話題の「リースバック」を仕組み・メリット・デメリット・活用方法まで徹底解説!
「リースバック」とは、不動産売却の方法のことであり、買主が賃貸オーナーになって賃貸借契約を結ぶことで、元の所有者が家を売った後もそのまま住み続けることができるという仕組みです。
このリースバックを行うと、自宅の所有権は第三者(投資家や不動産会社など)に移転するため、自身の所有物では無くなります。
ですが、リースバックを利用して得る売却代金は一括で受け取ることができ、資金用途は問われないため、
「借入金の返済に困っている」、
「事業資金として来月までにお金が必要である」
「介護資金としてまとまったお金が欲しい」
「自宅の競売を回避したい」
といった際に、引越しをすることなく大きな資金を得ることができます。
また、マイホーム購入後の生活環境の変化で、今後長期にわたって住宅ローンの返済自体が困難な場合にも、リースバックの資金でローンを返済したうえで、住み続けられることになったという利用ケースもあります。
他にも、相続の対策としての利用や老後の資金調達のためなど活用方法は様々あり、「資金の調達や返済の負担を軽減したいが、今の家から引っ越しはしたくない」というニーズに応える制度として注目されているのです。
今回はこのリースバックを正しく理解して上手に活用できるように、仕組みから、メリットやデメリット、さらにはリースバックの家賃や条件にも踏み込んで解説致します。
話題のリースバック仕組み
まず、リースバックは自宅を売却して、そのまま住み慣れたご自宅での生活を続けながら、まとまった資金を調達する仕組みです。
基本的には、通常の不動産売買のときと同じく、不動産業者に買い手を見つけてもらい、契約内容を確認しながら希望に合う買い手と売買契約を結びます。
このとき、査定を依頼した不動産会社が直接買うこともあれば、仲介という形で、よりよい売却条件の会社を見つけてもらうこともあります。
そして売買と同時に、買い手である業者や個人投資家と賃貸契約を締結し、売却後は家賃を支払うことで、売却後も引き続き済み続けることができるのです。
自宅を売却することで資金を即時調達できる
リースバックは自宅を売却することで資金を即時調達できるのですが、通常の売却と違い、売却までのスピードが速いことが特徴です。
リースバックを取り扱う会社であれば、取引条件を掲示から、決済(所有権の移転)まで1カ月~1カ月半ほどで行ってくれます。
そのため、急ぎ資金が必要な場合にも活用できることになります。
もちろん一般的な売却でも資金は得ることができますが、一般売却では、内覧の希望を待ち、内覧後もすぐに購入できるとは限らず、買い手のローン審査を待つ期間もあります。
また、条件が合わなければ売買成立にはならず、資金を得ることはできません。
この即時に資金を必要とした場合にはリースバックが活用しやすいといえます。
住宅ローンが残っている場合は完済後の残りが手元資金となる
ちなみに、住宅ローンが残っている場合は完済後の残りが手元資金となります。
そもそもローンの残債を残したままの、リースバックはできません。
そのため代金は、先に抵当権の残債に充てられ、売買の諸費用を引いた残りが手元資金となります。
つまりローンが多く残っていると、手元に残るお金は少なくなります。
しかしながら、ローンがある状態のリースバックがメリットになるケースがあります。
住宅ローンの毎月の返済額よりも、リースバック後の家賃を低く設定できれば、毎月の支払いの負担を軽減することが可能です。
家計状況が変わり、住宅ローンの支払いが難しい場合に、リースバックを利用される方も多いのです。
売却と同時に賃貸契約を行い住み続けることが可能
そしてリースバックの最大のメリットは、売却と同時に賃貸契約をすることで、そのまま住み続けることができることです。
通常の不動産売却では、自宅を売却すると同時に引越をしなければなりませんが、リースバックは買い手と賃貸借契約を締結することにより、売却しても住み続けられる仕組みなのです。
つまり、自宅が毎月家賃を支払う通常の賃貸マンション・アパートと同様になったと考えればよいでしょう。
普通賃貸借契約であれば、期間はとくにありませんので、家賃を支払っていただいている限りは住み続けることができます。
