各マンションの管理組合の判断にもよります。
当社がご相談をお受けしたご相談者の中には、5年分以上の滞納があっても競売にかけられていない方もいらっしゃいました。
少なくても1ヶ月~数カ月の滞納で競売にかけられることはありませんので、やむを得ず滞納してしまった場合は、その間に滞納解消や競売回避のために後述する対策を取るようにしましょう。
競売は管理組合の最終手段、いきなり競売にかけられることはない
競売は、滞納者の自宅を強制的に売却するという強硬な最終手段であり、管理組合の立場としても滞納されたからといって簡単に競売を申し立てることはできません。
管理組合が競売を申し立てる要件として、以下の条件が区分所有法という法律で定められています。
・区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと(滞納額が大きいなど)
・競売以外の方法(督促や訴訟など)で回収を計ったうえで、それでも回収が困難な場合
・総会の特別決議で可決(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議)
このような要件が揃って初めて競売の申立がされるため、管理組合としても簡単にはできないのです。
そのため、このような状況になる前に理事長や管理会社と話し合うなどして、滞納の解消に向けて動くことが大切です。
【駐車場の強制解約に注意】
マンションによって対応の厳しさが異なりますが、厳しいマンションでは2~3ヶ月の滞納で駐車場を強制解約されてしまう場合もあれば、逆に過去に当社にご相談いただいた方の中には、駐車場代を1年近く滞納していたにもかかわらず、そのまま駐車場を使い続けていたという方もいらっしゃいました。
いずれにしても、駐車場代も滞納してしまうと管理費同様に高額な遅延損害金が発生してしまいます。
また、もう一つの問題点として、地方の車社会の地域では駐車場を解約されてしまい使用権を失うと、売却するにも売れづらくなってしまうため注意が必要です。
地方で車を一家に複数台保有するような地域では、駐車場が1台も使えないようなマンションはなかなか買い手がつかず、その分値段も叩かれやすくなってしまいます。
※ただし、マンションの管理規約で「1住戸1台目優先」と定められているマンションも多く、そのようなマンションでは仮に駐車場を強制解約されてしまったとしても、新たにその部屋を他の人が購入した際には最低1台は優先的に使えるため、売却には支障が出ません。
【時効になることは「ほぼない」と考えるべき】
マンションの管理費にも5年の「時効」が存在します。つまり、5年以上滞納して逃げ切れば支払い義務がなくなるのです。実際に、5年間も督促を無視して時効まで待とうという考えの方もいらっしゃいました。
しかし、この時効で逃げ切ることは「事実上とほんど不可」と考えたほうが良いでしょう。
なぜなら、この時効は途中で中断することができるからです。
時効を中断する方法としては、以下のような方法があります。
・法的な請求(訴訟や裁判所を通した支払督促など)
・差押え・仮差押え
・債務の承認(滞納者に債務の存在を認めさせる)
よほど緩いマンションでない限り、理事会や管理会社は、管理費などの滞納が時効で消滅しないように、上記のような対策を取ってきますので、時効で逃げ切るということは事実上ほとんど不可能なのです。
マンションの管理費を滞納した時にとるべき対応
マンションの管理費や修繕積立金がどうしても払えなくなってしまった場合は、どのような対応をすればよいのでしょうか。
一番やってはいけないのは「放置する」ことです。
管理会社の督促を無視したり、管理組合の理事長などと話し合わずに放置してしまうと、どんどん強硬な手段を取られてしまいます。
具体的には以下のような対応を早急に取ることが大切です。
まずは返済の意思と誠意を伝える
まず最優先でしなければならないのは、管理会社や理事会へ誠意を伝えることです。
謝罪をしたうえで、滞ってしまった経緯や今後の返済予定を伝えて話し合い、理解をしてもらえれば相手も人間ですので多少は待ってもらえます。
明確にいつまでに滞納を解消するということを伝えれば、少なくてもそれまでは強硬な手段を取られることは少ないでしょう。
繰り返しになりますが、最もやってはいけないのが放置や無視です。
少しずつでも返済する
次に必要なのが、少しずつでも返済をしていくということです。
一度滞り始めるとそのまま毎月払わずに滞納し続けてしまう方が多いのですが、全く払わないと管理組合としても強硬な姿勢を取らざるを得なくなります。
・一時的に生活が困窮している場合でも、例えば2ヶ月に1回は払う
・少しずつでも滞納額を減らす(余裕が出た月は2ヶ月分払うなど)
このような対応により、少しずつでも滞納を解消するという姿勢を見せることが大切です。
遅延損害金の減額・免除を交渉する
これは意外と知られていませんが、遅延損害金は交渉で減額や免除をしてくれるケースがあります。これは理事会の判断になります。
もちろん一方的に減額や免除を主張しても受け入れられません。
滞納期間中にしっかりと誠意を見せて、家計が苦しい中でも滞納の解消に協力したうえで、「〇月に全額返済するので、遅延損害金を一部免除してほしい」と、返済計画とセットにしてダメ元で掛け合ってみましょう。
どうしても払えない場合は住宅ローン、税金を優先する
一時的に家計が苦しくどうしても管理費の支払いができない場合は、住宅ローンや税金の支払いを優先することをお勧めします。
理由としては以下の点です。
・住宅ローンは6ヶ月前後の滞納で競売を申し立てられる
・税金は最終的に自己破産しようが何をしようが絶対に減らない
住宅ローンの場合は、管理費と異なり滞納から競売までの期間が決まっており、約半年間に渡って滞納すると競売手続きが進んでいってしまいます。
税金は、もし滞納してしまうと高額な延滞税が課せられるだけでなく、管理費や住宅ローン、他の借金と異なり、自己破産などどんな手段を取ったとしても絶対に免除されることがないのです。
