30年後に資産価値が残りやすい家の買い方~21のチェックポイント

自宅の購入を検討している方から、賃貸ではなく持ち家を購入したい理由として最も多く挙げられる「買えば将来資産として残る」という理由です。

確かに、賃貸ではいくら賃料を払っても一生自分のものになりません。
それに対して、自宅を購入すれば資産として残るため、将来売却したり子供に相続させることもできます。

しかし、「将来資産として残るから」という理由で購入したいと言う割には、将来の資産性を考えずに家を買ってしまっている方が非常に多い印象を受けます。

私は、主に不動産の売却専門の宅建士として不動産を売りたいという方からのご相談を多数受けてきましたが、

「相続した家を売りたいけど、古いし田舎だから買い手がつかない」

「もう手放したいけど、売れる金額よりも住宅ローンの残債の方が大きくて売れない」

というような悲惨なケースも少なくありません。

これは、購入する際に「将来資産としてどれだけの価値が残るか?」ということを意識してないことが原因です。

もちろん、家は資産としての意味合いだけでなく、自分や家族にとっての住み心地であったり利便性も大切ですが、せっかく賃貸ではなく購入するのであれば、将来少しでも資産として残すことを考えたほうが得策でしょう。

事実、同じ5000万円で家を買ったとしても、30年後にまだ3000万円で売れる家と、1000万円にもならない家が存在するのです。

では、将来の資産価値が残りやすい家と、価値が落ちやすい家ではどのような違いがあるのでしょうか。本稿では代表的な21個のチェックポイントをご紹介します。

なお、本稿でご紹介する項目に、特別な裏技はありません。むしろ冷静に考えれば当たり前の話かもしれません。

しかし、新居を購入するときはどうしても目先の新生活だけに目を向けてしまいがちですので、将来のことも考えて以下の項目を見直してみていただければと思います。

 

チェックポイント一覧

まず早速ですが、本稿でご紹介するチェックポイントの一覧をご紹介します。

30年後に資産価値が残りやすい家の買い方として、意識するべきは以下の21個のポイントです。

それぞれのチェックポイントがなぜ重要なのか、どのように確認をすればよいのか、詳細な解説はひとつずつ後述します。

 

共通

□ 1.土地と建物の価格の割合

 

 

 

 

土地

□ 2.人気の高い地域か
□ 3.人口の増減
□ 4.土地の大きさ
□ 5.土地の形状
□ 6.敷地内の高低差、擁壁
□ 7.利便性
□ 8.災害リスク
□ 9.過去の土地価格の推移
□ 10.土地が余っていない地域か
□ 11.同時期に新築が乱立していないか
□ 12.同一地域内での対象物件の希少性

 


建物

□ 13.需要の多い間取
□ 14.建物の配置(駐車スペース等)
□ 15.建売or注文住宅
□ 16.木造or鉄骨
□ 17.新築or中古

 

マンション

□ 18.土地の持ち分
□ 19.人気と希少性
□ 20.タワーマンションの将来性
□ 21.同時期に乱立していないか

 

不動産の資産価値の決まり方

では、上記のチェックリストをひとつずつ解説する前に、まずは不動産の価格の決まり方をご説明します。

需要と供給

当たり前ですが、不動産の価格は他のあらゆる消費財と同様に、需要と供給のバランスで決まります。

つまり需要の多い(=人気が高い)不動産は価格が上がりやすく、また供給が少ない(=希少性が高い)不動産も価格が上がりやすくなります

逆に、あまり住みたいと思う人がいない(=需要が少ない)不動産や、売出物件が多い(=供給が多い)地域の不動産は価格が安くなります。

なお、すごくマクロな視点で見ると、日本の土地面積(供給)は一定で、人口(需要)は減少傾向にありますので、途中で景気の波はあるにせよ30年以上の長期スパンで考えると、海外からの移民を大量に受け入れない限りは日本全体の不動産価格は下落していくでしょう。

 