ちなみに、売却により所有権はなくなるので、固定資産税やマンションであれば管理費・修繕積立金も支払う必要がなくなります。
要注意:契約内容・期間をしっかりと確認
リースバックをする際には、契約内容・期間をしっかりと確認しましょう。
賃貸借契約は主に2種類あり、普通賃貸借契約と、定期賃貸借契約があります。
注意するのは「定期借家契約」です。期間の定めがあり、一般的な普通借家契約とは異なり、たとえ借主が希望している場合であっても、貸主の合意がなければ契約更新ができないため、注意が必要なのです。
契約内容は他にも事前に確認が必要であり、立ち退きの条件として家賃滞納が記載さていること、天変地異による解除など、きちんと読み込むことが大切です。
自宅を買い戻したいときは売買契約前に確認
また、自宅を買い戻したいときには、売買契約前に「買戻し特約」についてもしっかり確認しましょう。
将来的に買戻しを希望する場合は、最初に買い手と合意をしておく必要であり、買戻しの金額・条件は、買い手毎に異なります。
「もっと安く買い戻せると思っていたのに」ということがないように、契約前には、会社の買戻しの金額を提示してもらうことも大切です。
そして、長い契約期間の中で、賃貸人(オーナー)が変わることも想定しなくてはいけません。
そのため、賃貸借契約の期間の確認もですが、下記事項はしっかりとご家族で話し合っておくべです。
確認事項①:売却額の優先か、家賃の優先かを決める
(いつまで住む予定かでどちらがお得になるのかが変わります)
確認事項②:買い戻しを想定して、売却額を決める
(買戻し時には売却額より高くなるため、支払いが可能になのかを考えます)
ちなみに買戻しの特約があっても、決められた賃料の毎月支払いが滞ると、買戻しの特約が取り消されることもありますので、家賃の滞納には気を付けなくてはいけません。
リースバックの売却価格や家賃の決まり方
次に、リースバックの価格や家賃の決まり方について説明します。
一般的に、リースバックによる売却価格は、土地の市場価格の7~9割と言われており、一般的な不動産売買に比べるとやや安いように感じるかもしれません。
なお、ほとんどの場合は建物の価値を評価しないため、思ったより金額が伸びないということもあります。
これは、リースバックは売却後も建物を自身で使うことで、オーナーは経年による影響や老朽化がわかりづらく、リスクになることから、よほど新しい物件でないとプラス評価されません。(法定耐用年数で考えられるわけではないため注意が必要です)
次に、家賃は売買価格に比例して決まります。そのため、売却額が低ければ家賃も低く抑えられます。
反対に売買価格を高くした場合には、家賃も高くなってしまう仕組みです。
基本的には、購入金額の6%~10%ほどが年間の家賃になり、それを12か月で割った金額が月々の家賃になります。
【例:売却が1000万円の場合の家賃】
1000万円×6~10%÷12か月=月々の家賃5~8.3万円になります。
※パーセントの部分は地域や物件により異なります。
家の市場相場はどれくらいなのか、そこから利回り・リスクなどを想定して、買い手は購入金額を決めているのです。
※詳しくはこちら「【事例で見る】リースバックの売却価格と家賃の関係」>>
リースバックのメリット
では、2章でリースバックのメリットをしっかりと解説していきます。
なんといってもリースバックは売却後も住み続けられることが魅力となるのですが、他にもメリットはたくさんあります。一つずつ確認しましょう。
最大のメリットは売却しても住み続けられる
まず、先述しましたが最大のメリットは売却しても住み続けられることです。
マイホームから賃貸への生活環境を変えることはとても難しく、仕事・両親との同居・子供の学区・ペットなどの問題で理由は様々ですが、一様に引越しは安易ではありません。
また、引越作業は、大変であり費用が掛かるため、引越代がなく引越ができないという心配も必要なくなるため、売却後の生活の再建はスムーズとなります。
環境が変わらないことで、周りからは売却したことを知られることもなく過ごせるということで、精神的な負担も減らせるのではないでしょうか。
賃貸借契約は相続できる
