不動産の差押えはどんなケースであるの?また考えなくてはいけない3つの影響とは
「不動産の差押え」は普段聞きなれませんが、実際にはどんな影響があるのでしょうか。
不動産に差し押さえが入ると、たとえ不動産の所有者であっても、売却を自由にすることができなくなり、売却をするためには、差し押さえの解除が必要になってしまいます。
またこの差し押さえは謄本に「差押」と登記されるので、第三者から見ても差し押さえを受けている事実が明らかな状態です。
「不動産に差押えの貼り紙をされる?」ということは通常はなく、差押えは原則書面にて通知され、先述の通り登記簿上に記載されているだけですので、実際には大きな変化はないように思います。
しかし、不動産の差押えは競売になって家を失う危険が伴っています。
この差押えは、債務者が持っている不動産を強制的に売り、その代金で債権を回収する手続きです。
強制執行として競売に掛けられ売られてしまう可能性があるということが問題なのです。
競売になってしまえばもう打つ手はありません。
こうして家を失ってしまう可能性は、何としても避けたいものです。
この記事では、不動産が差押えされるまでのケースの紹介と、差し押さえ不動産について、また万が一差押えにあった不動産の対処法を解説いたします。
目次
不動産を差押えられるとは?
まず、不動産を差し押さえられるケースとはどういう状態なのでしょうか。
いくら督促をしても債務者が自主的に借金を支払ってくれなければ、債権者は強制的に回収するしかないので強制執行する方法を取ります。
具体的には、債権者の不動産や預金、給与債権など財産になるものを差し押さえ、競売にかける又は、その他の方法で現金化して債権を回収していきます。
この競売の流れを簡単に説明すると、まず債権者が申立てに必要な書類を集め地方裁判所に競売の申し立てを行うところからです。
裁判所で受理されると、差し押さえ登記が入り、不動産の調査後に不動産の売却のための情報がネット上に開示されます。
これが、「競売にかけられる」ということです。
その後、落札者が決まりに不動産が引渡され、債権者が売却額から配当金を受け取ることで回収が完了します。
では具体的にどうなった時にこのような事態になるのでしょうか。
ケース①債務の滞納により差押えをされる
まず考えられるケースとして債務の滞納があると差押えをされます。
ただし、消費者金融などの債務は不動産に抵当権が設定されていない場合が多く、返済を滞納しても債権者がいきなり債務者の所有する不動産を差し押さえることはできません。
まずは「債務名義」を取得するために、通常債権者は訴訟を起こすことから始めます。
支払いを命じる判決が出て、それが確定したら、債権者はその判決書を「債務名義」にして債務者の財産を差し押さえることができます。
つまり、自宅などの不動産が抵当に入っていない場合、いきなり差し押さえられることはなく「裁判」という1ステップが挟まることとなります。
ただし、強制執行認諾条項付公正証書がある場合は、裁判等をしなくても公正証書を使って差し押さえが可能となりますので、不動産が差し押さえられることはあるでしょう。
ケース②税金の滞納により差押えをされる
次に、税金の滞納により差押えをされることになります。
税務当局などによる滞納処分による差し押さえは、裁判等を経ずに行うことが可能です。(国税通則法等の法律により特別な権限が付されているため)
つまり先述した内容とは異なり、思いがけずに不動産が差押えの状況になってしまいます。
(給与や口座の差押えも同じくです)
自治体によってどのくらい滞納したら差押えになるか異なり、一度差し押さえられた場合は簡単には解除されません。
また税金は債務整理を行ったとしても消すことのできない「支払う義務のある債務」の為、実は最も優先して支払わなくてはいけない債務とされています。
ケース③住宅ローン滞納による競売の差押え
次は、住宅ローン滞納による競売の差押えがあります。
まず住宅ローンは借りる時に「抵当権」が設定されており、この抵当権は、債務者がローンの支払いをしないときに、ローンの貸付者である金融機関が一番に債務を回収できるようにしている権利です。
この抵当権があることで、不動産を競売にかけることのできるのです。
仮に住宅ローンの滞納が続いた場合であれば債権者は高額な債務を回収するために、競売へと着々と準備を勧めるために代位弁済を行い、保証会社が差押えを行うことになっていきます。
ちなみに、金融機関を使って購入する不動産であれば、居住用住宅以外の投資先のマンションなどの物件に抵当権を設定しています。
不動産のローンが支払えないケースはこの抵当権がついているため、最終的に競売に(強制執行)される可能性が高いです。
差押えはどうして危険?