建物は「最後はゼロ」ではなく「マイナス」

もう一つ大切な観点としては、建物の価値の考え方です。
土地と違い、建物は経年劣化していきますので、その価値は年々減少していきます。

よく「建物は新築から20年で価値がゼロになる」という話がありますが、実際には必ずしもそんなことはありません。

近年の日本の住宅は、きちんとメンテナンスさえしていれば木造であっても築20年でも十分使うことができますので、多少は価値が残っているケースが多いです。(とはいえ新築時の10~20%程度ですが)

しかし、築30年以上となってくるとさすがに建物に価格はつかなくなります。
よく「建物の価値は最後ゼロになり、土地だけが資産として残る」と言う方がいらっしゃいますが、考えが甘いと言わざるを得ません。

なぜなら、築30年以上の木造住宅を売ろうとすると、そのほとんどが中古戸建てとしては売れず、建物を解体して土地として売却しなければならず、その解体費用は一般的に売主が負担するものだからです。

従って、建物の価値は「最後はゼロ」ではなく、実際には「最後は解体費用の分だけマイナス」と考えたほうが適切です。

良くある残念なケースとしては、親から相続した家を売却した際に、売れた値段から解体費や測量費、仲介手数料などを差し引いたらあまり手元に残らなかったというパターンです。

 

資産として価値が残りやすい不動産の特徴

それでは、前述の「不動産の需要と供給」「建物は最後はマイナス」という2つの観点を頭に入れていただいたうえで、具体的なチェック項目を解説していきたいと思います。

土地と建物の割合

 

ポイント1:土地と建物の価格の割合

まず1つ目は、購入金額に占める土地と建物の価格の割合です。

建物は前述の通り資産価値が年々落ちていき、最後はマイナスになります。
一方で土地は、もちろん変動はありますが、余程の僻地でない限りゼロになることはありません。

そのため、同じ4000万円の家を購入した場合でも「土地2500万円、建物1500万円」の家を買うのと「土地1500万円、建物2500万円」の家を買うのでは、30年後の資産価値を考えると圧倒的に前者の方が資産価値としては残りやすくなります

 

【一番資産価値が落ちやすいのは「田舎の豪邸」】

この土地と建物の価格の割合という観点で見た時、購入時から30年後に最も資産価値の下落率が高いのは「田舎の豪邸」ということになります。

なぜなら、どれだけお金をかけて立派な建物を建てたとしても、築30年を超えればほとんど価値は残りません。

一方で、地方は元々土地の価格が低く、なおかつ地価が下落している地域が多いため、将来の資産価値としては残りづらくなります。

 

土地の需要(人気)

では次に土地の需要という観点から見ていきましょう。
需要が多い、つまり人気の高い地域の不動産価値が下がりづらいというのは当たり前ですが、では具体的に需要の多い不動産とはどういった特徴があるのかをチェックしていきます。

 

ポイント2:人気の高い地域

需要が多い地域とは簡単に言えば居住地として人気の高い地域です。
住みたい人が多ければ需要が上がり、土地の値段が下がりづらくなります。
これはあまりにも当たり前なので、細かい説明は不要かと思います。

具体的に人気の高い地域とは、よくある「住みたい街ランキング」などに登場するような地域を思い浮かべればイメージが湧きやすいかと思います。

 

ポイント3:人口の増減

前述の「人気の高い地域」とも繋がりますが、人口の増減も注意すべきポイントです。
人口が増えている地域=人気が上がっている地域、逆に人口が減っている地域=人気が下がっている地域と言えます。

もちろん今人口が増えている地域が、30年後も人口増加が続いている保証はありませんが、少なくても現時点で人口が大きく減っているような地方都市は、30年後の土地の価値は暴落している可能性が高いと言えます。

【人口が増えている町の例】
東京以外の大都市圏で近年大幅に人口が増加しているのが福岡市です。福岡市は市が企業を誘致したり、若者の起業の支援に力を入れており、2015年から2019年の4年間で約3.5%も人口が増加しています。実際に不動産価格もそれに比例して高騰しています。

地方都市でひとつ例を挙げると、愛知県の長久手市も直近の4年間で約6.8%も人口が増加しています。
長久手市は人口6万人程度の小さな市ですが、市が積極的に子育てをしやすい環境を整えることで若い子育て世代を呼ぶこむことに成功しています。
そして、その人口増加に伴って長久手市では土地やマンション価格が近年急騰しているのです。

