固定資産税などの税金を滞納するとどうなる?差押えを回避・解除するには?
住宅ローンを滞納してしまっている方は、固定資産税など税金も滞納してしまっていることが珍しくありません。
中には住宅ローンの返済を優先して税金を後回しにしてしまっている方もいらっしゃいますが、実は一番恐ろしいのが税金の滞納です。
ここでは税金を滞納してしまうとどうなってしまうかと、滞納してしまった場合の対応を解説します。
目次
税金を滞納するとどうなるか?
延滞金が加算される
固定資産税などの税金を滞納してしまうと、延滞金が加算されてしまいます。
延滞金の金額は、原則として納期限の翌日から1ヵ月を経過する日までは年7.3%、2か月目以降は14.6%となります。
【※延滞税の緩和】
延滞金の金額は原則としては上記の通りですが、平成26年の1月1日以降の税金滞納については、納期限の翌日から1ヵ月を経過する日までは「年7.3%」と「特例基準割合+1%」の低いほう、2か月目以降は「年14.6%」と「特例基準割合+7.3%」の低いほうに緩和されています。
「特例基準割合」というと分かりづらいですが、具体的な割合は年によって変わります。実際の平成26年~31年の延滞金の割合は、最初の1ヶ月が2.8%前後、2ヶ月目以降が9.0%前後となっており、原則よりも低くなっています。
延滞金がかさむと取り返しのつかないことに…
税金を滞納してしまうと、上記の通り非常に高い利率の延滞金が加算されてしまいます。
ここ数年の実際の延滞金の利率9%前後で考えても、決してお勧めはしませんが金利によっては消費者金融で借金してでも税金を支払った方がまだ安い場合もあります。
固定資産税の1期分の滞納くらいであれば大した話ではありませんが、仮に税金100万円を1年滞納してしまった場合は延滞税だけで9万円が加算されます。
すでに元々の税金(本税)の支払いが厳しいくらい生活に行き詰っている方が、更に延滞金を加算されてしまうと、少しずつ支払ったとしても滞納税金が減るどころかどんどん増えてしまいます。
そして、これが数年単位で積みあがると一生かけても払えない状況になってしまう方もいらっしゃいます。
自宅などの不動産を差押えられる
税金の滞納をしてしまうと、自宅や車などの資産を差押えられてしまいます。
差押がされてしまうと、全額返納しない限り原則として売却することさえできなくなってしまい、最終的には行政機関が行う競売である「公売」と言われる手続きで強制的に自宅を売却されてしまいます。
ただし、差押をされたからといってすぐに公売にかけられて家を売却されてしまうわけではなく、ある程度の猶予は与えられます。
【※差押や公売までの猶予期間は市区町村により異なる】
税金をどのくらいの金額・期間滞納すると差押されるかは市区町村によって大きく異なります。
固定資産税で言えば1年分未満の滞納で差押を行う市区町村もあれば、5年間滞納し続けても差押をされない市区町村もあります。また、差押から公売までの期間も市区町村によって大きく異なります。
給与を差押えられる
税金を滞納した際の処分として最近増えているのは給与の差押です。
以前は給与よりも不動産を優先的に差押られましたが、最近は確実に回収できる給与を優先して差押える市区町村も増えてきました。
給与が差し押さえられてしまうと、給与の4分の1を上限として強制的に徴収されてしまいます。
また、給与の月額が33万円以上の方は、それを超えた分は全額差押されます。
そして何より、給与の差押は会社から直接天引きされますので、会社に税金を滞納していることを知られてしまうというデメリットがあります。
破産しても税金は消えない
住宅ローンや他の借金の返済を優先し、税金を後回しにして滞納してしまう方がいますが、これはお勧めしません。
税金は役所に払うものだから後回しで良いと考えるのは大きな間違いで、住宅ローンや借金と同様に税金も滞納すれば高額な延滞金が加算されますし、不動産や給与も差し押さえられますので、税金を後回しにするメリットはありません。
一方で、住宅ローンや消費者金融からの借金との最大の違いは、税金は自己破産しても免責されない(なくならない)ということです。
借金はどれだけ高額であっても、どうしても払えなくなったら最後の手段として自己破産をすればすべて支払い義務がなくなり、ゼロから再出発をすることができます。
しかし、税金は自己破産しても一切なくなることがなく、一生かけて支払わなければならないのです。