さて、「差押え」はどうして危険なのでしょうか。
不動産の差押えは、給与などの差押えと違い、直ぐに生活に直結することはありませんが、どのような不都合が起こるのかをしっかり理解することは大切です。
理由①滞納している債務を完済しないと原則外してもらえない為
滞納している債務を完済しないと原則外してもらえません。
つまり、放っておいても状況が勝手には良くなることはなく、常に不動産を担保に取られているということです。
この「差押え登記」には消滅時効制度がありますが、債権者も消滅時効にならないために、内容通知を送るなどするため、簡単には消滅しません。
放っておけばいいということはないため、滞納金額が膨らみ完済することができなくならないように、注意しましょう。
理由②不動産を勝手に売却はできない為
また、不動産を勝手に売却できなくなってしまうことは大きな問題です。
仮に住宅ローンを払えなくなり、家を売却して完済、賃貸へ引越しをしようとしても、差押えがある場合は、その差押えを行っている債権者に外してもらうことが売却の条件になります。
売りたいから売っていいということにはならず、差押えを外してもらえない場合は契約解除になってしまうので債務の額によっては競売を避けられないことになります。
差押さえがある不動産は売却困難であることを認識しなくてはいけません。
理由③競売にかけられる可能性がある為
差押さえはあくまでも資産を押さえる手続きであり、強制執行は競売が行われることです。
この競売にかけられる可能性がある為危険なのです。
競売になれば一般の市場よりも安く強制的に売却されてしまいます。
つまり、家を出なくてはいけない上に多くの債務が残ってしまうのです。
(競売の流れと期間>詳しくはこちら)
※不動産の競売は、裁判所による調査のための時間が掛かること、競売のための費用(予納金)が発生するなど、時間とお金を費やすため、確実に債務が回収できる第一抵当権者にあたる債権者しか競売の手続きを行なわないこともあり、必ず競売とは言えませんが、どのような差押えであっても放っておいてはいけません。
住宅ローンがある場合
ちなみに、住宅ローンの抵当権が設定されている場合、ローンを3~6か月分程度滞納した頃に保証会社に代位弁済をします。
代位弁済とは銀行側が「もう分割返済(ローン)はできませんので債権を売ります。」という状況です。
売られた債権を保証会社が買い、その残債務を一括で債務者に請求することになります。
もちろん、一括で残債を返せる方は少ない為、返済できず、競売へと流れていくのです。
住宅ローンがない場合
住宅ローンがなく、抵当権が設定されていない場合の差押えの可能性は消費者ローンの滞納や税金滞納によるものです。
まず、消費者ローンを債務者が滞納しただけでは差し押さえされていません。
滞納がしばらく続くことで債権者から訴訟を起こされ、判決で支払い命令が確定したら確定判決に基づいて差し押さえが入る為、督促状などがきた時点で対応していれば差押えになる前に防ぐことが可能です。
対照的に税金の滞納であるときは、市によって滞納後の差押えまでの動きが異なる為、一概には言えませんが、差押えの権利があるため、差押え通知書が急遽届くこともあります。
差押さえの通知後税金や債務の返済がなされなければ、強制競売によって不動産が売却されてしまいます。
差押えのある不動産となった場合はどうしたらいいの?
では、万が一差押えのある不動産になってしまったとしたらどんな対処が必要になるのでしょうか。
滞納を解消すること
取りうるべき最初の行動は、まず滞納した金額をいつまでに支払うことができるのかです。
債権者にはいつまでに払いますという、明確な姿勢を伝えなくてはいけません。
銀行によっては、支払期日を猶予してくれることもあり、滞納を解消したいという相談は受けてもらえます。
何も連絡をせずにいた場合は、期日を越えてしまえば競売を避けることは不可能です。
債権者と柔軟に交渉するためにも「督促」を無視することは避けましょう。
滞納債務が払えない場合は債務整理をする
しかしながら、滞納の返済額が大きく膨れ上がり、どうにも払えない状況となってしまった場合は、債務整理を検討しましょう。
債務者に何も連絡をせずにいては、差し押さえの準備に取り掛かっているかもしれません。
自身または、弁護士事務所などに依頼することで、毎月の支払額を交渉し、現実的に支払うことができる額を払っていくことが大切です。
債権者も支払いが継続されるのであれば、手間や費用の掛かる競売へ移行することを止めてくれる可能性があります。
住宅ローンの滞納の場合は任意売却を検討する
また、住宅ローンの滞納の場合は任意売却を検討しましょう。
住宅ローンを滞納している場合、当然ながら、抵当権が入っているため、不動産の競売に向けて債権者は督促を行うようになります。
督促が来た時点で相談することで任意売却以外の方法も検討できることもありますが、既に何か月も滞納してしまい、支払に困窮している場合は任意売却で生活の再建を考えることも大切なのではないでしょうか。
(任意売却とは競売を避ける方法>詳しくはこちら)
(競売と任意売却の違い>詳しくはこちら)
まとめ~競売の前に売却をする~
今回は不動産の差押えについて詳しく説明致しました。
不動産の差押えの場合、預金口座や給料の差押えとは違い、早急に対応する必要がないように感じますが、実際は競売への申立ての準備が進んでいる可能性があります。
思っているよりも事態は深刻であるため、住む家を失うことがないように手を打たなくてはいけません。
また、競売申立てが済んでおり、家を出ることが必要な段階でも、競売の落札までは時間もあるため、一度専門家に相談してみることをお勧めいたします。
差し押さえをしている債権者にも寄りますが、最悪な状況になることを避ける為、できることがまだあるかもしれません。