 

ポイント4:土地の大きさ(大きすぎても小さすぎても坪単価は下がる)

ここまでは「地域」単位の大きな話をしてきましたが、続いて個別の土地の特徴についてお伝えします。
まず最初は土地の「大きさ」です。

結論としては、土地は大きすぎても小さすぎても割安になります。
住宅地は、地域ごとに標準的な土地の大きさがある程度決まっています。

例えば、東京の都心部の一等地では20坪前後が標準だったりしますが、地方の郡部では50坪以下の家はほとんどないというような地域もあります。

この地域ごとの「標準的な土地の大きさ」=「需要の多い大きさ」と言えます。
そのため、地方で20坪の土地はほとんど需要がなく、売却しようと思ってもなかなか買い手がつきません。

従って、家を購入するときは、自分たちにとって最適な土地の広さだけを考えるのではなく、その地域の標準的な土地の広さも考慮することが資産価値として残すポイントの一つです。

 

【土地が大きすぎても割安になってしまう理由】

例えば、その地域では30坪くらいの住宅が標準的な一軒家の敷地の広さだったとします。
仮にその地域の土地値の相場が1坪50万円程度だったとすると、30坪×50万円=1500万円が標準的な住宅地の土地価格となります。

しかし、その地域で100坪の敷地の家を所有している方で、売却しようとしたときに「100坪×50万円=5000万円で売れるでしょ?」と甘いことを仰る方がいますが、そんなことはありません。

30坪で1500万円が標準的な地域で、100坪の土地を探している人はごく少数ですし、そもそも土地だけで5000万円も出す人は皆無でしょう。

つまり、30坪が標準的な住宅地の大きさの地域において、100坪の土地は需要が少ないということで、坪単価で見るとどうしても割安になってしまい、10~20%程度は坪単価を落とさないと買い手がつきません

 

ポイント5:土地の形状

続いてのポイントは土地の形状です。
よく「この地域の土地値は坪〇〇円」ということを仰る方がいらっしゃいますが、それはあくまでも標準的な形(=需要の多い形)の場合です。

最も需要が多いのは「正方形」または「接道面の長い長方形」です。
逆に旗竿地や不整形地、極端に接道面が短い長方形は人気が低く、資産価値としては下がりやすいと言えます。

 

ポイント6:敷地内の高低差、擁壁

土地の平面的な形状だけでなく立体的な形状、つまり敷地内の高低差も資産価値を左右する大きな要素です。
基本的には、敷地内の高低差がなく平らなほど資産価値としては高くなります。

逆に敷地内の高低差が大きいと建築コストが上がったり、敷地内に階段を作らなくてはならず、敬遠する人が多くなる分、需要が減ります。
典型的な例としては、高低差が大きく玄関に入るまでに長い階段を上らなければならないような家です。

また、敷地の境界部分やその周辺が擁壁になっている土地も敬遠されやすくなります
特に大きな擁壁に囲まれている家は、建て替えの際に古くなった擁壁を補強しないと家が立て替えできないこともあり、そのコストの分だけ資産価値としては落ちることになります。

実際に当社にご依頼いただいた案件でも、家の裏手に大きな崖があり、その擁壁も古く補修が必要であったことから、坪単価を相場の60%程度まで下げてようやく買い手が見つかったというケースもありました。

 

ポイント7:利便性

これは前述の「人気」とも近いところがありますが、生活する上での利便性も大切な要素です。
例えば

・駅から近い
・首都圏まで通勤圏である
・高速のインターが近い
・学校が近い

などが挙げられます。

一点注意したいのが、「買い物に便利」という利便性です。
「ここは近くに大きなスーパーがあってすごく便利」ということを仰る方も多いですが、30年後の資産価値という観点からするとそのスーパーが30年後も残っている保証はどこにもありません

実際に大型のスーパーやショッピングセンターが撤退したことで、土地値が暴落した地域は少なくありません。

 

