リースバックのトラブル事例
家を住んだまま売却できるということで最近注目を集めているのがリースバックです。
リースバックは元々は事業者向けの資金調達サービスで、個人向けにここまで広く展開されたのはここ数年です。
そのため、買取価格や賃料の相場、賃貸契約の内容などといった条件が消費者に浸透していません。
その結果、リースバックの知識がない利用者よりも、買い手の業者が圧倒的に有利な形で契約してしまっていたなどのトラブルが増えています。
ここでは、当社に寄せられた実際のトラブル相談の事例と、最低限チェックすべきことをご紹介します。
目次
高額な諸費用が掛かった
リースバックは不動産の売買と賃貸を同時に行うため様々な諸費用が掛かります。
私共のところにも「他社でリースバックを依頼しているんだけど、こんなに高額な諸費用が掛かるものなのか?」という確認のお問い合わせをいただきます。
リースバックに掛かる諸費用には明確な基準があるわけではなく、どのような費用がいくらかかるかは会社によって異なります。
例えば、買取価格が高めであっても「測量費用」「耐震補強費用」「事務手数料」などの名目で、高額な費用を差し引く会社もあります。
中には、資金を急ぐ依頼者に付け込んで、諸費用の見積もりを契約の直前に出してくる悪徳な業者だともあるようですのでご注意ください。
リースバックの見積もりを取るときは、諸費用の見積もりも併せて出してもらって事前に確認しておきましょう。
賃貸の更新ができなかった
リースバックで最も大きなトラブルが、賃貸契約の更新ができずに契約満了時に退去を求められたというものです。
リースバックにおける賃貸契約は、ほとんどが「定期賃貸借契約」と呼ばれる賃貸契約で、原則として「更新」がありません。
そのため、特約または別紙で「契約満了時に再契約に応じる」という趣旨の文言を明記しない限り、契約期間の満了時に退去しなければならなくなってしまいます。
この点を契約時に曖昧にしてしまったために更新ができないというトラブルが増えていますので、契約書にそのような文言が入っているのか、必ず事前にチェックするようにしましょう。
買戻しができなかった
買戻しも曖昧にされやすく、トラブルが多い項目です。
自宅の売却時には「買戻しも応じますので資金に余裕ができたら言ってください」というようなことを言われたのに、いざ買戻しを打診すると非常に高額な買戻し金額を請求されて結局買戻せなかったということがあるようです。
これは売却時に買戻し金額を書面で明記していないことが問題です。
必ず、「買戻しができること」「買戻しの金額」まで明記して契約を結ぶようにしましょう。
なお、売買契約書の中に買戻し金額まで明記すると問題になることがあるので、嫌がるリースバック業者も多いです。(理由は細かいので省きます)
その場合は売買契約書とは別紙で良いので、金額が明記された書面を発行してもらうようにしましょう。
賃貸期間中に家が壊れた
リースバックの場合、基本的に室内の設備に関する修繕はご自身で行うことになります。
しかし、一般の賃貸と同様に、建物そのものの大掛かりな修繕はオーナーの負担と責任です。
例えば、地震・天災での破損、雨漏り、給排水管の故障などです。
しかし、元々はご自身で所有していた家であることから、売却時にすでに故障があった可能性があるものに関してはご自身での負担となる場合もあります。
この点を曖昧にしてしまうと、後で壊れたから直してくれと言っても直してくれないなど、トラブルの原因になりますので、予め契約書に責任の範囲を明記されていることを確認しておくべきです。
結局リースバックできず、任意売却か競売しかないと言われた
住宅ローンの支払いが困難になってしまい、競売を避けるためにリースバックを選択した際に頻繁に起きるトラブルです。
任意売却の知識がないリースバック業者や、とにかく仕事がほしい不動産会社は、どうしても競売を避けたいという依頼者の心理に付け込んで、安易に「リースバックできるので安心してください」と営業してきます。
しかし、すでにローンを滞納してしまっていたり、まだ多額のローンが残っていて売却しても一括返済が難しいような状況でのリースバックは容易ではありません。(ローンの残高が少なく、売却代金で一括返済できる場合は除きます)
債権者(ローンを貸している金融機関)との調整や家賃の問題など、様々なハードルがあります。
その結果、「結局リースバックはできませんでしたので引っ越しをしてください」と言われてしまうケースが非常に多くあります。
競売を回避するためのリースバックは成功率が低いことを理解したうえで、確実にリースバックできるかのような営業トークをしてくる業者には注意しましょう。
金額が安すぎて債権者から訴えられた・贈与税が課税された
リースバックの家賃は売却した金額に比例します。
そのため、家賃を下げることを考えるとあえて相場よりも低い金額で売却するという方法もあります。
しかし、破産を前提にしたリースバックで相場より安い金額で売却してしまうと、詐害行為(不当な財産隠し)とみなされて、債権者に訴えられてリースバックが取り消されてしまう恐れがあります。
また、あまりにも低い金額で売却すると、買い手への実質的な贈与とみなされて贈与税が課税されてしまうこともあります。(これを低廉譲渡といいます)
従って、ある程度相場に近い金額での売却が必要ですが、その点も踏まえて専門家に予めご相談いただくことをお勧めします。
まとめ
個人の住宅向けのリースバックは、ここ数年で急速に広まったサービスです。
そのため、まだ明確な基準やルールが定着していなかったり、実績の少ない会社が扱っているのが実情で、「想定していたのと大きく異なった」「結局リースバックできなかった」というようなトラブルが数多く発生しています。
リースバックを検討するうえでは、契約内容を事前に良く確認したり、複数の会社に話を聞くなど、ご自身でもトラブルを回避するための努力が必要です。