所有権留保 ~ 太陽光や給湯器のローンを滞納するとどうなる?
住宅ローンとは別に、自宅をリフォームしたときのローンや後から追加した設備のローンをお支払いされている方も珍しくないかと思います。
一般的によくあるのが、リフォームのローン、太陽光パネルを設置した時のローン、給湯器やキッチンコンロ(組み込み式のガスコンロやIH等)などの設備を購入した時のローンです。
もし、これらのローンの返済が滞ってしまうとどうなるのでしょうか?
目次
所有権留保とは?
太陽光パネルや給湯器などを割賦払いで支払っている場合、所有権留保という考え方が適用されます。
所有権留保とは、割賦払いなどで購入したものの所有権が、代金を払い終わるまで販売元に留保されるということです。
つまり、厳密に言うと割賦払いの支払いが終わっていない商品の所有権は、まだ買った人ではなく販売元に残っていることになるのです。
典型的なものでは自動車が挙げられます。
自動車を現金一括ではなくローンや割賦払いで購入した場合、それを払いきるまで所有権は販売会社またはローン会社に留保されます。
不動産で所有権留保が良く出てくるのは、太陽光発電の設備、給湯器、キッチンコンロなどです。
もし後からこれらの設備を設置して、割賦払いやローンで支払ている場合は、所有権が留保されているはずです。
所有権が留保された設備のローンを滞納すると引き上げられる?
上記の通り、ローン返済や割賦払いを続けている設備などに関しては、所有権が販売元やローン会社に留保されています。
そのため、原則としてはローンや割賦払いが途中で滞ってしまうと、それらの設備は強制的に引き上げられてしまいます。
しかし、実務上では必ずしも引き上げられるとは限りません。
太陽光パネル等の大型設備
実際のところ、ローンを途中で滞納してしまったとしても、太陽光パネルなど大型の設備の場合は強制的に引き上げられてしまうことはほとんどありません。
債権者(販売元やローン会社)が、屋根から太陽光パネルを取り外すためには大掛かりな工事が必要になります。
また、設備が大きいため取外した後に輸送するのにも大きなコストがかかります。
これらのコストと、回収した太陽光パネルを中古として再販した時に得られる利益を比較した際に、引き上げるメリットがほとんどないのです。
ただし、だからと言って払わなくて良いわけではありません。
最悪の場合、返済しないことに対して裁判を起こされて、その判決をもって給与などを差押えられてしまうリスクもあります。
給湯器・キッチンコンロなど
給湯器やキッチンコンロなど小型の設備は、取外しや回収が比較的容易なため、ローンや割賦払いが滞ると回収されることが多いようです。
特に室外に設置されている給湯器は簡単に回収できてしまうため、支払いが滞るとほとんどの場合で回収されます。
リフォームローン
前述の太陽光パネルや給湯器などと違い、リフォームは家そのものを修繕・改修しているもののため、対象が特定の設備ではありません。
目的となる設備がないため、当然ながら所有権留保という考え方が適用されません。
そのため、リフォームローンを滞納したからと言って、特定の設備を回収されることはありません。
しかし、リフォームの際に給湯器やキッチンコンロを新しいものに交換しており、その代金もローンに組み込まれている場合は、それらの設備の所有権は留保されている可能性があるので注意が必要です。
また、回収されないからといって滞納を続けると、裁判を起こされて自宅や給与などの差押をされてしまう可能性もあります。
設備のローンが残っている家を売却する場合
それでは、太陽光パネルや給湯器などの設備やリフォームなどのローンが残っている自宅を売却する場合はどうなるのでしょうか?
家を売ったら設備のローンは無くなる?
ローンはあくまでもその金融機関と購入者との間の契約です。(割賦払いの場合は販売会社と購入者)
そのため、第三者に設備ごと自宅を売却したとしても、それだけでそのローンが無くなるわけではありません。
そのローンや割賦払いの支払いが終わるまで、返済を続けなければならないのです。
家を売った後に設備のローンを滞納したらどうなる?
自宅を売却してすでに買主に引渡した後に、設備のローンを滞納したらどうなるか。
所有権が留保されている以上、販売会社やローン会社に回収されてしまうのでしょうか?
一方で、買った方からすれば自分が滞納したわけではないのに買った家の設備を引き上げられてしまったら、それは堪ったものではありません。
これはまだ判例が少なく基準が明確ではありませんが、「不動産の付帯する設備も含めた売買であったか?」「買主がそのローンが残っていることを知っていたか?」などによって変わってくるようです。
ただし、もし買主に引渡した後に設備を引き上げられてしまっては買主に多大な迷惑をかけるだけでなく、買主から訴訟を起こされる可能性もあります。
また、設備を持っていかれなかったとしても、滞納すれば請求され続けることになります。
トラブルを回避するために
設備のローンや割賦払いを残したまま自宅を売却すると、将来滞納してしまった際に大きなトラブルに発展するリスクがあります。
そのための対策は以下の通りです。
売却代金で完済する
設備のローンや割賦払いの債務が残っている家を売却する場合、売却代金でその債務を一括返済するのが一般的な方法です。
一般売却であれば、これが売買契約の条件に謳われることもあります。
任意売却の場合(売買代金で完済できない場合)
住宅ローンが残っていている場合、返済は設備やリフォームのローンよりも住宅ローンが優先されます。
これは住宅ローンが先にその物件に対して抵当権を設定しているためです。
売却しても、その代金がすべて住宅ローンの返済に回ってしまい手元に残らない場合(いわゆる任意売却の場合)、売却代金で設備のローンを返済することができません。
その場合は、以下のような対策が必要となります。
①買主と交渉して売買代金とは別途、設備のローンを負担してもらい、代わりに返済してもらう
②設備も含めた売買契約であることを契約書に明記したうえで、買主に説明してリスクを理解してもらって買ってもらう
まとめ
割賦払いやローンが残っている設備の返済と滞納してしまうと、それらの設備を引き上げられてしまう可能性があります。
また、それらの債務が残っている状態で自宅を売却する場合には、買主に引渡した後に回収されてしまうというリスクを防ぐために、できる限り売却代金で一括返済するようにしましょう。
しかし、任意売却などで住宅ローンの返済以外に売却代金を充てられない場合は、買主と相談して残っている設備のローンを負担してもらうか、万が一のリスクを理解してもらったうえで購入してもらうことが大切です。