ポイント8:災害リスク

特に最近の傾向としては、災害リスクが土地の資産価値に直結するようになってきています。

例えば、東日本大震災以降、津波で被災した地域はもちろんですが、被災していない地域でも海の近くの土地は大幅に値下がりしています。

特に東海地震で津波による浸水が想定される太平洋側の沿岸部では露骨にその傾向が出てきます。

また、史上最強クラスと言われた昨年の台風19号以降、川の決壊による浸水を免れた地域でも、川の周辺の土地は一気に買い手がつきづらくなり、大幅に値下がりました。

このように、現時点で災害の被害に遭っていなくても、沿岸部や川の近くは災害リスクで将来的に大幅に土地値が下落する可能性があります

 

ポイント9:過去の土地価格の推移

自宅を購入する際、その地域の過去の土地価格の推移をチェックすることも大切です。
最も簡単な方法でいうと、国土交通省が発表している「公示価格」を過去に遡って見ることをお勧めします。

公示価格は実勢取引と多少ズレが生じることがありますが、基本的には毎回同じ場所を基準に価格を算出しているので、過去からの土地価格の推移を見る上では非常に便利です。

公示価格は国土交通省のHPからチェックできます。

もちろん景気などによっても土地価格は上下しますが、以前から一貫して価格が下がり続けている地域は今後も下がり続ける可能性が高いと言えます。(ほぼ間違いなく人口が減り続けている地域です)

ただし、単純に価格が上がっていれば良いというわけではありません。
注意が必要なのは、「最近急激に土地値が上がっている地域」です。

こういった地域は、何らかの特殊な要因で最近急に人気が出た地域ということになりますが、そのような地域は逆に将来急激に土地値が下がる危険性を秘めています。
そのため、急に人気が出た要因は何か、それは30年後も続く要因なのかを冷静に見極める必要があります。

逆に長期で見た時に一番安泰なのが、昔から安定して高い土地値をキープしている地域です。
有名どころでいえば(高すぎて庶民には手が出ませんが)東京の青山や麻布などが該当します。

このような地域は地盤が固く災害に強いとされていますが、昔の人々は肌感覚でそれをわかっていたため、昔から人気があり富裕層が住んでいたと言われています。

 

【「駅から近い土地は値段が下がりづらい」は本当か?】

よく「駅近の土地は将来資産として残りやすい」という話がありますがこれは本当でしょうか。
回答としては、平凡な答えになってしまいますが、「駅による」というのが結論です。

例えば、地方の車社会の地域では「駅近」はそれほどプラスポイントではありません。
田舎では「駅徒歩5分」と「駅徒歩30分」で土地の値段が全く変わらないような地域もあります。

東京のような電車社会でも、主要駅かそうでないかで大きく変わり、「マイナーな駅から徒歩3分」よりも路線が多い「主要駅から徒歩10分」の方が、資産価値の下落率は小さくなる可能性が高いと言えます。

とはいえ東京都内であっても、やはり「駅徒歩10分以内」は需要(人気)からの観点だけでなく、供給(希少性)の観点からも意識したいところです。


土地の供給(希少性)

次に、もうひとつの価格を決める要因である供給(=希少性)について解説します。

不動産も他のあらゆる消費税財と同様に、供給が多ければ価格が下がります。
供給が多いとは、同一地域で「売りたい人が多い」「不動産が余っている状態」を指します。

逆に、「売りに出ている物件が少ない」、「土地が余っていない」「他の物件にはない特徴がある」などは希少性が高いということになり、資産価値は落ちづらくなります。

 

ポイント10:土地が余っていない地域か

まずチェックするべきポイントは、「近隣で土地が余っていないか」という点です。

例えば、その近隣に空き地が多ければ土地が余っている状態です。
土地が余っている地域は、現時点でも比較的安く土地が販売されていてお買い得という考えもできますが、将来的にはさらに土地値が暴落する可能性があります。

逆に、住宅などが密集していてこれ以上建てる場所がないという地域は、土地が余っていないと言えます。

その周辺を歩いてみれば分かりますが、一番手っ取り早い方法としては、グーグルマップの航空写真で上から見ることです。
これで周辺の土地の余り具合が一目瞭然です。

 

