不動産の親族間売買の適正価格は?余計な税金を払わないための注意点
家や土地などの不動産取引は、一般的には他人との間でおこないますが、子どもや親兄弟といった親族間でも行うことがあります。
この親族間売買では、子供などの親族に安い価格で売却したい場合でも、極端に安い価格で売却してしまうと税務署から「みなし贈与」とみなされて贈与税の対象となってしまう場合があるため注意が必要です。
では、このみなし贈与税の課税対象となる、「極端に安い価格」とはいくらなのでしょうか。
目安となるのは不動産売買の市場価格から5割以下であると極端に低額であると判断されてしまうのですが、通常普段の生活では不動産の適正価格はわかりません。
ただしここの適正価格を分からないまま取引を行い、税務署から「贈与されたもの」とみなされる場合には「贈与税」を払わなくてはいけなくなってしまうという事になります。
そこで、今回は親族間売買の適正価格や注意点、みなし贈与に該当した場合の税金について解説します。
目次
親族間売買の適正価格は市場価値から導く
親族間売買の適正価格は市場価値から導くことになります。
この市場価格から「極端に低い」とされたときに「みなし贈与」となります。
市場価格は、その名の通り一般的に査定現在の土地の価格や建物価値に応じて決定しているものです。
贈与税を払えるなら売買価格は両者間の合意のみ
そもそも、贈与税を払えるなら売買価格は両者間の合意のみで、売買契約自体は自由なのです。
どんな内容の契約にしようとも契約当事者が合意していれば自由ですので、罰せられたり取り消されることはありません。
ただし、税務署は客観的に見ておかしな売買金額で売買しているケースのときに、贈与が内在していたものとして「みなし贈与税」を課すようにしています。
親族間売買は1円で行っても違法性はない
つまり極端に言えば1円でも売買できてしまうということです。
これは親族間で不動産売買契約を行うこと自体は違法ではないからです。
自由に契約の内容も決めることができ、例えばですが、市場価格では3000万円の不動産でも売り手と買い手双方が売買価格300万円で売買しても、双方が売買合意すれば違法になるわけではないのです。
もちろんこの場合は間違いなく「みなし贈与」とされてしまうので、税金の支払いが必要になりますが、買い手の方に資産があり、税金を払えるのであれば問題はないのです。
課税対象である「みなし贈与」に注意する
もし税務署に「みなし贈与」とみなされた場合は、不動産の時価から成約価格を差し引いた差額の部分が贈与であるとみなされ、贈与税の課税対象となります。支払いがいくらになるのか注意しましょう。
みなし贈与とは?極端に低額で不動産を売却した場合の贈与税
Q. みなし贈与とは?
A. 極端に低額で不動産を売却した場合、時価との差額を贈与したとみなされることです。
年間非課税枠110万円を使い残りは贈与税となる
仮に贈与税の課税対象となったとしても、基礎控除額の範囲内であれば非課税となります。
贈与税の基礎控除額は1年間につき110万円なので、時価と成約価格との差額が110万円以内であれば贈与税は発生しません。
基礎控除後の課税価格 | 税 率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
※【一般贈与財産用】(一般税率)
贈与税の計算方法は、まずその年に贈与によりもらった財産の価額を合計します。
その合計額から基礎控除額110万円を差引き、上記の税率を乗じ、控除額をマイナスした金額が贈与税の額になります。
計算式にすると次のとおりです。
(財産贈与価額-基礎控除110万円)×税率-控除額=贈与税額
例:「本来2200万円の価値の不動産を1000万円で売ってしまった場合
→(1200万円-110万円=1090万円)×45%-175万円=315.5万円の贈与税額
親族間売買での一番のポイントは価格の妥当性
前述したみなし贈与とならないために、親族間売買での一番のポイントは、価格の妥当性です。
不動産を売買するとき、売主は高く売りたいと考え、買主は安く買いたいと考えることが通常であり、この状態を利益相反の関係と言います。
親族間売買ではこの利益相反関係がなくなるために、妥当性を問われてしまうのです。
相続税法では、親族間での妥当な売買価格について、「個別に」「合理的」に判定されるべきだと解釈されており明確な基準は定められていませんが、一般的に不動産売買の市場価格から5割以下であると極端に低額であると判断されてしまいます。
問題はこの市場価格がいくらなのかという点ですが、これについても一概に答えのあるものではありません。
市場価値は不動産会社にて査定依頼をする
妥当な市場価値を知るためには、不動産会社に査定依頼をするとよいでしょう。
不動産の市場価格に答えはありませんが、不動産会社が出した査定であればある程度妥当な価格と考えて問題ありません。
「家族だから」「他人との契約とは違うから」という理由で個人間での売買契約を進めようとすると、思い込みや理解・解釈の相違などにより、スムーズな契約が困難となりがちです。
例え子供であっても、安くしたいという想いから誤った適正価格で思い込んでしまう前に、一度第三者となる不動産会社にて査定を依頼することは大切なことなのです。
親族の範囲は6親等以内
また親族の範囲とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族すべての人となります。
つまり、「配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟、孫、それ以外の同居の親族」と法律で定義されています。
親族間売買にあたらないかはしっかりと確かめてから行うようにしましょう。
抑えておきたい親族間売買のポイント
2章では抑えておきたい親族間売買のポイントを解説します。
親族間売買は住宅ローンが通りにくい
親族間売買で住宅ローンを利用するのは非常に難しいのが実情です。
メガバンクや多くの地銀では親族間売買での住宅ローンの取り扱い自体がされておらず、ごく一部の金融機関やノンバンクに選択肢が限られます。
なお、住宅ローンを組む場合は、親族間売買であっても不動産会社に仲介に入ってもらう必要があります。
不動産会社に間に入ってもらい、親族間でもしっかりと売買契約書を交わすことで、取引の正当性を証明できてスムーズに取引することができるため、適正価格の査定と合わせて依頼しましょう。
不動産担保ローンでの購入も可能
住宅ローンではなく、不動産担保ローンであれば親族間売買でも利用可能です。
ただし、不動産担保ローンは住宅ローンよりも金利が高くなります。
大きな金額である不動産を高金利で借りることになることや、減税を使えないリスクを考慮して考えなくてはいけません。
そのため、親族間売買はしっかりと両者にとって本当に必要であるかも踏まえて話し合いをしましょう。
親族間売買でも住宅ローン減税は使える
親子間売買でも、住宅ローン控除は利用できます。
ただ、親子間売買の場合、控除の利用条件をすべてクリアしている必要があります。
ここでのポイントになる項目として以下の点に注意しましょう。
〇買主が売主と同居していない又は仕送りをしていない
〇また、取得の時に生計を一にしており、その取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のある者などからの取得でないこと
例えば、同じ財布で生活していたり、親子で同居、生活費を仕送りで面倒見ていたりすると、生計を一にしていると判断されてしまいます。
このあたりも注意して親族間売買を行うようにしましょう。
まとめ
今回は親族間売買の適正価格やみなし贈与について解説しました。
少しでも安い価格で子供に渡したいと思うことは自然です。
ただし、みなし贈与が後にかかり、結果として子供に支払い義務が残ってしまってはいけません。
またこのような不動産売買から親族間トラブルにも繋がる恐れもあることから、不動産会社へ依頼して進めると安心でしょう。