住宅ローンのリスケジュールで一時的に負担を軽減
住宅ローンの返済は数十年にも及びますので、その間に病気や転職などで収入が大幅に減少してしまって返済が厳しくなってしまうことは珍しいことではありません。
そのようなときに、返済の負担を軽減する手段としてリスケジュールという方法があります。
リスケジュールは銀行と相談のうえ、一時的に月々の返済額を減額してもらう方法です。
ここではその詳細と注意点を解説します。
目次
リスケジュールとは?
リスケジュールとは、銀行と相談して住宅ローンの返済負担を一時的に軽減してもらうことです。
これは、例えば「病気でしばらく休業せざるを得なくなってしまった」、「リストラに遭い再就職するまで返済が厳しい」などの状況に陥ってしまった場合に銀行が取ってくれる救済措置です。
最大1年間は金利だけで済むことも
リスケジュールは、銀行に相談のうえ一時的に毎月の返済額を減額する措置です。
一般的なのは、しばらくのあいだ元本は返済せず金利だけを払うというかたちです。
例えば、ローンが2000万円残っていて金利が2%であれば、2000万円×2%÷12ヶ月=33,333円が月々の返済額になります。
なお、リスケジュールが認められる期間としては半年~1年が目安です。(1年以上はほとんど認めてもらえません)
従って、今の苦しい状況を半年~1年以内には立て直せる見込みがあるのであれば、まずはそのことを含めて銀行に相談してみるべきです。
当初の返済期間が短い場合は期間の延長も
通常の住宅ローンは最長35年返済ですが、当初の返済期間をそれよりも短めに設定している場合は返済期間を延長してくれる場合もあります。
ローンの返済期間を短めに設定したがために返済が厳しくなってしまっている方で、返済期間を延ばして月々の返済額を抑えれば十分に払っていけるということであれば、これも銀行に実情を話して相談するべきでしょう。
※ただし、返済期間を延ばすことにより完済年齢が上がりますので、年齢によっては受けてもらえない可能性もあります。
リスケジュールを銀行に相談する際のポイント
リスケジュールは必ず認められるものではなく、銀行の承諾が必要です。
銀行にリスケジュールを打診するポイントは次の通りです。
・早い段階で相談する
・生活状況を隠さず説明する
・1年以内に生活を立て直せる根拠と計画を示す
・誠実に対応する
リスケジュールは法的な制度ではなく、あくまでも銀行に「お願い」して本来の返済を猶予してもらうものですので、しっかりとした誠意を伝える必要があります。
従って、今の家計の状況を十分に説明したうえで、今は返済が厳しいが返済を猶予してくれれば立て直して最後まで支払えるという根拠を示して納得してもらうことが大切です。
リスケジュールの注意点
続いてリスケジュールを検討する際の注意点です。
リスケジュールは一時しのぎに過ぎない
前述の通り、リスケジュールが認められる期間は半年~1年が通常です。
従って、「病気やリストラなどで一時的に収入が減ったが立て直せる見込みがる」という場合には有効ですが、慢性的に返済が厳しい状況ではリスケジュールしても焼け石に水でしょう。
あくまでもリスケジュールは返済を後ろ倒して一時的にしのぐだけですので、生活を立て直さない限り根本的な解決にはなりません。
返済の総額はむしろ増える
リスケジュールは返済総額を減らすわけではなく、返済を後ろ倒すにすぎません。
返済を後ろ倒すと、期間が増えた分だけ支払う利息の総額は大きくなってします。
例えば、先ほどの残り2000万円、利息2%の例で1年間金利だけにしてもらったとすると、この間は元金は1円も減りませんので、1年間支払った利息分2000万円×2%=40万円が本来より余計にかかることになります。
また、返済期間が変わらなければリスケジュール終了後は後ろ倒した分だけ月々の返済額が増えてしまう場合もあります。
完済年齢に注意
リスケジュールで返済期間を延ばした場合、その完済年齢にも注意が必要です。
例えば75歳が完済年齢となった場合、その時まで仕事をしていれば別ですが、そうでなければ定年後は年金収入だけで返済をしていかなければなりません。