 

ポイント11:同時期に新築が乱立していないか

希少性という観点でいうと、同時期に新築が乱立した団地やマンションも注意が必要です。
なぜなら、同じくらいの築年数の物件が同一地域に多数存在することになりますので、新築から20年も経つと売却を検討する人が増えて、市場に同じような物件が多数で回るからです。

同一地域で同じくらいの築年数の物件が同時に多数売りに出されれば(すなわち供給が一気に増えれば)、当然価格勝負となり売値の下げ合いが生じることになります。

 

【例:郊外のニュータウン】

最も典型的な例は郊外のニュータウンです。
バブルの時に乱立した郊外のニュータウンは、同一時期に大量に販売されたため、近年では転居や相続で売りに出す人が増えています。

しかし、郊外のニュータウンは都市部への通勤が不便な地域も多いことから、現代ではただでさえ需要が少ないうえに、供給まで増えてしまっているため、価格が暴落して500万円以下で叩き売られている地域もあります。

 

ポイント12:同一地域内での希少性

その不動産に個別の希少性がある場合も、資産価値として下がりづらくなります。
典型的な例としては、「東南角地」の土地などが挙げられます。

また、マンションであれば「角部屋」や「最上階」なども希少性が高いと言えます。

 

建物の価値の落ち方と需要供給

では、次に建物の資産価値について解説していきます。
よく「建物は20年もすれば価値はゼロ」という話が出ますが、近年の日本の住宅は耐久性が高く、きちんとメンテナンスしていれば築20年でも十分に資産価値があります。

(※ただし、30年以上のスパンで見ればいずれにしても資産価値としてはゼロかマイナスです)

では、資産価値が残りやすい建物のとはどういったものでしょうか?

 

ポイント13:需要の多い間取(地域性)

建物も土地と同様に需要と供給の観点が重要になります。
その中でも大切になってくるのが、その地域で標準的な間取や面積です。

例えば、地方のファミリー層が中心の地域の場合、4LDK~5LDKの間取が主流ですが、そういった地域で1LDKや2LDKの家は需要が極めて少なくなります。

実際に当社で扱った物件でも、間取を考慮しない場合の相場としては2300万円程度の物件が、間取が2LDKであったがために買い手がなかなか現れず、結局価格を1900万円まで落とさざるを得なかったという事例がありました。

※このようなケースでは、売主に資力があれば先にリノベーションして間取変更してから売りに出すのも1つの手です。

 

ポイント14:建物の配置

これは建物だけではなく土地とも関係してきますが、土地上の建物の配置により、駐車場や庭の広さ・割合が決まってきます。

これも地域によって異なりますが、例えば車社会で一家に2台が当たり前、世帯によっては3台持っているという地域において、駐車スペースが1台しかないような建物配置の物件は著しく需要が少なくなります

逆に、車を3台置ける配置の家は、地方の車社会の地域でも意外と少なかったりしますので、そういった地域で駐車場が3台分ある家は希少価値が高く(供給が少ない)、相場よりも高値で取引されることもあります。

 

ポイント15:建売と注文住宅

次に、建売と注文住宅を比べてみます。

一般的には注文住宅の方が造りにこだわりがあり、建築資材も良いものを使っているため、建築コストが上がる分、資産価値も残りやすくなります。

ただし、これは同じ築年数で比べて資産価値の「残っている額」を比較した場合です。

注文住宅は建築主がある程度自由に設計できる分、建築コストが割高になります。

しかし、これが中古になると買主はすでに建っている建物を買うことになるため、注文住宅の「自由設計」という付加価値は中古になった瞬間になくなるわけです。

つまり、同じ築年数の中古戸建てを比較すると、前述の通り残る資産価値の「額」は注文住宅の方が大きいですが、資産価値の「減少した額」で比較すると注文住宅の方が大きくなります

たとえ立派な注文住宅であっても、木造であれば築30年もすれば資産価値としてはゼロになりますので、「資産として残す」という観点でいえば建物よりも土地にお金をかけるべきと言えます。