次に、賃貸借契約は相続できることもメリットになるでしょう。
リースバックをして、何十年後かに契約者である本人が万が一亡くなったとしても、契約が解除されることはないということです。
つまり、賃貸借契約は相続人が引き継ぐことになるため、残された家族が急に住む家が無くなるといった、トラブルはありません。
一般的に名義人となっている夫婦の一方が死亡すると、「賃借権」が遺された配偶者へと引き継がれますので、改めて貸主であるオーナーと同条件で契約を結べるのです。(逆に賃貸借契約を終了させるには、新たに賃借人となる相続人が解約の手続きをしなければなりません。)
リーバースモーゲージと違い借入れではないということ
そして、リーバースモーゲージと違い借入れではないということもメリットになります。
リバースモーゲージは自宅を担保にして、資金を得ることができるのですが、毎月の支払は利息のみで、元金は、借主が亡くなったときに、相続人の方に請求がいく契約です。
相続人が元金を一括して返済するか、担保物件(住宅および土地)の売却により返済をするという仕組みとなっています。
つまり、借りたお金を返す必要があるということです。
しかしながら、リースバックは借入れではなく、売却益として受け取れます。
賃貸借契約の家賃は発生していますが、契約者自身または、相続人が契約を解約すれば終わりです。
したがって、借りたお金を返済していくという不安がないのがリースバックの利点なのです。
リースバックの現金の使い道は自由である
リースバックの現金の使い道は自由であることもメリットです。
受け取った現金は、どのように活用してもよいので、例えば、リースバックで得た資金を、事業資金に充てても、他債務の返済に充ててもよいということです。
実は先述したリバースモーゲージでは、借り入れた資金の使途について制限があることがあり、目的がはっきりしていないと借りられる上限金額が低くなるというケースもあり金融機関に確認が必要です。
使途について原則自由と記載されている場合でも、金融商品の購入が不可であったり、事業資金には充てられないことが多いため注意が必要なのですが、リースバックであれば、売却代金を現金で受け取るため、どのように使うかは聞かれず制限もないのです。
将来的に住み替えることができる
さらに、将来的に住み替えることができることもメリットでしょう。
リースバック当初、ずっとそこで暮らそうと考えていても、老後の生活環境を変えたいと思うこともあるかもしれません。
子育て期と老齢期では、住まいに求められるものが異なるため、いずれ広い家が必要なくなることや、地元に帰る決断になるなど変化は訪れます。
そんなとき、リースバックの賃貸の解約をして引越しをすることができます。
通常、賃貸は1~2カ月前の予告で解約が可能ですので、今後長い年月の生活を考えた場合には、大きな利点になります。
リースバックのデメリット
続いて3章では、デメリットについても詳しく解説していきます。
リースバックは売却価格をあげると家賃が高くなります。
手元に資金が多く残っても、毎月の家賃が高いといずれまた支払いが困難になることもあるため、必ずよく話し合っておかなくてはいけません。
売却価格が高いとその分家賃が高くなる
売却価格が高いと家賃が高くなるため、毎月の支払額が生活苦にならないか考えておきましょう。
一番の注意点は、「家賃は継続的に支払える金額か?」ということです。
例えば、現在自宅の住宅ローンが残っており、毎月の返済額が10万円だとします。
その10万円の返済が苦しいのでリースバックしたとしても、リースバック後の毎月の家賃が10万円近いとしたら、また支払うことができなくなり、依然として生活は苦しいままです。
リースバックの家賃は、近隣の家賃相場ではなく買取価格に対する利回りを考慮して算出されるので、買取価格が高くなればなるほど、家賃も高くなるということを覚えておきましょう。
居住している限り永遠に家賃が生じる
当然、家賃の支払いは契約中、毎月発生します。つまり、ローンと違って払い終わるという概念がないのです。
賃貸借契約中、数カ月の間家賃を滞納してしまうと退去を余儀なくされます。
