競売は取り下げられるのか?解決のための任意売却
住宅ローンの返済が苦しく滞納した場合、約4~6カ月支払い督促を無視したままだと、代位弁済が行われます。
代位弁済がなされると、債権は銀行から保証会社へ移ります。(詳しくは⇒滞納6カ月で起こること)
債権者からは、一括返済を求められますが通常一括返済できる方はいないため、このままでは競売の申立てをされてしまいます。
この時、「競売開始決定通知書」が送られてくるので、このままでは自宅に住み続けられないことを突き付けられます。
競売の申立てがされたてしまったら、
・それを取り下げてもらうことはできるのか?
・いつまで取り下げが可能なのか?
・取り下げることができれば住み続けられるのか?
今回はこのような疑問を解決すべく、競売の取り下げに関して解説致します。
目次
競売は取り下げることが可能である
結論から申し上げると、競売は取り下げることが可能です。
「競売申立て後」でも、取り下げることが可能な期間があります。この取り下げが可能な時期までに、債権者の同意を得ることができれば取り下げてもらえるのです。
競売は債権者が取り下げる
競売は債権者が取り下げを行います。
逆に言えば、債権者自身の了承が得られなければ、取り下げはできません。
債権者は住宅ローンの返済がなされず債権の回収ができなくなったので、なんとか回収をする目的で競売(換価)をします。
取り下げを行えるのは競売を申し立てた「債権者」のみということなのです。
任意売却が成立すると取り下げとなる
では、どのような場合に債権者は取り下げを行えるのかですが、任意売却が成立すると取り下げとなります。
債権者へは、「任意売却を希望するから取り下げてほしい」と伝えるだけでは取り下げてもらえることはありません。まずは、任意売却の申出を行い債権者から販売活動の同意を得ます。
その後、無事買い手が見つかり売却が確定した時点で競売の取り下げをしてもらえます。
不動産の競売執行手続きは、手間や費用が掛かっているので、いったん取り下げてまた申し立てるようなことが容易にできるものではありません。
つまり、債権者側も一度申し立てをした以上、そう簡単には取り下げないのです。
全額返済や債権者の同意により取り下げとなる
他、取り下げてくれる条件として、全額返済や債権者の同意により取り下げとなります。
全額返済はもちろん債権者側からしたら、競売を行う必要がなくなるため取り下げをします。
また、一定額を払えば取り下げるなどの債権者側から条件があった場合、支払うことができれば取り下げてくれることもあるため、自宅に住み続けたい場合はこの方法を考えることになります。
住宅ローンの支払いが厳しく滞納が続いてしまった結果の競売という事態であるため、資金を工面できるかがポイントです。
競売を取り下げるには早期に依頼することが重要になる
いずれにしても、競売を取り下げるには早期に専門家に依頼することが重要になります。
仮に任意売却を選択する際は、債権者の同意のもと販売活動をしています。
買い手になる方は住宅ローンを組んで購入する場合が多く、売却完了までに時間がかかるからです。(住宅ローンの融資を得るまでに通常約1.5カ月かかります)
そして、この債権者との調整は自身で行うには複雑なため、競売の申立てがされ、住宅ローンの残債を一括で支払える見通しがないようであれば、任意売却業者に相談することが早期解決に繋がります。
債権者との連絡等についても任意売却業者が行い的確な判断で進めてくれるので、競売開札までに売却を成立させるためにも、早めに依頼をして売却を完了させましょう。
競売開札を迎えると取り下げは原則不可能である
先述で少し触れましたが、入札が開札されて、競売開札を迎えた場合取り下げは原則不可能です。
落札者が決まった場合、申立人である債権者の同意だけでは、競売手続きは取下げができません。
売却が実施されて「最高価買受申出人」の決定がされた後の取下げについては、同意をもらう関係者が増えることになります。
最高価買受申出人又は、買受人及び次順位買受申出人の同意を必要とします。
つまり、事実上、競売手続きを止めることが難しくなるでしょう。
買受人は、よっぽどの理由がない限り、競売を取りやめる判断にはならないからです。
ちなみに、競売手続きにおいて債務者は買受人として入札をすることはできません。
※民事執行法第68条「債務者は、買受けの申出をすることができない」とあります。
ご親族の方が入札することは可能ですが、実際には買受人となることは難しいとされています。
(詳しくは⇒競売とは?)