高額な退職金が見込めるのであれば問題ないでしょうが、そうでないのであれば返済期間を延ばしても老後の生活が苦しくなるだけです。
すでに滞納していると使えない
すでに返済が滞ってしまっている場合、銀行はリスケジュールに応じてくれません。
その場合にはまず遅れている分を全額返済しなければなりませんが、すでに厳しい状況で数か月分まとめて払うのは非常に困難です。
返済ができそうにないと思ったら、滞納する前に早めに銀行に相談するよう心がけましょう。
リスケジュールでは解決しない場合
上記の通り、リスケジュールは返済を後ろだ押すだけの一時しのぎでしかありません。
生活を立て直せる目途が立っているなら問題ありませんが、そうではなく根本的な解決が難しい場合は以下の方法も検討しなければなりません。
金利が高いなら「住宅ローンの借換」
金利が高い時代にローンを組んでいる方は、ローンの借換で返済額を減らせる可能性があります。
例えば、3000万円を35年で借りている方であれば、金利を1%下げると月々の返済額が約1.5万円ほど下がるケースがあります。(残存期間等、諸条件によって異なります)
ただし、借換には保証料や登記費用などの諸費用がかかりますので、金利が下がってもあまり効果が無かったということも珍しくありません。まずは複数の銀行に相談してみることをお勧めします。
他に借金があるなら「個人再生」
個人再生とは裁判所を通じて債務を圧縮する方法です。
この個人再生の中の住宅ローン特則という制度を使えば、住宅ローンは減りませんが家を残したまま他の借金を圧縮することができます。
そのため、他の借金の負担さえ軽減できれば住宅ローンは問題なく払っていけるということであれば、非常に効果的な方法です。
ただし、これには「継続的で安定して収入」など様々な要件がありますので、詳しくは弁護士や司法書士に相談してみましょう。
ローンの残高が少なければ「リースバック」
リースバックとは、自宅を一度売却したうえで買主からその家をそのまま貸してもらって住み続けるという方法です。
自宅を売却した資金で住宅ローンを返済し、その後は買主に賃料を支払っていくことで、家を売った後も引越しをせずに済みます。
もし、リースバックの賃料を元々支払っていた住宅ローンの月額よりも抑えることができれば大きなメリットが生まれます。
リースバックの賃料は売却した金額に比例するため、ローンの残高が大きいとかえって賃料が高くなってしまい意味がありませんが、ローンの残高が少ない場合は負担を軽減できる可能性があります。
「リースバックとは?~自宅を売却後も住み続ける方法」詳しくはこちら>>
再出発するなら「任意売却」
リスケジュールも含め、上記いずれの方法でも根本的な解決が難しいようであれば、早めに任意売却して早めに再出発するべきです。
任意売却とは、住宅ローンを滞納してしまった場合や家を売ってもローンを完済できない場合などに、債権者(ローンを貸している銀行や保証会社)と交渉したうえで自宅を売却する方法です。
生活が苦しい状況で問題を先送りにしても、苦しさが増していくばかりです。
そして、考えられる最悪の状況は、返済が滞って自宅が競売にかけられてしまうことです。
他に解決策がないのであれば、早めに自宅を任意売却して負担を軽減し、新しい生活をスタートさせることも検討したほうが良いでしょう。
まとめ
住宅ローンの返済が厳しくなってしまった際には、滞納してしまう前に早めに銀行にリスケジュールを相談するべきです。
一時的な収入の減少や出費の増加であれば、リスケジュールで半年~1年は返済負担を軽減して、その間に生活を立て直すことを目指しましょう。
しかし、一時的な問題ではなく慢性的に家計が厳しい場合は、リスケジュールでは根本的な解決はできませんので、上記のような他の方法も検討する必要があります。
いずれにしても、まだ支払えるからといって対策を先延ばしにしないことが大切です。
状況が厳しくなればなるほど、取れる選択肢は少なくなっていきます。
このままでは将来的に返せなくなるかもしれないと思った時点で、できるだけ早く銀行や専門家に相談するようにしましょう。