そのようなことがあってはせっかく生活を安定させる目的が本末転倒になってしまうため、無理のない範囲の家賃であることが非常に大切なのです。
また、毎月の家賃を払うための「安定した収入」が必要とされており、多くの会社が家賃保証会社での審査が必要になっているので収入のない方は契約できないこともあります。
(ただし、会社員である必要はなく、年金生活をされている方やパートの方であってもリースバックは可能なのでローンの審査とは違い通りやすいので安心ください。)
売却額が市場価格より割安になる
そして、売却額が市場価格より安くなることは大きなデメリットです。
リースバック業者から見ると、買取価格と買取後の家賃収入などを踏まえて、どれだけ利益を見込めるかという点を考慮して条件を決めますので、通常の売却と比べるとどうしても売れる金額が下がってしまうのです。
そのため、少しでも高く売却したい場合には、リースバックではなく通常の売却をして転居した方が有利になります。
(類似記事>リースバックのメリットとデメリット)
注意すべきリースバックの条件
次に、注意すべきリースバックの条件について説明します。
リースバックは条件が合わなければ成立はしません。
売却が成立する価格であること
売主が希望している価格と、買主が買取する価格との折り合いが合わないと、そもそもリースバックは成立しません。
どうしても一般市場よりは安くなってしまうため、期待していた買取金額に届かないと、そもそも売却は成立しません。
住宅ローンの残債より売却価格が上回っていること
二つ目は、住宅ローンの残債より売却価格が上回っていることです。
住宅ローンが残っている場合は、金融機関の抵当権を外せるように売却価格がローンの残高を上回る必要があります。
そのため、まだ残債の多く残っていて、売却代金でローンを一括返済できない場合はリースバックができません。
抵当権を抹消するには住宅ローンを完済する以外はなく、売却金額が住宅ローンの残金を下回る場合は、手持ちの資金(預金)で補填できるかがポイントです。
ただし、預金を使ってまでリースバックをすることが得策ではないこともあるため、しっかりと検討するようにしましょう。
滞納をしていると債権者が認めないこともある
三つめは、滞納をしていると債権者が認めないこともあります。
債権者の立場からすれば、債権を全額回収できれば文句はありませんので、残債額を上回る売却価格であれば、売却を否認することはなく、リースバックの契約であることを伝える必要はありません。
しかしながら既に滞納しており、期限の利益を喪失している状況だとすると、話は変わり、勝手に売ることはできなくなるのです。
このようなときは、任意売却を債権者に認めてもらってから、リースバックが可能であるか査定をして進めていくことになります。
非常に限られたケースのみ成立するため、既に滞納が続いている場合は、急ぎ専門家に相談しましょう。
家族の同意がないとまとまらないこともある
リースバックに限らず、不動産の売却にはその物件の共有名義人全員の同意が必要です。
なぜなら、いざリースバックの手続きをしようとなったとき、名義人全員の同意、手続きが必要になるからです。
例えば、夫婦で2分の1ずつの共有名義であるとき、夫が自分の名義分だけリースバックしようとしても、妻が残りの2分の1の拒否をすれば、成立しません。
また、厳密にいえば名義人でなくても、将来的に相続をする予定であった家族の反対があったり、何十年後かに賃貸であることを知らなかったというご家族とトラブルにならないようにしなくてはいけません。
このようにデメリットに関してはしっかりと家族間で話しておく必要があるのです。
まとめ
リースバックはメリットが出る人がいる半面で、数年後・数十年後に状況が変わったときに、契約時によく仕組みを知らないことが発端でトラブルに繋がりやすいため、事前に不安なことは相談しておくことが大切です。
売ったら終わりではなく、売却後からは買い手と長いお付き合いが始まります。
賃貸になったらどのようになるのか、事前に確認し、契約書に残しておくことで、万が一、自身が亡くなった後も家族に迷惑がかかりません。
そのため、リースバックを行う際は、取引に慣れた会社に依頼することが、必須になるのではないでしょうか。
(類似記事>リースバックとは?)