【ケース別】固定資産税を滞納している不動産の売却方法をプロが解説
「固定資産税を何らかの事情で払えず滞納してしまった場合、持ち家を売却する事はできるのでしょうか?」
固定資産税を既に滞納してしまっていると、家を売却ができなくなってしまうことがあるため、気を付けなくてはいけません。
そもそも、この固定資産税は土地家屋を所有している人が、その土地・家屋の価格をもとに算定した税額を納める税金です。
滞納した場合は、滞納開始から日々延滞金が加算され、さらに長期間滞納が続くなど悪質な場合は、財産である自宅を差し押さえられることがあるのです。
自宅を差し押さえられたとき、どうしたらいいのかわからず放置してしまう方もいるかもしれません。
ただし、この差し押さえのある状態では家を売却することはできず、場合によっては公売にかけられて、強制的に自宅を退去しなくてはならないこともあります。
今回の記事では、固定資産税を滞納していると不動産の売却にどう影響するのか、また事情があって固定資産税を納められない場合の売却の仕方や対処方法についてお伝えします。
目次
固定資産税の滞納していても不動産の売却は可能
結論として、固定資産税を滞納していても不動産の売却は可能です。
ただし、滞納により対象不動産に差押えが入ってしまうと、一定の条件を満たさないと売却ができなくなってしまいます。
逆に条件を満たせば、差押えられた不動産もその差押えを解除して売却することが可能です。
固定資産税を滞納していても差押えられていなければ売却できる
まず、固定資産税を滞納していても対象不動産を差押えられていなければ、役所の許可なく売却できます。
役所ごとに差し押さえが入る金額や期間は異なっているため、長らく滞納していても差し押さえがなかなか入らないこともあります。
まだ差し押さえ通知書が届いていない場合は、不動産の通常売却を行って滞納を解消するということも可能です。
不動産を売却することで、まとまった資金を得て滞納を解消することが可能になりますので、差押え前に動くことで早期解決に繋がります。
滞納が続けば不動産の差し押さえの可能性がある
滞納が続けば不動産が差し押えられる可能性があります。
固定資産税は滞納し始めてから放置をしていると、1日ごとに延滞金が課税されています。
役所は督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、法律上で滞納者の財産を差し押さえなければならないとあります。
その法律に基づき差し押さえの対象となる財産等はないか、財産調査や身辺調査を行って、給与での差し押さえができない場合は、固定資産税の所在地である自宅を差し押さえることはよくあることなのです。
自宅が差し押さえられているかは、「いつ、どのようなものが差し押さえられるか」といった内容が記された「差押調書」と記された書類が届くので、万が一滞納が続いているときは、郵便の確認をしておくとよいでしょう。
差押えがあっても売却代金で完納できれば売却できる
差押えがあっても売却した代金で滞っている税金をすべて完納できれば売却できるます。
役所からの差し押さえは、あくまでも滞納税を回収するために行っているので、遅れていた返済分を全額返せば差押えは解除してもらえます。
つまり、滞納を解消するには、原則として延滞税も含め滞納した税金を全額納めることができる金額で売却する必要があります。
ただし、住宅ローンの抵当権や差押の登記が複数ある不動産を売却するときは、抵当権者・差押権利者の全員が同意をする金額にしなければなりません。
そのため、滞納金額と住宅ローンの残債を含めて完済することが条件になるため、まとまった金額が必要になります。
仮に住宅ローンの残債が多い場合は、それも含めて完済できる価格で販売しなければならず、相場よりも高額になってしまうと販売事態が苦戦してしまいます。
売却しても完納できない場合は役所との交渉が必要
原則として、差押えを解除して売却するためには、一括返納をする必要があります。
しかし、差押えられた不動産を売却しても明らかに売却代金が足りず、滞納分の完納が難しい場合は、役所との交渉により一部返納で差押えを解除できる場合があります。
完済が不可能である状態は、滞納を含めた住宅ローンが資産価値より多いということです。
住宅を売却してもローンを完済できなくて借入金や滞納金の一部が残ってしまうこの状態を、オーバーローンと呼びます。
このオーバーローンであるときは、一般市場で買い手を探すのは難しいと考えられますので、任意売却という方法で、滞納している税金や延滞金を支払うしかありません。
住宅ローンが残っている家を任意売却するためには、手順としてまず、債権者以外に家を差し押さえている役所(自治体)とも交渉をして任意売却の同意を得る必要があります。
なお、一部返済で差押えを解除してくれるかどうかは、市区町村によって大きく異なり、20万円程度の一部返済で解除してくれる役所もあれば、完納以外一切受け付けないという役所もあります。
なお、差押がない状態と比べると、任意売却の成立の難易度も上がりますので、任意売却となりそうであれば、早めに専門業者に相談して確認しながら進めるようにしましょう。
(詳しくは>任意売却の方法と注意点)