税金の滞納は亡くなっても相続される
税金は滞納してもその人が亡くなればそれで終わりと思っている方もいらっしゃいますが、これも誤解です。
滞納した税金は債務であり、債務を残した状態で亡くなれば当然にその相続人である奥様やお子様に支払義務が生じます。
【※税金の相続放棄】
税金を滞納している方が亡くなった際に、3か月以内に相続人が裁判所に「相続放棄」の申請を行えば他の借金と同様に相続しなくて済みます。
しかしながら、相続放棄の手続きをした場合、その相続人は亡くなった方の資産(預金や自宅など)を一切受け取れなくなってしまいます。滞納されていた税金だけ放棄して相続財産は受け取るという都合の良いことはできないのです。
税金が払えない場合の対応
まずは役所や税務署に相談する
税金を滞納してしまった場合、まず真っ先にやるべきことは、その税金を管轄している役所や税務署に相談することです。
すぐに支払うことが難しい現状を素直に伝えて、「具体的にいつまでに払う」「月々いくら払う」などの約束をすることによって、当面は差押えや公売を猶予してくれることが多いです。
逆に税金を滞納しているにも関わらず、全く連絡を取らなかったり電話や呼び出しにも応じないとすぐに差押を入れられてしまい、最悪の場合は自宅を公売で強制的に売却されてしまう可能性もあります。
どうしても払えなければ自宅を売却して返納も必要
滞納額が高額になり、月々少しずつ納付してもその間に加算される延滞金で全く減らないという状況に陥ってしまったら、最終手段として自宅の売却も検討せざるを得ないでしょう。
そのまま放置して滞納が膨らみ続けると、いずれは自宅を公売にかけられてしまうため、そうなる前にご自身で一般の市場で少しでも高く売却した方がスムーズな再出発ができるはずです。
リースバックを活用すれば売却後もそのまま住み続ける
リースバックとは、自宅を一度売却したうえで買い手(オーナー)からその自宅を賃貸として借りることで、自宅を売却した後もそのまま家に住み続けられるという仕組みです。
リースバックを活用すれば、自宅を売却した代金で滞納していた税金を一括納付し、その後は賃料をオーナーに支払っていくことで、自宅に住み続けながら税金を支払うことができます。
なお、リースバックは自宅を売却して所有権を買い手に移転しますので、自宅の固定資産税はそれ以上かからなくなります。
自宅を売却しても全額返せない場合
税金の差押が入っている場合、勝手に自宅を売却することができず、この役所に差押を解除してもらう必要があります。
もちろん、自宅を売却した代金で全額納付ができるようであれば役所は文句は言いませんので、売却と同時に差押を取り下げてもらえます。
問題は売却しても全額納付ができないケースです。
住宅ローンが残っている場合、税金の差押が入っていても返済は住宅ローンが優先されます。
例えば、住宅ローンが2000万円残っていて、税金の滞納が300万円で差押のあるケースにおいて、自宅を売却しても2100万円にしかならかった場合、住宅ローンの2000万円全額の返済が優先されて残った100万円が税金に回ります。
ここで問題になるのが、税金が全額返済できない状態で、役所が差押の解除に応じるかという問題です。
これは市区町村によって対応が大きく異なります。
取り急ぎ残った100万円を納付すれば差押を解除してくれる市区町村もある一方で、全額でなければ絶対に解除しないというところもあります。
これは交渉してみなければ分かりませんが、もし解除に応じてもらえなければ自宅の売却自体ができなくなってしまうのです。
【※売却しても住宅ローンも全額返済できない場合】
自宅を売却しても税金はおろか住宅ローンも全額返済できない場合、任意売却という手続きでローンを借りている銀行の承諾も得る必要が出てきます。またその場合、売却代金を銀行と役所でどのように分けるのかについて双方の合意が必要になります。
まとめ
以上のように、税金の滞納は甘く見ていると取り返しのつかないことになります。
場合によっては住宅ローンよりも優先して払った方が良いかもしれません。
そして、どうしても払えなくなって滞納してしまったら、役所に相談する・自宅の売却を検討するなど、とにかくすぐに行動することです。
税金は借金と違って破産すればそれでなくなるというものではありませんので、早めに対応して何としても溜め込まないようにしましょう。