もちろん、マンションの管理費の支払いを後回しにするというのはあくまでも一時的な措置です。
当然ながら管理費も支払い義務があり、後で滞納を解消しなければなりません。
そのため、管理費の支払いを後回しにしたとしても数カ月以内に家計の状況が改善し、滞納を解消できる目途が立っている必要があります。
返済の目途が立たなければ競売になる前に売却を検討する
ここまで、マンションの管理費を滞納してしまった場合の対応について解説してきました。
しかし、当然ながら前述の対応は滞納を解消していくことを前提としたものです。
管理費や修繕積立金には支払い義務がある以上、踏み倒す方法はありません。
従って、上記の対応はあくまでも、一時的に支払いが厳しいものの今後家計が改善して滞納を解消していける目途が立つことが大前提です。
逆に今後も収入の増加や支出の減少が見込めず、滞納が増えていく一方という状況であれば、残念ながらマンションを売却して滞納を返済することを検討せざるを得ません。
そのような場合は、滞納がかさんで遅延損害金が膨れ上がる前に早めに売却して生活をダウンサイズし、家計の負担を減らして再出発した方が良いでしょう。
売却代金でローンも含めて全額返済できるなら一般売却
マンションを売却するうえで重要になるのが「売却した代金で債務を全額返済できるか」という点です。
売却するためには住宅ローンのなどその家が担保になっている負債も全額一括返済しなければなりません。
例えば、住宅ローンが1000万円、管理費等の滞納が50万円だとすると、1050万円以上(実際には諸費用まで含めると約1100以上)で売却することが求められます。
なお、一括返済が難しい場合は一般の売却ができず、後述する任意売却の手続きを行う必要があります。
【管理費の滞納は新所有者に引き継がれる】
区分所有法では、滞納のある部屋を売却した場合、管理組合はその滞納分を新所有者(購入者)に請求することができます。つまり、滞納がある部屋を買った人は、前の所有者が滞納した分を支払わなければならないのです。
では、管理費などを滞納してしまった場合、その部屋を売ってしまえば滞納者は払わなくて良くなるかというと、事実上そんなことはありません。
なぜなら、実際には滞納がある部屋をそのまま買ってくれる人はいないため、実務上は売却代金で滞納した管理費を売却と同時に返済したうえで新所有者に引き渡す必要があるためです。
【売却期間中の管理費の支払いは猶予される?】
「家を売却してその代金で払うから、売れるまで管理費の支払いを待ってくれ」と管理会社や管理組合に伝えた場合、支払いを猶予してくれるのでしょうか?
結論から言うと、支払いを猶予してくれることはありませんし、その間滞納してしまうとその分の遅延損害金も請求されます。従って、売れるまでの間も、基本的には支払いを続ける必要がります。
ただし、このような状況で最優先するべきは「引越し費用」です。
もちろん、管理費を滞納してよいとは言えませんが、引越しができなければ引き渡しができず、売買代金を得ることもできません。そのため、売却できれば管理費の滞納を解消できる目途が立っているのであれば、極力支払いをしつつも引越し代を優先した方がよいでしょう。
売却した後も賃貸として住み続けられる「リースバック」
「家を売却しないと管理費の滞納を解消できない、でもどうしてもこの家に住み続けたい」という場合、可能性のひとつとして挙げられるのがリースバックです。
リースバックとは、一言で言うと、家を売却した後にそこに賃貸として住み続けるという方法です。
このリースバックを活用することで、一度自宅を売却し、その売却代金で管理費や住宅ローンを返済したうえで、買い手から家を賃貸として借りることで、売却後も引越しをせずにそのまま住み続けることができます。
ただし、
①ローンや管理費を一括返済できる金額で売れるか
②家賃は現実的に支払いが可能な金額に設定できるか
という大きなハードルがあるため、現実的には難しいケースもあります。
売却しても完済できない場合は「任意売却」
次に、売却してもローンや管理費を一括返済できない場合、つまり「負債>家の価格相場」という状況のケースを解説します。
このような場合、一般の不動産売却をすることができません。
なぜなら、原則として残っている住宅ローンなどを一括返済しないと銀行が担保を外さないからです。
このような状況で自宅を売却するためには任意売却という手続きを取る必要があります。
任意売却とは、仮にローンを一括返済できなかったとしても、債権者(ローンを貸している銀行やその保証会社)と交渉のうえ承諾を得ることで、売却を許可してもらう方法です。
任意売却であれば仮に一括返済ができなかったとしても売却が可能となり、残ったローンは話し合いのうえ分割での返済に応じてもらえることがほとんどです。
【まずは不動産の査定を】
管理費の滞納の解消が困難になってしまい、自宅の売却を選択肢として検討する場合、まずは早めに自宅がいくらくらいで売れるのかの査定をしてもらうことをお勧めします。
査定をすることで、
・自宅がいくらくらいで売れるのか
・それにより住宅ローンや管理費を全額返済できるのか
・売っても全額返済できないのか
・リースバックはできそうか
といったことが分かり、ご自身の方針を決める材料にすることができます。
逆にこれらが分からない状態でいくら悩んでいても結論を出すことはできません。
従って、まずは価格査定を取ったうえで方針を検討するようにしましょう。
まとめ
本稿では、マンションの管理費などの支払いが困難になってしまった場合に起きることと、その対応について解説しました。
管理費を滞納してしまうと何が起こるのか、どうすれば良いのかを正確に把握していただいたうえで、適切な行動を取る参考になれば幸いです。
いずれにしても一番やってはいけないのは、「何とかなるだろう」と対応を先延ばしにしたり、督促を無視することです。
対応を先延ばしにすればするほど事態は悪化していきますので、本稿を参考に早急に行動に移していただければと思います。