【建売と注文住宅の資産価値の比較イメージ】

・建売  :新築時1500万円 → 築15年後500万円(減少額1000万円)
・注文住宅:新築時2500万円 → 築15年後800万円(減少額1700万円)

※木造住宅の場合

 

ポイント16:木造か鉄骨か

木造か(軽量)鉄骨かによっても建物の耐用年数が変わってきます。
高級ラインのハウスメーカーの鉄骨造りであれば、築30年でもメンテナンスをしっかりしていれば十分使えますので、資産価値としては多少残ります。

従って、20~30年のスパンで見るのであれば、鉄骨造りの方が資産価値が残りやすくなります

【50年スパンで見ると逆転する】

しかし、子供への相続まで見越した50年スパンで見ると、木造と鉄骨の家の資産価値は逆転します。
その理由は解体費です。

築50年もすれば、木造だろうが鉄骨だろうが資産価値はゼロで、売却するには基本的には解体して更地として販売する必要が出てきます。

この時、木造住宅と鉄骨住宅だと解体費が大きく異なり、鉄骨造りの家を解体する方が多額の費用が掛かります
つまり、冒頭で「建物は最後マイナス」とお伝えしたマイナスの額が鉄骨の方が大きくなるわけです。

従って、資産価値という観点で見ると20年スパンで考えるのか、50年スパンで考えるのかによって判断が変わるのです。

 

ポイント17:新築と中古

次に、新築と中古の比較です。
これは実際に何年くらい住むかによっても判断が変わってきますが、一般的には中古の方が、その後の資産価値の下がり方は緩やかになることが多いです。

新築は、どうしても「新築」であることそのものに価値が生じますが、当然ながら一度住んだ瞬間に中古になりますので、すぐに価値が低下します。

一方で中古は、新築からすでに価格が落ちた状態で買うため、その後の資産価値の下がり方は新築に比べると緩やかになります。

もちろん、中古の場合は住める年数が新築より短くなりますので、住むという観点も加味すると一概に中古が良いとは言えません。

また、中古の場合はそもそもその物件が相場と比べて割安なのか、割高なのかを見極めることが重要です。
割高で買ってしまうと将来的な資産価値の減少率が大きくなりますので、周辺の相場や他の売出物件と比較してみることをお勧めします。

 

マンションの場合

最後にマンションの場合について簡単に解説します。
基本的にはマンションも戸建てと同じ考え方で、需要と供給のバランスが重要になります。

ここではマンション特有の注意点に絞ってお伝えします。

 

ポイント18:土地の持ち分

戸建ての場合、最後に残るのは土地だけとお伝えしましたが、超長期で見ればマンションも同じことが言えます。

マンションといえど建物は経年劣化していきますので、最後は価値がゼロになり、そして解体が必要になります。

従って理論上は、最後に残る資産価値としては、区分所有者で共有しているマンション敷地の持ち分だけということになります。

※「土地の持ち分の資産価値=土地単価×土地面積÷区分所有者数(通常は部屋面積で按分)」

そのため、単純に考えれば「土地値が高い地域で」「敷地が広く」「部屋数(区分所有者)が少ない」マンションほど資産価値が残りやすいという理屈になります。

とはいえ、マンションは鉄筋コンクリートで造られているため、適切な大規模修繕がなされていれば、新築から50年以上は利用することができます。

従って、上記のように難しく考えなくても、20~30年スパンで見ればやはり需要と供給、すなわち人気と希少性で考えたほうが分かりやすいかもしれません。

 

 

ポイント19:人気と希少性

これは、戸建てと一緒ですので詳しくは解説しません。
シンプルに人気が高い地域で、なおかつあまり空き部屋のない地域のマンションは資産価値が維持されやすいといます。

また、マンションの希少性という意味では、例えば「東南角部屋」や「最上階」なども希少性としては高くなります。

 