競売を取り下げられる期間
では、ここからは競売が取り下げることができる時期についてご説明します。
取り下げができるのは競売開札前まで約6カ月間猶予がある
取り下げができるのは競売開札前までとなり、競売の開始決定の通知が来てから開札までは約6カ月とされています。
法律で定められている期限は入札期日の前日までです。
法律上このタイミングまでは債権者による競売の取り下げが可能です。
しかし、ここまで手続きが進んでいるということは、債権者側も時間と費用を使っています。
競売を申立てる場合には、裁判所に予納金を納めており、裁判所毎に金額は異なります。
予納金は80~200万円ほどで、物件の種類などに応じて違い、費用の使途は、競売手続に必要になる費用(現況調査手数料、評価料、売却手数料など)の支払に充てられるものです。
任意売却を行う事で、この費用を勘案した競売落札額を超えると分かれば、取り下げてもらうことに繋がります。
競売での落札評価額が高かった場合は、任意売却自体が認められないという例もあります。
競売のスケジュールとは
それでは、競売のスケジュールを細かく確認しましょう。
下記図でも分かる通り、約4~6カ月後に開札開始です。
① 執行官が自宅の調査に来る…執行官が自宅に調査に来ます。
この調査はBITサイト掲載用に写真を撮るためや、実際にいくらの価値があるのかを査定するためです。BITサイトには開始時に不動産価格が表示されます。
自宅調査自体は断ることはできません。また、できれば同席することで印象がよくなるなどもあります。できるだけ同席を心掛けましょう。
② 期間入札の通知…期間入札通知とは、裁判所から送付される競売の開始日や競売の開札日といった情報を通知している書類です。
この書類にて競売開札日を知ることができます。
③ BITサイトにて公開…競売物件専用のサイトとして、BITがあります。
現況調査で作成した不動産評価書も一般公開され、落札希望者を広く募集するのに利用されます。
不動産業者や一般の方が確認をするため競売物件であることがここで分かってしまいます。
④ 開札…競売の期間入札が開始されると、落札希望者によって入札が始まります。入札の期間内に落札したい方は参加します。
⑤ 一番落札者決定…開札期日の時点でもっとも高額な買受金額を提示した落札希望者が、執行官によって最高買受申出人に認められます。
⑥ 代金納付後、所有権移転…代金を納付する事で所有権の移転登記が実施され、売却された住宅は正式に買受人の所有となります。
競売と任意売却の違い
できれば避けたい競売ですが、家を失い引越しを余儀なくされるのは任意売却をしても同じです。
その中で競売と任意売却の何が違うのかまとめました。
一般市場での販売か、BITサイト掲載後の落札になるか
一般市場での販売か、BITサイト掲載後の落札になるかで異なります。
任意売却は、一般市場で販売するので、買い手側からすると一般売却物件なのか、競売物件の販売なのかは分かりません。
プライバシーも守られ、通常通り買い手の方から見学申出があった際に対応することで進めていきます。
競売は、BITサイトでの掲載となり、落札希望者は自身で調査を行う為、稀に競売物件の周辺に来ることもあります。勝手に自宅の中には入れませんが、このようなことから競売物件となっていることを近所にも知られてしまう恐れもあるでしょう。
競売は売却価格が相場より2~3割落ちる
競売は売却価格が相場より2~3割落ちるとされています。
一般の不動産取引なら宅地建物取引士による重要事項説明がなされ、土地建物の条件・制限などの事実が分かった上での購入となりますが、競売は自身で判断が必要となり、買い手にとってはリスクとなるからです。
競売と違い任意売却であれば、市場価格に近い金額で売却でき、その後の債務整理に関わる残債務を少しでも減らすことができます。
また、債権者側としても少しでも多く債権を回収したい為、任意売却が認められる理由となるのです。
競売は引越代や引越し時期の交渉がしにくい
競売は引越代や引越し時期の交渉がしにくくなります。
競売の手続きは粛々と進められていくため、引越しの時期は落札者が所有権を移転したら出ていかなくてはいけません。
新所有者は何らかの目的(自ら居住、買取・投資等)で落札をしているため、通常、早々に占有者に退去を迫ります。
個人的な理由で退去を断ることはできず、引越代も自身で捻出しなくてはいけない為、負担になるでしょう。
任意売却では売却スケジュールを確認しながら進め、任意売却業者が交渉してくれることもあります。
余裕をもって動けるため、任意売却が良いとされている理由の一つです。
まとめ
競売は取り下げが可能であることが分かりました。
ただし、一度競売の申立てがされてしまうと残された時間は約6カ月です。
時間があるように感じますが、競売を避ける為の任意売却が完了するまで、買い手がすぐ見つかり、急いでも約2カ月掛かります。
早々に動き出さないと競売開札の期日となってしまうことは容易に考えられるのです。
場合によっては、競売の開札が早まることもあるため、本来であれば競売決定通知書が届く前に(住宅ローン滞納初期に)専門家にご相談ください。