不動産の差し押さえがあれば勝手に売買はできない
つまり、不動産の差し押さえがあれば勝手に売買はできません。
差押が入ると、謄本上も「差押」と表記されています。
このとき法律上の処分(売買、贈与)や、事実上の処分(毀損、破棄)を禁止されます。
もし、差押え後に所有権の移転があったとしても、市は差押登記が優先的に存在するため、所有権移転前の滞納者の財産として換価公売することが可能となります。
このような状態では買い手がつくことはないので、差し押さえを解除することが先決です。
不動産差し押さえの意味とは
ここで不動産差し押さえの意味について説明すると、役所としては税金を必ず回収する方法を考えなくてはいけません。
まずは預金や給与を差し押さえることもありますが、預金口座がわからない、または預金がないときや、給与先が分からないなど、差し押さえができない場合には、他の財産として換金できる不動産を差し押さえるのです。
差し押さえられても、いきなり自宅から追い出されることはありませんが、長期にわたり支払いがない場合に公売になる可能性もあるので放っておいてはいけません。
つまり、役所は差し押さえを行っておくことで、必ず滞納した固定資産税を回収できるようにしているのです。
滞納を放置すると高額な延滞税が加算される
滞納を放置すると高額な延滞税が加算されていることも知っておきましょう。
督促状が届いても、すぐに納めれば大丈夫ですが、納期限を過ぎた日数分の延滞金がかかります。
法律上の決まりでは、納期限の翌日から1カ月を経過する日までは年7.3%、1カ月経過した日以後は年14.6%の延滞金がかかるとされています。
仮に20万円の固定資産税を1年放置しただけで、年利14.6%ですので、1.8万円程は増えています。
もちろん次の年度分も請求がくるのであっという間に増えてしまうことがわかります。
また、差し押さえされ、公売までには日数がかかるため、延滞金は相当な額に上ります。
もし、不注意で固定資産税の納税を忘れていた場合は、督促状が送られてきた時点で必ず払い忘れないようにしましょう。
(詳しくは>固定資産税延滞金とは?)
差押えを放置すると公売で強制的に売られてしまう可能性も
また、差押えを放置すると公売で強制的に売られてしまう可能性もあります。
財産を差押えた後、しばらくの期間固定資産税がまだ納付されない場合は、国税徴収法に基づいて市町村が公売の手続きを行います。
公売とは、差押えた財産を売却し、その売却代金を納税資金に充てることを目的としており、競売と同じく、入札方式での販売の債権の回収方法であり、場所は税務署や各自治体で行なわれることになっています。
差し押さえが入る前に対策をとる
つまり、差押えが入っている不動産の売却は少し厄介になります。
そのため、差し押さえが入る前に対策をとっておくと良いでしょう。
差し押さえを防ぐ対策は、基本的には役所との交渉ですが、自身の債務を見直すことが改善できるときもあります。
(類似記事>差し押さえ回避のために)
差し押さえが入る前に和解をする
差し押さえが入る前に和解をすることで、差し押さえを防げるかもしれません。
先ずは誠実な態度で、役所に相談に行き、分割払いなどを行うことを伝え、払う意思を示すことは大切です。
特に、今まで督促を無視している場合は、役所側も「話し合いで解決できる相手ではない」というスタンスで早期に差し押さえを行うこともあります。
自宅や口座が差し押さえられてからでは完済以外は一切認めない役所であると手遅れになってしまうかもしれません。
一般的には、役所に相談に行くと、分納による納付を行うことになりますが、担当の職員と話し合い、そこで作成した分納計画通りに納税できるかがポイントになりますので、管轄の窓口に相談に行くと良いでしょう。
一方で口約束になってしまうため、計画通りに納税できなくなった場合には、役所は差し押さえを行うこともありますので、無理な計画を組まないことと、分納の約束は守ることが必須です。
支払いが苦しい場合は債務の見直しをする
そして、支払いが苦しい場合は債務の見直しをしましょう。
もし借金などをしていて固定資産税を支払う余裕がない場合は債務整理を行うという方法もあります。
滞納した税金を債務整理する事は出来ませんが、他で生活を圧迫しているものがあれば大幅に減らすこともできます。
仮に債務整理を行い、税金以外の債務が圧縮されることで税金の分納も可能になるかもしれません。
また、苦しいからと銀行や消費者金融などからお金を借りることは、さらに延滞税や遅延損害金で支払う総額を増やしてしまうため、行わないようにしましょう。
まとめ
固定資産税の滞納によって家や土地などの不動産を公売にかけられないようにするためには、支払いが苦しくなった時点で自治体の役所に相談することがとても大切です。
ただし、差押えが入った後でも、解除に同意をもらい、売却することも可能であるため、まずは落ち着いて状況を整理し、完済が可能であるのか、または任意売却となるのかなどを相談にいくことで解決できるのではないでしょうか。
また、最終的に税金の滞納は必ず支払わなくてはいけないため、早めの相談をすることで解消でき、延滞税を抑えられたり、不動産を守ることも可能かもしれません。
(類似記事>差し押さえで困ったら?)