ポイント20:タワーマンションの価格が落ちづらい訳と将来性

先ほどの理屈で言うと、タワーマンションは資産価値が一見残りづらいように思われるかもしれません。

すなわち、「最後に残るのは土地だけ」という考え方に基づけば、タワーマンションは「土地単価」は高いかもしれませんが、「敷地」は狭く、「部屋数(区分所有者)」は非常に多いため、一人当たりの土地の持ち分が極端に少ないわけです。(※余談ですが、このことを利用した相続税対策が一時流行りました)

しかし、一般的にタワーマンションは資産価値が落ちづらいと言われており、資産家にも人気です。
これは、タワーマンション自体の希少性が高く、ブランドとして確立しているからです。

タワーマンションは、土地と建物の積算という不動産の理論からすれば割高であったとしても、富裕層の成功の証のステータスとして需要があり、また希少性も高いことから資産価値が落ちづらいのです。


しかし、これが将来的にも同じことが続くかというと、個人的には非常に危ういと考えます。
タワーマンションは富裕層からの人気と希少性に支えられて価格が維持されていましたが、近年タワーマンションが乱立されて、希少性が高いとは言えない状況になってきているからです。

ちなみに、タワーマンションに明確な定義はありませんが、過去15年で販売された首都圏の新築マンションのうち、4戸に1戸が20階建て以上のマンションであるというデータがあります。

そのため、例えば東京都港区など元々人気が高かった地域のタワーマンションの資産価値は今後も落ちづらいかもしれませんが、地域として以前からそこまで人気があったわけではなく、単にタワーマンションというだけで最近人気が出た地域の物件は、その希少性の低下に伴って資産価値が暴落するリスクがあります。

 

ポイント21:最近マンションが乱立した地域は要注意

タワーマンションに限らずですが、最近マンションが乱立している地域は要注意です。
最近乱立している地域は、将来同時期に大量に市場に供給される可能性が高いので、供給過多で価格の下げ合いになることが考えられるからです。

ちなみに、マンションの場合はグーグルマップの航空地図で見ると、そのエリアにどのくらいの高さのマンションがどのくらいの数建っているかが一目瞭然です。これにより現時点での大まかな供給量を簡単に把握することができます。

 

まとめ

 

資産価値という観点で見た時の理想形

さて、これまでご説明してきたことをまとめたうえで、資産価値として残りやすい不動産を一言で言うならば、

・「昔から人気のある地域」の、

・「そこそこの広さで形がきれいな土地」で、

・「建物にあまりお金をかけない」家

という結論になります。
これが、購入した時の価格と30年後の価格の下落率が最も小さくて済む家の買い方です。

 

居住性と資産価値は比例しない

とはいえ、当たり前ですが家は資産という観点だけで考えるものではありません。
むしろ、その人にとっての居住性の方が大切かもしれません。

あくまでも住む方にとっての利便性(通勤・通学・買い物)であったり、その家族に合った広さや間取であることが絶対条件であり、住みやすいこと(使用収益)が優先です。

しかし、家を購入するときはどうしても舞い上がってしまい、目先の利便性しか目に入らなくなってしまうものです。

「資産として残るから」という理由で、賃貸ではなく持ち家を購入するのであれば、将来そのメリットを最大限活かすために、本稿でご紹介した視点で購入しようと思う物件を今一度見てみていただきたいと思います。

逆に、「将来売るつもりもなければ、相続させるつもりもないので資産性は気にしない」というのであれば、あえて購入せずに、柔軟に好きな家へ転居できる賃貸物件にずっと住むというのも選択肢の一つだと思います。

 


理想の物件は存在しない

最後にはっきりとお伝えしたいのは、ご自身にとって居住性も申し分なく、資産価値としても条件を満たしている「完璧な物件」に出会えることはまずないということです。(仮にあったとしても恐らく予算オーバーでしょう)

従って、家の購入を考える場合は、立地を妥協するのか、広さを妥協するのか、内装を妥協するのか、予算を妥協するのか、という判断を迫られることになります。

もちろんこれは個人の価値観の問題ですので、正解はありません。

しかし、その選択をするうえで将来の資産性という観点は最も抜け落ちてしまいやすいところですので、せっかく賃貸ではなく持ち家にするのであれば、その点も考慮していただければと思います。

 

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